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[グランツェルツ橋で敵と遭遇したと、ベネディクトから報告が届く。]
橋で押さえるべく手を打ってきたのか。
確かに、水の上に布陣できるポイントでもある。
敵にも地の利を使いこなす軍師がいるようだね。
ローランドから、エディが魔軍に属しているとは聞いていたんだ。
「彼の意思で魔軍に居る」って。
事情はわからない。
彼は信用されているのかな、
それとも、試されているのかな…
いずれにせよ、生半可な気持ちでそこに立っているはずがない。
説得はもとより、詰問も無用だ。
大勢の見守る中で、彼が言説を曲げるはずもないのは明白。
何を言われても、ここは受け止めるしかない。
[声は届くけれど、すぐに駆けつけられない距離。
半身とも頼む相棒に委ねる。]
思うところはいろいろあるだろうけど、
気を抜かずに、損害に注意しつつ、敵の陣容をおまえの目で確認してほしい。
難しいことをお願いしているけど、おまえだから な。
こちらも魔軍の襲撃を受けたけれど、レトも救援に来てくれて、撃退することができた。
ローランドがダークエルフの将を討ち取ったんだ。
ダークエルフは毒矢を使ってきた。
姿を見かけたら気をつけるんだぞ。
クレス。
[声が彼に届いたのは、果たしてどのタイミングだったろうか。]
ファットリアのあたりにドラゴンが出た。
連中は、いよいよ本格的にドラゴンを動かすらしい。
[声は、どこか弾んでさえいる。]
[それは恐らく、カトワールでの戦から、暫くしてから]
……ああ、ようやく、奴らもあれを出してきましたか。
「全軍」……なるほど、必殺必勝の覚悟で臨むと。
承知しました。
[その言葉は静かに涼しげに聞こえるだろうが、いつもより、一本芯を感じられる言い方でもあった。
そしてそれは。
クレステッドが激情を静かに抑えている時の癖でも、ある]
―いつかの回想―
[数千年前。
クレステッドが最初に魔軍に加入し、まだ日が浅い頃。
まだ「儀式の間」で自身の、そして魔王のための研究をする余裕があった頃。
ギィはクレステッドのことを、熱心だなと軽く評した。
その口調はどのような色を帯びていたかは解らないが]
……我が主の、我が軍のためですから。
それに、私のためでもあります。
[現在から比べると、余裕のない言い方ではあるものの、どこか涼しげに応える彼は今と同じもの。
そんな折、ギィはクレステッドに問うた。クレステッド自身の目的は何なのか、と。
その質問にどんな意味があったのかは、クレステッドの知る由もないが。
その問いには、ゆっくりとした口調で答えた]
私はただ、見返したいに過ぎません。私を否定した連中、全てを。
[彼の声は普段より静かなものでありつつも、確かな輪郭と芯を感じさせる声音で。
つまりこれは、無自覚のうちに、彼の感情が荒いうねりを上げている時の合図なのであった]
ベネディクト、
おまえの陽動で、魔軍は、次の我々の攻略目標はカトワールに違いないと守りを固めるかな。
撤退後は、河口のあたりで待機していられるか?
俺はおまえが残してくれた部隊を率いて、北岸沿いに進むつもりだ。
河口のあたりで合流できれば──船で川を渡って、そのままジルヴァーナへ攻め上るルートもとれる。
……すまない、カレル。失策した。
エディの罠に嵌まり、船団の半数近くを消失してしまったよ。
[申し訳無さそうに。]
僕は生き残った船団と合流して河口付近にいる。
このままここで待機しているよ。
[妙に気落ちした気配のベネディクトの声が伝わってきた。
ああ、エディと本気でやりあったんだなあと思う。
船団半壊。
魔法の戦いになったのなら、想定されうる結果だ。]
壊れた船には固執しなくていい。
臨機応変に安全を確保して。
ちゃんと自分の手当もするんだぞ。
なるべく早くそちらへ向かう。
待機の間は、河口付近で、可能なら南へ逃げてくる人の渡し船をしてくれるとありがたい。
偵察を出して、魔軍の動きも知らせてもらえるか。
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