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[頑なだった騎士は、今や拓かれ曝かれて、蕩けた声を止めどなく零している。
眦から溢れた雫を舌先で拭ってやって、ついでに軽く突き上げた。
彼の快楽の全ては、今この手中にある。
すなわちこの瞬間、彼の全てが私のものだった。]
私のものになるといい。
[根元を揺らす程度の穏やかな愛撫を続けながら、声を吹き込む。]
おまえはこの先、私なしではいられないよ。
おまえが欲しい。
いいや。
おまえは、私の元へ来るべく縁が結ばれていたのだ。
おいで。おまえのあるべき場所へ。
[手を緩めたとはいえ、未だに繋がったまま、
心と体を組み敷いたままで、求める言葉を告げる。]
言ってごらん。
あなたのものになります、と。
[そそのかす言葉は、まさに悪魔の囁きだった。*]
[ 果てることない淫楽の調教の中で、再び彼から求められた。]
あなた の、 ものに…── ?
[ シェットラントにとっては、今や、別の意味も持つようになった言葉だ。
この先、彼なしではいられないと認めるだけで、体の芯が蕩けた。
焦らすような浅い律動に震えが走る。]
っあぁ…、 も っ
[ 肉体の痛みになら耐えられると覚悟を決めていた。
けれど、身体のつながりは理性を麻痺させ、優先順位を覆してしまう。]
…し て、 欲しい わたし、 を ──
[ 陶酔の呻きに、わずかに苦いいろが混じる。]
── 姫… 、
[ ただひとつ心に残る柵。*]
[望んだままに答えた彼の頬に雫が伝う。
指を伸ばしてそれを掬い、唇に含んだ。
甘く、苦く、舌先に香るのは、悔恨の念であろうか。]
そう。おまえは私のものだ。
満たしてあげるよ。おまえの、望むままに。
[正しく答えた彼の髪を撫で、ゆっくりと繋がりを解く。
抱え上げていた足を降ろして楽な姿勢にしてやり、添うように共寝した。]
[横を向かせた彼の背後から腕を回して抱きしめる。]
おまえの大切な姫は、私が安全なところへ送り届けるよ。
傷ひとつ付けたりはしない。
ただし、今日のことは忘れてしまうだろうけれど。
あれは、そういう眠りだから。
[彼の心はなにひとつここに残しておきたくない。
心配などさせない、と約束する。]
だからもう、私だけを想っておくれ。
[再び、彼の中へと自身を送り込む。
かき分ける隘路は熱く溶けて、ほぼ抵抗もない。]
二度と、後悔などさせないとも。
[滲み出た闇が二人を持ち上げる。
柔らかく揺蕩う闇はほとんど圧力も感じさせずに二人の身体を支え、水中のような浮遊感で包み込んだ。*]
[ 快楽に繋ぎ止められていた身体が解かれ、中を埋めていた躍動が抜き去られた。]
あァ…、
[ もどかしいような声が漏れ出てしまう。
「入れてください」──もう一度、そう言えばいいのだろうか。
とりとめなく乱れた思考の中で、記憶を拾い集める。]
──…っ!
[ 意識がはっきりしてくるにつれ、惑乱の中で口走った言葉も思い出した。]
…あのような 卑劣なやり方で、わたしに──
[ 憤激とやるせなさが錯綜して、拳を握り締める。
距離をとろうと思う端から、背後から抱きついてくる檳榔卿の手の感触に身体の芯が熱くなった。
屈してしまったのは、夢でも嘘でもなかった。]
[ 姫の身柄について語られ、気持ちは揺れる。
それさえ保証されるのであれば、護衛として最低限の務めは果たせたと言えよう。
記憶に残らないというのも、姫にとってはきっとその方がいい。
彼女を助けるために近衛が陵辱されたと、そんな責任を背負わせて、姫を苦しめてはいけなかった。]
そう…だな。 それで、いい。
[ 努めて冷静な声で答える。
約束を守るからには、彼は愉しんだのだろう。]
あなたが去れば、わたしは修道会に入る。
あなたが、これ以上、人間に害をなすことのないように、それだけを想い願おう。
[ 街の教会が現状どうなっているか知ることなく、穢された身の処し方を選ぶ。]
── だから…っ
[ 再び彼が動き出すのを察し、身体を硬らせる。
また、あんな風にされたら、自分は、]
もう ──…
[ 伸ばした指の先が、闇に包み込まれた。*]
[身体を繋いでいない時の彼はやはり頑なな騎士だった。
人の世界に戻れると思っているあたり、まだわかっていない。
自分が、何に見いだされたのかを。
時間はたっぷりある。
じっくりと、彼に教えてあげよう。
夜明けも、この闇の世界では関係ない。]
どこにも行かせないよ。
私の腕の中で達くだけでいい。
[自由になった姿勢で、彼の内側をかき回す。]
ここを封じたままでは可哀想だ。
外してあげるから、存分に出してごらん。
[彼の足の間に手を伸ばし、闇に縛められた彼の分身を握る。
奥深くまで入り込んでいた闇は、柔らかく溶けて流れだした。
ここを塞いでおかずとも、彼は中で達することを覚えたはずだ。]
さあ。もっと自由に感じて。
自分が気持ちいいように身体を動かしてみて。
どうすれば良いかは、わかっているだろう?
[手綱を彼に渡し、自分は故意に動きを押さえる。
彼の動きに合わせ、あるいは煽るために時折突き上げるのみ。*]
[ 上も下も曖昧な闇に包まれた浮遊空間で、騎士の運動神経は姿勢の安定をはかろうとするけれど、中から外から掻き回され虚しく宙に架けられる。]
…や、 あァ…
[ 声は籠もり反響して、浴室での狼藉を想起させた。
あの時と同じように後ろに彼の存在を感じる。
しなやかな指が男根を握り込んでくることで、自らの熱を感じた。]
そんな 、 ところ ッ
[ 他人に触れさせるような場所ではないと、腰を引けばトロリと濡れた感触で滑り、わずかな摩擦に快感の電流が走る。
濡れた音のもとが彼の操る粘液なのか、自分の溢した体液なのか、知る由もない。]
ンあ…っ
[ 誘い誑かす言葉に、脳幹が痺れた。
拒むように首を左右に振るも、腰はもう、今し方の快感を追って、彼の指に自分の熱を擦り付けるように動いていた。]
っう、 は、ァ ── や、 出る…
[ 快楽に抗えない自分を恥じて咽び泣きながら、瞬く間に昇り詰めて、精を吐き散らす。
眠っている間に自然と起きてしまうそれとは違い、明瞭で濃縮された快感だった。
後ろめたさを覚えながらも、甘美な余韻に身を任せてしまう。
先ほどの、果てのないような痙攣とこれは、似て非なるものだ。
もしあれと合わさったら── ]
あなた も…、
[ 自分の考えの疾しさに、シェットラントは喘いで、手で口を押さえた。*]
[既に幾度となく頂点を極めさせた身体は、未だ燻る熱を孕んでいる。
ほんの少し後押ししてやるだけで、たちまち昇り詰めた。
最初の忌避感は、騎士としての倫理によるもの。
身体が受け入れさえすれば、後は心が付いてくる。
積極的に擦り付けられた熱を、指と掌で存分に掻き立てた。
咽びながら吐き出された快楽の証はとろりとして濃い。
散々解放を阻まれていたせいもあるだろう。
指先を濡らしたそれを口に運べば、濃密な快楽の味がした。]
[貫かれる奥深い快感を覚えた身体は、吐き出すだけでは物足りなくなっているらしい。
吐精の余韻を味わっていた彼は、「あなたも」と求めてくる。
肉の欲求と精神の自制の狭間に零れたその言葉は、なににもまして淫らだった。]
おまえが求めるのなら、
一緒に―――
[巧まぬ誘惑に身の焦がれる思いを感じながら、動きを再開する。
もっと締めて。腰を動かして。
そんな風に、彼への指示も挟んだ。
彼と己の快感を乗りこなし、手を携えて極みへ至るために。*]
[ 愛欲にまみれた言葉を、檳榔卿はそっと掬い上げて肯定する。]
──っ な…
[ 再開された侵略は、先ほどまでとはその様相を異にしていると感じてしまうのは、シェットラント自身の変化だろうか。]
わ… たしが、 求めて も、 いい …のか
[ 喘ぎに紛れた問いかけは、指示の形で戻される。
教え導く声のままに、ぎこちなく腰を揺らし、足を絡めれば、戸惑いなどすぐに蕩けてしまった。]
あ、 っはぁ… あぁぁ ッ や、
おかし く、 なる…、
[ 身も心も、彼だけで埋め尽くされ、狂おしく歔欷する。
こんな自分は知らない。
けれど、いってしまう。]
あなたのもの ── です
いっぱ い く、ださい …っ
[ 呼び求める名を知らず、闇を掻き抱いた。*]
[新たな媾合いは、一方的に犯し、与えるだけのものではなかった。
指図する声に応える彼の動きは、最初はぎこちなく、だがすぐに滑らかで大胆なものになる。
思った通りだ。
彼はこれほどにも淫らで感じやすく、愛おしい。]
もちろんだとも。
もっと、求めて欲しい。
おまえが私のものになるということは、
私が、おまえのものになるということだよ。
[惚れた側の方が弱い、とはよく言ったもの。
全てを求め、全てを与えたい。
純粋で強欲な魔物の愛を存分に注ぐ。]
[高まりゆく彼の気を、喘ぎでも内側のうねりでも感知する。
手綱を操るがごとく快楽を御し、息を合わせて肌を擦り合わせる。
彼が切なく啼きながら至福へ駆け上がった直後、自らも後を追って頂へと至った。]
ああ……愛している、っ ……!
[求める言葉の淫猥さは、性愛に長けた魔性をも絡め取り、我を忘れさせた。
もう少し焦らしてみようとか、もっと悦びを引き出してからにしようとか、様々な思惑を振り切って、愛しさを彼の中へと注ぎ込む。
気が遠くなるほどの絶頂に駆け上がり、ともに失楽して深みに沈む。
互いの身体だけを抱いて安らぎの中を揺蕩う。
擬似的な生と死の果てに目覚め、改めて彼を発見し、深く接吻けた。]
シン、と呼んでおくれ。
[いつの間にか結合は解かれている。
それでも未だに奥深くが繋がっていると感じていた。
彼も、同じように思っていてくれるといい。
秘め事のように名を伝え、淡く笑って彼の瞳を覗き込む。]
おまえの名は―――?
[名告り、名告られるところから、改めて始めよう。*]
[ たとえ闇の帳に包まれていなかったとしても、彼の他に何も目に入ることはなかったろう。
檳榔卿に抱かれ、愛され、飛翔する。
これまで生きてきて、愛のなんたるかを知らぬと言った。
これからは、彼が教えてくれることがわかっている。]
── シン …、
[ 教えられた名は、脈拍ひとつ分だけの時間を彼に捧げるものだった。]
[ これからは、その名を呼んで達くことができると思えば、歓喜が血を熱くする。
彼に噛まれた跡が繰り返し甘く疼くように、その名は魂につけられた烙印だ。
返す名前を求められ、彼の唇の横に接吻ける。]
…シェリ、と。
[ 結合を解かれ、存分に満たされた情欲が鎮まれば、恋人同士が呼び合うような、そんな愛称を伝えたことに狼狽してしまう。]
わたしは、シェットラント・アラディーンだ。
[ 取り繕うように訂正した。*]
シェリ。
[明かされた名を、甘く口ずさむ。
舌先でくすぐるように軽やかに。]
――― シェリ。
[彼の方から初めて接吻けてきた。
その愛しさ嬉しさを込めて。]
[だから、熱から冷めた彼が恥ずかしがろうと、構わずそう呼び続けるだろう。
彼の本名は心に留めつつ]
私のシェリ。
もう一度、接吻けておくれ。
[そう言って抱擁するのだ。*]
[ 紅の魔性ことシンが教えた名を繰り返す。恋人呼びの方を。]
わざとだな…!
[ やめろと言っても、聞く耳を持たない上に、所有格までついた。
確かに、彼のものになると言いはしたが、恥ずかしい。
実力行使されれば到底、抗えないのは経験済みだけれど、]
しばらく、その口、噤んでいてもらおう。
[ 正当な理由なしに、甘やかしたりするものか。
抱擁してきた相手の顔を、生真面目に引き寄せるのだった。*]
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