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[不意に、暖かな気配に包まれ、浮遊感を覚えた。
様々な憶測も、過去の記憶も、
船上での想いも、桜色の霞の記憶も
その全てが綯い交ぜに脳裏にて掻き乱されて――
気づけば、船倉へと。
凍てつく空気の中で木箱に背を委ね、凭れ掛かるようにして意識を失う男の膝に
イェンスの姿があったかもしれない**]
[何が起きたのかは分からなかった。
瞬きのその一瞬で、目の前の気配が消えて。
──ジーク…?
その名前を口にした途端、暗転──]
[ふるり、と寒さで目が覚める。目だけを動かして辺りを見ると、そこは倉庫のようだった。
目の前には、気を失うジークの姿が。
慌てて頭に傷がないか、体温は、脈はと確認して、ただ眠っているだけだと判断するとホッと息を吐いた。
銀色に手を伸ばし、髪を梳きながら、あれは夢だったのだろうかと考える]
は、俺はとんだ変態だな…。
[あんな夢を見るなんて。自らの願望にまみれた、甘い夢]
…寒い。
[頬に手を伸ばす。低い気温のせいか少し冷えているようだった。
温めるように両手で包んで、そのまま。眠る彼の唇へそぅっと、触れるだけのキスを。
は、と小さく息を吐いて、寒いからだ、と呟いて。
首へ腕を回して、首もとに顔をうずめた。
寒さのせいにして、あと少しだけこのままで居たいと思った]
[桜色の霞が吹雪のように巡り、やがて抜けていき
ほんのりと薔薇の香を孕んだ魔法の大気もまた、去っていく。
いかないで、 最後に脳裏へぼんやり浮かんだ未練染みた言葉は
どちらの記憶に対しての想いの残滓だったのだろう。
――…寒い。
腕の中の温もりをもっと傍へと感じたくて
こちらからも背へと腕を回して、温もりを強く、強く抱き締め
頬へすり、と頬擦りを落とす。
寒さを凌ぐ為の本能か、首や頬、指先までもが
薄らと白い被毛に覆われて、獣人化の兆候が始まっていた]
ローゼン、さん……
[何時だって、己の腕を摺り抜けて去っていったあのひとが
今度こそ本当に何処か遠くへ行ってしまうような、
……錯覚だったのかもしれない。
或いは、自分の心が彼から離れた所為で感じた寂しさであったのか。
解らずも未だ眠りの淵を漂うまま、彼の人の名をぽつり、*囁いた*]
[背に回った腕の力強さに、胸の中にじわりと温かい幸福感が広がった。
甘えるように頬ずりをされて、ふっと笑みがこぼれたけれど、皮膚とは違うその感触に気付いて不思議に思い、自分へすり寄せるのと反対側の頬を撫でる。
短く硬い毛のような肌触りに、まるで獣のようだと思った。
顔を上げるとそこには、獣人になりかけた男の姿が。
少しでも温度が伝わればと、首にゆるりと回していた腕を、首へ背中へ、ぴったりとくっつける。
自分が温めるのも、限界がある。此処は倉庫だから探せば毛布くらい見つかるだろうかと思いついたと同時に、
──ローゼン、さん……
どこか切なそうに聞こえたその声に、すぅっと心臓が冷えた。
どうしてそんな声でその人の名前を呼んだのだろうかと考えると、少しずつ腕から身体から力が抜けて]
[ジークにもたれ掛かり、ずるずると落ちて胸の辺りで頭が止まる。
黒く染まった頭の中に、ドクン、ドクン、と心臓の音が響いて。
漠然と、この音が止まってしまうのは嫌だ、と思った。
──あぁ、きっとそれが全てだ。
考えるのは後で良い。
この人が凍えてしまうのは嫌だから、今は取り敢えず先に温めなくてはいけない]
少し、待ってろ。
[腕の中からそっと抜け出し、暗闇の中、毛布を探そうと立ち上がった**]
[腕の中の温もりが、緩やかに消えていく。
優しい薔薇の薫りも、幸福だった桜色の魔法も
その全てが消え去った頃、男は漸く覚醒した。
ぼんやりとした眼差しで界隈を見遣る。
首筋と、くちびるに誰かのぬくもりの残滓を感じて
寒さを凌駕する寂しさに見舞われた一瞬、]
[……思い出すのは、頬を赤らめ激怒したり、
呆れ顔で己を見遣る、――灰色の耳のうさぎの、顔だった]
――…っ、……イェンス…、イェンス!!
[自分が、船倉送りになった事。
傍にイェンスが居ない事。
把握出来た事柄は未だ、それだけだったけれど。
イェンスは狼獣人に喰われてしまったのではないかと
よろめきながら立ち上がり、その姿を探した]
[近くの木箱から確認していこうと、一つ一つ順番に中身を漁る。
ホッチキス 、 地球儀 、 携帯食料 、 銃弾×1ダース 、 傘 …
アレも違うコレも違うと、暗闇の中で難航する作業にため息をつく。
次こそは、と6つ目の木箱の中身を確認すると、そこには探し求めていた毛布が。
悴んだ手でそれを取った瞬間に聞こえた自分を呼ぶ声。
目が覚めたのかと安心する前に、焦るようなその声色に驚き振り返る]
ジーク…!?どうした、何かあったのか!?
[暗闇に向かって叫んで、毛布を掴んだまま声のする方へ走った]
[奥手から物音と、イェンスの声が聞こえた。
よろめいていた足取りは一歩、また一歩と力強いものとなり
彼の気配を察する方角へ、真っ直ぐに向かい――
彼の身を片腕へと抱き、どん、と壁面へ縫い止める]
――…、イェンス、怪我は…?
[そのまま彼の耳を片手で触れつつ、反対側の耳を毛繕いするよう
ちろちろと舐めていく。
"狼獣人は、兎の耳を齧る"
――…心配だった彼の耳から血香がせぬと気づけば
ほっと肩を撫で下ろし]
良かった、……無事だったか…
[近付く気配に、ジークか?と確認する暇もなく抱き寄せられて。
その拍子に落としてしまった毛布へ、あ、と意識を持って行くと同時に壁へ縫い止められて、何事だと目を見開く。視界に映る銀色と、聞こえた声にやっぱりジークだよな、と確信して、一体どうしたんだ?と見上げた]
は?怪我…?別に、…っ!?
[無いけど、と続く筈の言葉は両耳に感じた違和感によって止められた]
おい!止めろ、擽ったいから!ちょ、ホント、ふは、う、ぁ、っ!
[突き飛ばそうとするも、擽ったさに力が抜けてぐったりと]
ぶ、無事だよ……。
普通に聞かれたら答えるぞ!なんで一々そんな確認の仕方したんだ!
[あぁもう一気に疲れた気がする、とため息混じりに呟く]
そういえば、此処寒いだろ。毛布見つけておいた。
ジークのせいで多分その辺りに落ちたけどな。
[ジロリと目の前の男を睨み付ける。一連の流れのせいで思わず赤く染まってしまった頬に、気付かれては無いだろうか]
[両腕の中へ彼の躯を閉じ込めるよう、壁面へ肘ごと委ね
鼻先を鳴らしながらの毛繕い行為。
腕の中の彼が、擽ったいと笑い出して漸く、我に戻る始末で]
……だって、よく見えないし。
絶対痩せ我慢するだろ、齧られてたら。
[かと言って、舐めて傷が治る訳でも無いのだけれど。
ぱたり、そう言えば下方から布の落ちる音がした、気がして
手探りで毛布を手に取り]
……寒いね。……お陰で毛深くなっちゃったし。
風邪引かないようにほら、取り合えずくるまってて。
[ふぁさり、彼の頭部から全身を包み込むよう毛布を掛けてしまおうか。睨む眼差しには気づけていない残念な男。
よく見えない、とずい、と目線を近づける。
視認するよりも早く、彼の頬…どころか顔が温かくて自身の頬でまた、摺り寄せてしまったり]
ね、なんかさ…、とてもいい夢を見てた気がするんだけど
――…あれって、夢だったのかな。
[痩せ我慢をしないとは言い切れず、うっと言葉を詰まらせる]
で、でも普通に少し触れば分かる。
本当にかじられてたら、舐められると多分滲みるだろうし、ジークも血なんて舐めたくないだろ。
心配なら、せめて触るだけにしておいてくれ…。
[心臓に悪い、という言葉は飲み込んだ。
毛布を拾って、何故か自分を包もうとするジークに慌てて口を開いた]
それは、ジークが寒そうにしてたから持ってきたんだ。今自分で言ってただろ、毛深くなったって。だからこれは危ないと思ってだ、な、
[近付く目線に思わず声が止まった。
一歩後ろに下がろうとして、何処にも逃げ場がないことに気が付く。
近いと口にするより先に、眠っていた時みたいに、甘えるように頬ずりをされて。
忘れた振りをしようと考えていた記憶が、次々と思い出されてしまって、どうしようかと慌てそうになった時に聞かれた問い。
ジークは、良い夢を見ていたらしい。
あれはジークに取って「良い」夢だったのだろうか?
それとも、別の夢のことだろうか?
迷って、口を開く]
…、どんな夢だ?
[少しの期待を込めて、ジークを見つめた]
[彼の言う通りだった。
舐めて治る訳でもないし、尋ねて確認するなり、触れるなり
もっとスマートなやり方くらい、心得ていたはずなのに]
……そう、したかったんだ。
"耳を齧られた兎は快楽を覚える" 何処かでそう、聞いて……、
だから……、
[昏い欲求が、脳裏を巡る。
否、彼は無事だったのだし、そんな欲望は抱いて良いものではない。
自分で自分に言い聞かせ]
俺が寒さを感じるくらいなんだから、
君だって寒いだろう?
[そう言って毛布を被った頭部をぽふりと撫でた]
[毛布よりももっと、ずっと温かな温もりが傍に在る。
自分が気を失っていた時、温めていてくれたのは
ローゼンの薔薇の香の魔法ではなく、彼の腕だろう。
理解しながら、顔を持ち上げ… 褐色の眸を真っ直ぐに見つめた]
君に、……好きでいてくれ、って懇願される、夢。
君とたくさん、キスする夢。
――…おかしいよね、
…俺はさ、ローゼンさんの事があんなに好きだったのに。
今は、君のことばかり考えてる。
[自嘲気味に力なく、けれど幸福そうに、笑った]
[ジークがなんだか、とても悲しそうな顔をしているように、見えて。
──そんなに 齧りたいなら、齧って、みるか?
気が付いたら口にしていた。自分が言った言葉にハッとして、慌てて誤魔化すように、なんてな、と付け足した]
寒いは寒いけど、これはジークの為に持ってきたんだ。後で同じ箱の中を探せばきっとあるから、先にそれはジークが使えばいい。
[納得が行かない、そしてまた撫でるのかと、むすりとした表情でジークを見た]
[無言で、ジークを見つめながら夢の内容を聞いた。
それは、自分が見た夢と同じで]
…それは、きっと夢じゃない。
俺も、同じモノを見ているから。
なぁ、ジーク、それは本当の気持ちだろうか?
ローゼンさんを好きだったジークの気持ちを、俺が薬で変えてしまったからでは、ないだろうか?
[幸せそうに笑って此方を見つめるジークの目を両手で覆い隠して]
──なぁ、ジーク、後悔、しないか?
[出来る限り声が震えないように、泣いてる自分に気付かれないように、ゆっくりと言葉を紡いだ]
好きだ、ジーク。
卑怯な手を使っても、俺を見て欲しいと、思うくらい。
[言い濁すよう後付けされた、打消しの言葉に小さく笑う。
戯れの中に彼の本音があるのなら、それはとても幸福な事だと、
……自分にはもったいない事だと馳せながら瞼を瞑り、左右へと首を振る]
君が本当に齧られていたら、そうしてたかもね。
誰かにつけられた傷ごと、俺が喰らうんだ。
……あ、俺は普通の兎だよ?
[誤解されては困るとばかり付け足し、朗らかに笑った。
何やらおこぷんな彼が可愛くて「ではお先に頂きます」とか
仰々しい言葉で毛布を受け取り、肩へと羽織った。
彼の温もりの移った毛布がとても、暖かい]
[夢じゃない、その言葉に双眸を瞠らせる。
そうだ、己は確かにあの、桜色の世界で、彼を――…
それらが薬の効果の所為、だった事も]
あの時は、わからないけど…、
今はもう、薬の効果は切れてるよ。
だってもう、桜色の世界はないだろ?
[彼の掌が、己の視界を遮る。
少しばかり震えているように聞こえる彼の言葉が、
直ぐ傍に感じる、熱い雫の気配が。
その囁きが――… 胸の奥を、熱くさせた]
なんでそんなに、……、
泣き虫なんだよ。
普段はあんなにしっかりしてるのに、
生真面目な癖に…
[己の為に、涙を見せる。
己を欲して、"卑怯な手"を使う。
まるで彼らしくない行動の発端が自分にあること、
……それが何とも言えずに嬉しくて]
――俺も、…すきだよ。イェンスのこと。
だからそんなに、泣かないで。
[ね?と、彼の瞼をキスを落とし
あの時と同じように睫毛を舐めた]
[微かに薔薇の香が伝う。
また誰かが、此処へと"強制送還"されてくるのだろうか]
毛布と、灯りと、食い物と……
木箱の中を一緒に、探そうか。
そういえば此処は君の古巣なんじゃないの?
[確か、船倉の木箱で眠っていたとか何とか言っていたような…
そろそろゲームが終わればいいんだけどね、
そう呟いて彼の肩を抱き、とん、と背を叩く。
幸福な感傷にずっと浸っていたかったのに
状況がそれを赦してくれない事に、溜息を零しながら**]
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