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( お前に 会いたかった )
[本当は。
本当は…会わぬままあれば良かったのかも知れぬ。
地上に撒かれた希望の種、
これは人の子が不遜を為さずに地上にあったなら、
種は芽吹くことなく、そのまま人としての生を終えただろう。
天使降臨の奇跡が顕現することはなく、
人々は、依然として無知なる幸福の裡にあったのだろう。]
[けれど。]
[人の子らはやはり、大いなる過ちを犯した。
そのあまりなる無知と思い上がりは、粛清されるに値する。
既に裁定は下された。
人間は地より粛清されねばならぬ。
それが、いかなる悲嘆と苦しみの先にあるのだとしても。
人の子らには不服だろう、不満だろう。
地に満ちる嘆きと混沌の渦は、
人として育てられてきた、愛し子をも巻き込むだろうか。
苦しむだろうか。……悲しむ、だろうか。]
──── 良かった、と。
お前に会えた幸運を喜んでしまうこの心は、
天の御使いとしての道を外れてしまうだろうか。
自らの心で、この争いを……
人の子の不遜をさえ、喜びの裡に捉えてしまうこの心は。
わたくしには天の軍を率いて地に赴き、
人の子を粛清し神の声をあまねく地に響かせる使命があり、
……───お前との再会など、
取るに足りぬ”ついで”に過ぎぬ。
そう、分かって … いるのだが な。
[独り言に返る音はない。
この声は誰にも響くことはない。
そうと知るがゆえに、柔らかなこころは、
隠されることなく零されていく。]
今度はあべこべだよ、マレンマ。
[囁き落とす声は柔く、やさしく。]
今度はわたくしが、お前を待つ番だ。
[深い眠りに落ちた子の安らぎを破らない音量で。]
待っているよ。だから、
…… 早く、目覚めておいで。
[優しい子守歌の如く。
囁いて、大天使は祈るように目を伏せ微笑んだ。**]
魔法弾を?
奴らにも苦手なものがあったか。
[コンラートからの報告に僅かに喜色を浮かべる。
そうであるならば、例の船にも効果があるかもしれない。
魔導砲の開発は功を奏したと言えよう]
他に気づいたことはあるか?
[最前線を駆けたコンラートならば何か他にも見ていないか、と。
些細なことでも拾い上げようと問いかける*]
[ 喜色を浮かべたマチスの声に、役に立てたかとコンラート自身も嬉しくなる。我ながら単純なものだと思ったが、事実なのだから仕方ない ]
俺の見た限り、指揮を執る天使は三人…そのうちの一人が、あのいけ好かない大天使です。
残りの二人のうち、一人は光を、一人は影を操るみたいです。
二人とも、自由意志で動きはするようですが、大天使の命令が最優先のように見えました。
[ 実際に戦って得たデータは、恐らく、軍の誰よりも詳細だろう。何しろ、あの天使達の戦いぶりを直接見届けたものは大概命を落としている。
伝えられる限りを告げてから、少し逡巡して、コンラートは小さく声を繋ぐ ]
どうも、俺は奴らの気に染まないみたいで…まあ、当たり前だとは思うんですけど。
二度程、直接殺されそうになりました。
[ その一度が、左肩に怪我を負って帰った時だとは気づかれたか。しかし、詳しい事を話す暇はないとばかりに早口で続ける ]
…なので、囮作戦なら、俺が表に出るのが適任だと思います。後でダーフィトに話をつけるつもりです。
[ 最後だけが、かろうじて事後報告ではない、というだけの、ぎりぎりの報告を、わざわざ会議中にしたのは、無論わざとだが、マチスなら呆れはしても許してくれるのではないかと思っていた** ]
……何やら、ひとの子らは天犯す船を増やしている様子。
妙な違和感も感じますが、放置するわけにも行きますまい。
[一先ず、投げかけるのはこんな報せと]
一先ず、ひとの子の砦に潜んで参ります。
先には人気が無かった場所が賑わっている……というのは、何かあると思われますので。
[これから己が無さんとする事]
指揮は3人か……その人数であの軍勢を率いてるとはな。
一番上がアイツか。
[コンラートの情報は詳細で、後で全体にも伝えておく必要があると思えるものだった。
きっと重宝されることだろう。
逡巡するような気配には、言葉が発されるのを待った]
殺されそうになった、って……じゃああの時も。
[最初の襲撃での怪我がそうであると知り、驚くような声が通信機を伝う。
心当たりがありそうな様子に問い質そうとしたが、それよりもコンラートが口を開く方が早くて]
言いたいことは分かるが……
……仕方ないなぁ。
操縦出来なくなる、なんてことはないようにしてくれよ。
うちの
[言い募ろうとしたのを止めて、コンラートのやりたいようにやらせることにした。
ただ1点については厳命というような態で告げる]
おぅ、しっかりやってこい!
[出る、と言う声に明るい声を返す。
負けるなどと微塵も考えていない声。
運は自ら引き寄せるものだ*]
船を増やしている───…?
[影よりの報に、大天使は眉を顰めた。
地上の様子を眺め遣り、顎を引く。]
良い。それらへは、わたくしが当たる。
シメオン、アディリエル。
そなたらは、己の務めを。
[人の子の砦に潜むという影へも、きびとした諾が返る。]
アディリエル。 足りるか?
[投げたのは、ごくシンプルな問い。
出来るか出来ないか、ではない。
出来ることは既に”知っている”
けれど、今は手勢の薄いことも分かってる。
足りぬというならば、それは光の天使の責ではあるまい。]
あの……男……
生命の、力を……!
[天の響きを紡ぐ余裕はない。
ただ、間近に見た相手の切り札への脅威が漏れ聞こえる]
足り、ません……。
[上官の声に、苦痛に耐えながらも答えが返る]
私に、ではなく。
奇蹟を邪魔立てする者を、払うために……!
[己ではなく、箱舟に取りつかんとする不届き者に対する力をと。
懇願に近い声音で訴えるが、それは大天使にどう伝わっただろうか*]
アデル、アディリエル、
持ちこたえよ。
すぐにそちらへと行く。
だからそれまで、
[苦しげに響く声に、常になく大天使の声色も変わった。
このままでは、光の天使は、
自らを天に捧げてしまうのではあるまいか。
そんな予感が、大天使の翼を急がせる。]
[目の前の男に意識の大半を向けつつ、けれど、零れ聞こえる天上の響きは僅かに気を逸らせる。
しかし、ここで急いて仕損じる訳にはいかぬ、と。
そんな思いもあるから、今は何も声には乗せずに。*]
ナタリエルさま、……大丈夫です。
[声色を変えた大天使に答える声は、どこか柔らかな、そして宥めるような雰囲気を伴っていた]
私のために、手を煩わせなくてもいい。
……そのお力は、大いなる救いのためだけに。
[その声が己の名を呼ぶのが、たまらなく嬉しく、そして哀しかった。
自分という存在は、何かを為したのではなく為さなかったがために、彼の者を動かしたのかと。
ふとそんな思いを抱いたのだ*]
───── 戯けたことを!
[どこか宥めるような、
止めるような声に返ったのは短い一喝だった。
ぴしりとした声が、白き翼の天使を打つ。]
そなたは我が翼、我が腕ぞ。
その為に力を振るわんとして、何とする。
…アデル、アディリエル。名を与えし光の子よ。
お前もまた、我の愛しき子のうちなれば。
[諫めるように激しい口調は、やがて穏やかなものとなる。
彼の裡に動いた心は知らず、語りかけるは我が裡のこと。]
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