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っ、マレンマ?
待て。今はまずい……っ
[囁き>>*19に返した声に、らしからぬ焦燥が滲んだ。
それは自らを案じての響きではない、そうではなく。
これから起こること、その予想される衝撃の大きさ。
それにいとし子が巻き込まれるを、恐れてだったが。]
[駆けつける、という叫びに返ってきたのは、焦り滲む制止の声だった。
なぜ……? と。
想いは混乱し、波立つ。]
どうし─── …
[問いのかたちの響きは、途中で途切れる。]
マレンマ、リヴィエル。愛しい子。
大事はないか?
[続き呼びかける声は、今は打って変わって穏やかに。
慈しみ深き響きで、いとし子の名を呼ぶ。
何事もなかったかのようにして。]
こちらへおいで。
[そうして差招く、自らの傍らへと。]
師父…。
[しばらく、声が出せなかった。
立て続けの衝撃、───身体的なものではなく、
目の当たりにした数々の光景に、打ちのめされて。]
私は、 無事で、います。
[ようやく響かせた言葉も、微かに震える。]
お前を置いて───…
… 全て、消えはしないから。
[安心おし、と。
おさな子あやすように、心の温もりがいとし子を抱く。]
では───…
手伝っておくれ。 我がいとし子よ。
わたくしは他に、手が回らぬゆえに。
[それは術式に、全てつぎ込むことを意味する。
そうとなれば移動も防御も、全てかなわぬものとなるだろう。]
…ほんとうに?
[嗚呼。それはおさなき子の、愚かな問い。
てんしさまは、いつだって本当のことしか言わないのに。]
やくそく、 して、くださいますか …?
[縋るよう、言葉は紡がれる。]
ああ、
[術を紡ぐ間も、心の声は自由だ。
道を失った迷い子のような、不安げな声。>>=17
それへ、温かな声が優しく響いた。]
…… やくそく、だ。
[音の響きは、微笑みと同じ響きで。]
[柔らかなこころが震えるのとは裏腹に、
意識の面を覆う意思は、滑らかに澄んでいく。]
必ず───。
あなたを、お守りします。
[求められた喜びに、微かに心浮き立ちさえした。]
マレンマ、愛しき子。
約束するよ。
…──── お前がわたくしを求める限り。
わたくしはもう、お前を置き去りはしない。
やくそく。
[優しい響きに、蕾ほころぶかのような笑みが咲く。
あたたかな陽光に巡り合った、ちいさな緑のように。]
ありがとうございます。
───わたしは、しあわせものです。
― 遠き日 ―
[今日は何があった、あしたは何をしよう。
そんな他愛もない声が、おさなく響く。
天の種子を地上に起きて以来、
大天使の元にはそうした小さな声が届くようになっていた。
応えられないこともある。
むしろそんなことの方が多かったかのようにも思うが。
おさない声はそれでも、何度も語りかけてきた。>>=9]
かみさまはね…とおい空の向こうにいらして、
[そんな話をしたこともあったように思う。
子どもの他愛ない話に、
ただ寄り添うように合槌うった日もあったようにも思う。]
おおきくおなり。
[そうして時折、そんな言葉を添えた。
おおきくおなり、健やかに育ちなさい。
目に映すことはかなわずとも、
おさな子の成長は大天使にとっても喜びとなり始めてたから。
その成長を願わずにはいられなかった。
その顔を見たいと───願わずには、いられなかった。]
( いつの日か──── )
[いつの日か再び、と。
願う都度、銀の首飾りは仄かに温かさを伝え瞬いたのだ。*]
[名残響かせるを、
ただのひとつも漏らすまいと息を詰め、心を凝らし
最後の響きの、最後の揺らぎのひとつが消えるまで、
身じろぎのひとつもせずに聞き入っていた。]
[そうして、凪のように凪いだ魂の面に]
……師父。
───わたしも、あなたを、
お慕いしています …。
[波の形をなぞるように、心に刻むように、
そっと声を解き放った。]
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