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― 深夜 ―
[傷付いた錆色の狼はひたすら戦っていた]
カタリナを告発すれば。
自分は助かるかもしれない。
罪を持たない。
赦された狼を。
生贄にしてでも生き残る価値がある?
あれは神聖な狼。
仲間を指した男を護った敵。
それでも。
大切な…村の一員なのだ。
[予期せぬ月色の狼を見た衝撃と。
僅かだが牙を濡らした同胞の血と。
傷付いた痛みが、ただの獣に落ちようとする意識を繋ぎ止める]
なぁ、ルビー、ボルドー…ブラッド…私は…私は。
[痛みは絶える事は無いが、数度の深呼吸で
多少マシになったように思えた。
震えそうな脚を叩き、呑まれそうな意識を叱咤し立ち上がる]
あの…実は、アルビンさんの荷物に、
薬以外に、大きなナイフがあって……私が持ってる。
勝手に、ごめんなさい…。
ルゥ兄が必要だと思うなら、談話室に降りてきた後、
厨房かどこかで、渡すこともできはする、けれど…
[思い悩むような間の後、躊躇うような小さな声でそう伝える]
ん、ありがと……。
[なんで隠してたとは思うも、問い詰めることはしない。
きっと、私に使わせたくなかったんだろう、と。]
わかった、すぐ行く。
うん…ごめんなさい。わかった。
[ナイフを隠した理由の半分は、人間の姿の時にも守れるように。
残りの半分は、ゲルトがほぼ正解を想像できているとは知らず、
すぐ行く、という声に。小さく返事を返した]
良かったな、ルビー、ボルドー。
リーザはお前達を悪い人狼だとは思ってないそうだ。
[牙の通らぬ…相容れぬ存在なのにな。
静かに赤い虚空へと聲を投げて]
静かに…暮らせたら…どんなに良かったかな…。
/*
や、シモンが殺ってくれないなら、って保険でもらったんで気にせずに。
ともあれ、色々苦労してくださったであろう村長が綺麗におわれるように、動いていきましょうね。
/*あ、保険だったなら、よかった。
はい、村長さん、色々とご苦労は偲ばれ。
村長さんや村が綺麗に終われるようには、とても思います。
了解です(ぎゅ
[緩慢な歩みで進む宿の中、
笑い声と共に駆け抜ける幻を視た]
ディーター…。
[フリーデルと共に駆けて行くディーター。
また悪戯をして大人に怒られているのだろう。
フリーデルは楽しそうに、ディーターは半泣きに見えた]
[そしてまた新しい声が談話室から聴こえてくる]
ああ、あれはヨアヒムとヤコブか。
[新しい画材を買って貰って、喜んでいるヨアヒムと。
そのモデルをやっていたヤコブ]
まだ子供だったか…あの時は…。
[子供達の笑い声に混じってレジーナの笑い声も聴こえた。
ここは、幸せの詰まった場所だった]
[不思議とゲルトへの憎悪や怒りはもう沸かなかった。
判っていたからだ。
誰よりその憎悪と怒りをぶつけたかったは、自分自身と言う事に。
ただ、自分の心の平穏の為に誰かを恨み、殺したかっただけだ]
[飢餓や渇きが丁度よく自分の心と溶けあって
ゲルトを襲っただけだ。
それを覚ましてくれたのはカタリナだった。
御伽噺の人狼でも更に御伽噺の存在。
人を餌では無く、護るべき存在だと信じ、道を別った同族。
本当にいたのだ。
恐らく人間が人狼を見て、そう思うのと同じ様に]
そうやって…生きていけるなら…私は今迄…。
[カタリナの母と娘の運命を知る事は無い。
だが、人を襲わずに護り続けて生きていける事が出来るなら。
ヨアヒムやディーターが、自分では無く、カタリナと出会えていたら]
[どれだけ考えても…過去は変わらない。
変わらないからこそ、考え続けて]
お前達に…もっと違った未来を見せてやれなくて…。
本当にすまなかった。
[彼らに言えるのはそれしかなかった]
私の役に立つとしたら…ルビーとボルドーが
笑っていられる様に…傍にいて貰う位しか無くてな。
[聲が届いたら文句を言われそうだが。
返って来ないからこそ、好き放題に口にする。
その口元に、少し寂しげな笑みを浮かべ]
[一歩、一歩処刑台へ歩く。
不思議と怖さは無かった。いや。
出血と寒さから来る疲労と痛みで。
まだ暴れたいと、生きたいと吼える獣を抑え付けるのに
必死でそんな余裕は無かっただけだろう]
わたしね、ジムゾンと約束したの。
リーザがひとり勝手に決めちゃったんだけどね、
ひとりぼっちにしないって。ずっと、一緒に居るって。
それにね、わたしは生まれる前に会おうって決めてた人も居るの。
ずっとずっと会いたくって漸く会えたというのにお別れなんて淋し過ぎる。
その人達をわたしはほうっておけない。
それにね、わたし、ペーターに会いたいの。
リーザの我が儘を聞いてくれた優しい聖霊様に。
きっと、ペーターは死ぬのが怖かったと思う。
死にたくなんかなかったと思う、生きたかったと思う。
それなのにリーザを捜しに来てくれたペーターに今直ぐ会いたい。
一杯、ごめんねって言って謝りたい。
沢山、こんなリーザの我が儘に付き合ってくれて有り難うって言いたい。
でもね、でもね、
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