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[投げたワイヤーは、正しく花神の“いた”場所へと向かった。
ワイヤーに絡みついた雷蛇も、ワイヤーに導かれるまま正しく、獲物を狙った。
しかし。
その牙が獲物を捕らえることはない。
舞い散る花弁に視界を奪われ、信じたのは己の“見たもの”。
傷を受け、落ち、蓮花に掬われた花神の姿。
まさか、そこから跳びあがるとは、予想せず。]
っぐ、ぁッ!?
[胸のど真ん中を貫かれ、男は衝撃に足場を崩す。
開かれた唇の隙間から散る鮮血を、まるでスローモーションのように眺めながら、背中から大地へと叩きつけられるに任せ。]
ッ…
[背中がひび割れた大地に跳ね、息が詰まる。
ワイヤーに絡んでいた雷蛇が消え、胸の、背中の痛みと共に、呼気を叩き出された肺が軋み、悲鳴を上げる。
喘ぐように喉を見せるも、気道が酸素を吸い込むことはなく。
酸欠に、意識が遠のく。
視界の隅に映り込む赤は。
あぁ、あれは…
俺の、命の色……――]
…け………せ…
[負けた。すみません。
どちらの言葉も形を成す前に]
[花は舞い、花は散る]
[散る蓮花の撩乱たる狂い舞いの中、銀の獣の放ったフックは空を切り、花神が手にする命水の刃は銀の獣の胸の中心に届く]
惜しかった、な。
[囁いて小さく笑んだ花神の刃に貫かれ、男は、緋の花を咲かせながら、地に墜ちた]
ルートヴィヒ・ヴォルフガング…美しき雷華の眷属よ…
[倒れた男の傍に膝をつき、花神は囁きを落とす]
其方もまた、見事なる花であったよ…
リーーン…
[蓮鈴の音と共に、水刃は、もとの水となり、流れ落ちる。
ルートヴィヒの体内に流れ込んだそれは、花神の命の水故に、自ら刺し貫いた男の傷を、内側から癒し始めていた**]
[みし。パキン。
拮抗する力と力のせめぎ合いの中で、破片の砕ける小さなちいさな、おと。]
(ああ、駄目だ)
[歯噛みする。
王座が欲しかった訳じゃない。
もうとっくに、欲しいものは手に入れている。
これは、
(すまん、ルート、これ以上は)
[俺はお前を、護っていられなくなる。
陽光を纏う飛沫に、視界がスパークした。目も眩むその光の中、けれど思考は紅く緋く塗り潰されていった。
肩の下から先の無い左腕から緋色の電流が噴き出し、形を成していく。元あったヒトのものではない、獣の前脚の形を。]
…る、ァ、ァアアァァア!!!
[水刃の大剣と鉄の槍がぶつかり砕け、轟音の中で音を成さない啼き声。
槍は水刃を砕き、雨のように降り注ぐ水を全身で受けた。
散漫した思考で、それでも姿勢を低く右手と脚て確りと地を踏みしめ、荒い呼吸を繰り返す。
やがて、響いた破裂音と、衝撃。]
────ッ…、ルート…、
[途方も無い痛みが胸を貫いて。
肺を焼く灼熱に拡散しそうになる意識の中、口の中で転がったその音が脳裏を支配した。
甘い、音。子供が好むような。そして。]
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