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― シコン アンティーヴ邸/後刻(葬儀前夜) ―
泣きませんよ。
そんな恥ずかしいこと。
── 雨に打たれてきましたから、もういいんです。
[視線を落としたまま、首を横に振る。]
……あなたのことに関してだけは、
なにひとつ後悔しないように、したいですね。
[ぽつりぽつりと、そう呟いた。]
― シコン アンティーヴ邸/後刻(葬儀前夜) ―
ああ、
何をどれだけ失おうと、傷つこうと、
おまえは俺のために生きていていい。
俺は太陽だ。
おまえひとりのために生きてやれはしないが、
おまえだけを住まわせている場所が、ある。
― シコン アンティーヴ邸/後刻(葬儀前夜) ―
[トールの言葉に顔を上げた。
青天の太陽が目の前に降りてきた心地がして、目を細める。]
─── はい。
あなたのために、これからも、
生きていけることが、嬉し い …
[彼の存在に、彼の言葉に、体が熱くなる。
ついでに目頭まで熱くなって、慌てて顔を伏せた。]
− 現代 − >>146
好きだったり気になったりしているのにツンケンするのも嘘のうちだと思わないか?
― 現代 ―
その間と笑みが不穏なんだ。
何が改まって「陛下」などと。
[こちらも、いつも通りの調子で揶揄う。]
― 回想:9年前/帝都 ―
[家を継ぐのはやめます、と宣言された。
そういう選択肢を考えたこともなかったアレクトールは目をしばたたく。]
おまえが俺専用に? 思い切った賭けだな。
[声が弾む。脈が早打つ。]
ああ、昼寝つきは保証できないが、同じ釜のパンを一緒に食おう。
実家にいるよりもおまえの才が発揮できる場を用意してやる。
[リストの末尾に自分の名を書くつもりなのかと手元を覗き込む。]
― 回想:9年前/帝 ―都
商家の仕事より、あなたといる方が面白そうですから。
[これまで、家の仕事を継ぐのだと当然のように思ってきた。
その未来予想図がこうも短時間で覆るとは、自分でも信じがたい。
多感な15の年に出会った刺激的な出来事と相手に惑わされているだけかもしれない。安定した道と両親の期待を捨ててしまう愚かな選択かもしれない。
けれども、こうするべきだと魂が囁く。
触れ合った熱さが、新たな道を指し示す。]
あなたが作る国を、間近で見てみたい。
[だから共に行くのだと宣言する。]
…どうしました?
[手元を覗きこまれて、不審の目を向ける。
ペンを置いて、インクの乾きを確かめ、
自分の名は書き加えぬままにリストを懐に入れた。
そこでようやく、トールの疑問に思い至る。]
別に私はここには加わりませんよ。
[当たり前だという顔をトールに向ける。]
象徴もなにもなくとも、
私は、あなたと繋がっていますから。
しかしなあ、
[ふと、落ちるのは音にならざる小さな声]
……俺は相変わらず、臆病なんだろうな。
[微かに笑う気配。
見ても、怯えの風は見えぬだろうけど]
あの皇帝陛下を驚かせんでも、どうしても、
確実に勝てる方法がないかとずっと考える───…
[つまらないと言われたそれを、繰り返して]
つまらなくともどうしても、勝ちたいな、タクマ。
お前と…お前さんたちを、生かす為にも。
[結局はそういうことだ。
命を奪う商売を続けながら、命を失うことを恐れ続けている。
英雄らしからぬことを、ごく密やかな音にして]
──── 勝つぞ。
[ひとつ呼吸を置き、力強く言い切って口を結んだ*]
[ 小さく落ちる声を、タクマはしばらく黙って聞く。
弱音と思える言葉も、自らを臆病と呼ぶ、その声も、否定も肯定もせぬままに ]
[ そうして、英雄としては口に出来ない、人としての本当の願いを、そこに落としたゲオルグに、緩く笑みを浮かべた ]
言われなくても、生き抜きますよ俺は、ちゃんと帰ってこいってうちの息子に言われてますからね。
[ 息子、と、男が今まで養い子の事を、そうはっきり呼んだことはない、と、ゲオルグは知っているだろう ]
ええ、勝って帰りましょう。**
息子に…? 、そうか。
[ふと。何気なく落ちた音を聞きとがめ、そして、その意味するところに仄かに微笑んだ。はっきりとは初めて聞く、その響きに]
… そうか。
そりゃあ、 みっともないところは見せられんなあ。
[心が温かになる。その心のまま、ゲオルグは嬉しそうに笑みを浮かべた**]
― 回想:9年前/帝都 ―
[「あなたが作る国」とルートヴィヒは言った。]
ああ、
俺はいずれ帝国を”受け継ぐ”だろう。
そこから先を生み出すには、おまえがまだ足を踏み入れたことのない地まで連れて行ってやらないとならないか。
大仕事だな。
だが──見せてやる。 俺を扶けよ。
[海峡の彼方へ向かう意志は、この時、確かに蒔かれたのだ。]
[そんな誓いを交わしたルートヴィヒは”仲間”には加わらないと言う。
出自の違いを気にしているわけではなかろう。]
繋がっている──確かにな。
[遠くに居ても感じる熱と声。情。
それは特別なものだ。 けれど、]
おまえが、こういうものがあれば絆がより強くなると言ったのだから、
俺はおまえと
それも──牢に入れられようと取り上げられぬものを。
[誂えられた黒革の短剣をルートヴィヒの胸に擬した。]
― 回想:9年前/帝都 ―
あなたは、"受け継ぐ"だけで満足はしないでしょう?
きっとあなたは何かをする。
新しい、おおきなことを。
私は、それを見たい。
[未来への種を、共に握りしめ]
─── はい。
私は、あなたの翼になってみせましょう。
あなたを高みへ駆け昇らせる力に。
[誓うように告げる。]
[取り上げられぬ証が欲しい、と短剣を向けられて、
困ったようにしばらくその切っ先を見つめた。]
…… 痛いのは好きじゃないんですよ?
[文句を言いながらも、服の前を開く。
空気に晒された躰は、ここ暫くトールに連れまわされて多少は鍛えられたものの、年相応に細くなよやかだ。
一点の曇りもない白い膚は、新雪の風情を宿していた。]
― 回想:9年前/帝都 ―
[文句を言いながらも晒される肌は透けるような白さだった。
穢すのは惜しい、と同時に、嬉しいと思う。]
一緒に、だ。
おまえはあまり身体が丈夫ではないから、キツいかもしれないが。
ちゃんとした師に彫ってもらおう。
俺とおまえの絆の象──何がいい。
[誰にも奪えない、なくしたりしない。秘密をそっと身体に刻む。]
― 回想:9年前/帝都 ―
[どうやらトールはここで無茶をするつもりはないらしい。
止血をどうするか、まで考えて構えていた身体から力が抜ける。
と同時に、そんな無茶も受ける気だった自分に驚愕した。]
……絆の象、ですか?
[いささか疲れた気持ちを取り繕いながら、首をひねる。
程なくしてペンを手に取ると、紙の上にさらりと滑らせた。]
こういうのは、どうですか?
[示してみせたのは、翼の生えた太陽の図柄。
胸に感じた熱さをそのまま絵にしたら、こうなったのだ。]
― 現代 ―
なかなか船の釣りもうまくいかないものですね。
[ぼやく口調で声を飛ばす。]
例の小型戦艦がそちらへ向かっています。
すぐに追いつくつもりですが、気を付けてください。
― 現代 ―
食えんシロモノだ、そう残念がるな。
[別状のない声に安堵して、息をつく。]
ああ、確かに早いしコンパクトな戦艦だ。
実検しておく。
― 回想:9年前/帝都 ―
[服の前をそのままにペンを執ったルートヴィヒは、紙の上にインスピレーションを残す。]
ああ、 これだ。
[自分にも、ビジョンが見えた。
デッサンを半分に折り、ルートヴィヒに対しては振るわずにおいた刃でカットする。
片翼の半円がふたつ。太陽で月で未来を向く横顔で比翼。]
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