情報 プロローグ 1日目 2日目 エピローグ 終了 / 最新
待っているから。
見守っているから――――… ずっと。
[女神とは民を信じ、見守り、見届ける者。
今は“元”が冠されるが、彼女の本質は変わっていない。だから]
…想いを、紡いできて。
紅いあの人と共に。
[おそらく此方のことを覚えてはいまい、もうひとつの面影をなぞる。
垣間見える彼もまた、何かに囚われ辛そうで。
…はやく、不器用な二人が心穏やかになるといい。
ジルは静かに優しく、霞草の祝福を*唱えた*]
[そうだ。これもきっと夢。
だから怖いことは何も起きない。
初恋のひとと兄と慕うひと。
ずっと眩しく見つめていた仲のよい二人。
傷つけあうなんて出来るはずがない]
[そのはずなのに。
いえ、そうあって欲しいのに。
互いの手には一振りの剣。
その瞳には殺気を漲らせて。
そうして煌めく銀の刃が振り下ろされ、紅刃が打ち合わされ、
重なり共鳴した音が礼拝堂に木霊した]
だめっ…………!
[考える間もなく身体を動かして止めに入ろうとした。
それなのに、走っても走っても礼拝堂は近づくことはなく、
止める声も虚しく闇に消える]
[そうして足掻いている間にも戦いは続く。
刃だけではなく、互いの全身を使った戦い。
紅が足を使えば、銀は盾で持ってバランスを崩そうとして。
そのまま縺れあい、ひんやりとした大聖堂の床へと倒れこむ。
だが両者ともに剣を離すこともなく、
その身体を引き裂かんと再び剣先が動いた]
[自分とて武人の娘。
父に連れられて兵たちの訓練を目の当たりにし、
剣の使いかたを教えこまれ、
そうして自らの意思で戦場にも立った]
[それにこれは――宿命]
[愛しいひとが、自身の祖国に。
そして彼の恩師と友に刃を向けた時から。
互いに血を流さずにはいられなくなった]
[頭の中では理解しなければならない。
それでなければ武人の妻は勤まらない。
そう思ってはいても。
彼の左腕が切り裂かれ。
彼の肩から流れ出す血が白を赤く染める姿に]
いやっ……!
お願い……。
……死なないで……。
[そう祈らずにはいられなかった]
[其処へ思わぬ闖入者が現れた。
大きくて黒い犬――
いいえ、あれは狼。
獰猛な牙を持ち力が強くて賢くて立派な狼
その狼が瞬く間に人の形をとる]
[呆気にとられて言葉も出ない。
だが――]
そうだわ。これは夢なんだもの。
おかしくはないわよね。
[そう自分に言い聞かせるように口にする。
だって目の前で起きていることが、夢じゃなければ耐えられない]
[だが再び。
互いの心臓を、互いの全てを求めるかのように
両者の刃が動く。
否、その力がないということはさすがに見て取れるが、
それでも緊張を隠せない。
だがその惨劇は、狼から変じた男によって阻止された]
良かった……。
[兎にも角にも二人の命が失われなかったことに感謝しながら、
その場から消えゆく彼の姿を目で追った]
[次に見えた景色は何処かの街並み。
と言ってもよく知る賑やかな街とは違って、
人のいないどこか乾いた街――。
そこに――手負いの彼>>1:672はいた]
[あんなに血を流しているのに。
ジークに刃を向けたのだ。
身体だけではなく、心も傷ついているのかもしれない。
そう思うのに、彼の側に寄って傷を癒やすことも
出来ないのがもどかしい。
ならばせめて彼の為に祈ろう]
ギィさま……。
私はいつでもあなたのお側におります。
あなたが幸せな時も。
あなたが辛い時も。
必ず側に――
あなたが私の罪を受け入れてくれたように。
私もあなたの罪を全て受け入れて。
そして癒してあげたい。
[祈りが終わって目を開けると、目の前には何も映っていない。
ただ闇が広がるばかり]
[此処はまだ夢なのだろうか?]
[ギィは――
ジークムントはどうなったのだろうか]
[女は緩く頭を振った]
[それを考えたところで仕方がない。
自分に出来ることは二人が必ず帰ってくると信じるだけ]
[否、最初から迷う必要はなかったのだ]
[彼らなら――
幼き頃より憧れ、尊敬していた彼らなら信じられる]
情報 プロローグ 1日目 2日目 エピローグ 終了 / 最新