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[ 閑話休題。]
練習ならつきあうぞ。
[ 青銅の横笛を指先で器用に回しながら申し出る。
自分の奏でる音でベリアンが舞うのは、心浮き立つものだ。*]
─ 過去 ─
まぁ、俺は良く目立つからな。
たまには更に人目を集めるも一興だろう。
[>>=8ギィの言葉に笑い返す言葉に含む意は、己の立場を自覚したもの。
好奇の視線は慣れたもの、こちらが応じれば面白がらせるだけだと無視していたからその中に侮蔑以外の色があることなど気付きもしなかったけれど。
>>=9揶揄してきた者達が軒並み顔を歪めている様を見れば、傍らの友が報復したのだろうとは流石に気付けた。
それに対して問うたとして、この友のことだ。
はぐらかされるだけだろうと、明確な礼や制止など言わないのはいつものことだけど]
そうだな。
無味な練習より、お前の音がある方が華やぐというものだし。
何よりお前の笛の音は、剣の奏でる音に合う。
[>>=10友からの申し出に、素直に応じることもまた、いつもの事だった*]
─ 過去 ─ =12
君にそう言われる以上に、自分を喜ばせてくれる賛辞は思いつかないな。
[ ベリアンと並んで歩きながら、柔和に微笑む。]
いつか君と対になって舞いたいものだ。
[ 背中あわせで、相手の動きを見なくても、ぴたりと息のあった旋舞ができることを確信している。
その手にあるのが武器であろうと、花であろうと、たとえ世界を敵に回して舞うのだとしても、
二人は何ものにも乱されることなく、全うするであろう。*]
現在、半島の東側を北上中だ。
ゼファーの船が1隻、ついてきている。
追われているんじゃない、誘い出した。
おそらく、銀髪の将軍が乗っているはず。
できるだけ、拠点から引き離しておこうと思っている。
君に、欲をかくなと忠告されていたのは覚えているよ。
これはまだ、許容範囲内だろう?
― 過去 ―
賛辞ではないぞ、ただの事実だ。
[喜ぶ言葉に、内心安上がりなやつだなと思いはするが、声にはしない。
友の奏でる楽の音が美しいのは事実だし、己が好むのもまた事実だ。
出会いの場で歌われたあの時も、冷静であったならきっと聞き惚れていたことだろう。
あの激昂は、今はもうギィに向くことはない]
お前と舞うか。
…楽しいだろうな。
[こんな言葉が出る程に、近しく思っているのだから*]
おい。
[聞こえてきたコエに、じとりと目が据わる。]
さっき、俺に偉そうなことを言ったのはどこの誰だ?
[無茶無謀は俺の専売だろう、とは言わなかったが。]
[マチスと拠点の防衛について意見を交わす中。
届いた声に、微か眉をしかめたのは許される所業と信じたい。
表に溜め息を吐き出さなかっただけ上々だ]
…既に成り立っている状況に、口を挟む愚はしないと分かってて言ってるだろう。
良い。
本分を忘れぬ程度の逢い引きで収めてくれるならな。
戻らないような間抜けはしない、とは言ったが、行かないとは言ってないぞ。
[ 据わった目が見えるようなコエに、堂々と屁理屈を並べて返したところで、敵船からの申し出が届く。>>115 ]
神前試合を望む、だそうだ。
そういえば、あの王弟殿は女神の寵童だかなにかだったか?
― 過去 ―
[ 嬉しくならないわけがあろうか。
ギデオンにとって、ベリアンは目覚めを導いた者、
世界でただひとり、魂が共鳴する相手だ。
ベリアンを通じて世界を知り、自分の中に取り込んでゆく。
どれほど知識と経験を増やしても、ベリアンに対しては無防備でいた。*]
お前な、
[だからといってノコノコ行くやつがあるか!と思ったが、それをコエに出すより先に神前試合の話がくる。]
……確かそうだったな。
あの顔なら女神にもモテるだろう。
酒席の侍童にするにはとうが立っているが。
しかし神前試合とは、…なかなかに不穏だな。
=16
[ 時を経て、一周回った懐きっぷりは堂に入ったもの。]
認めてくれて感謝するよ。
参謀などという肩書は、いつでも取り替えられるけれど、
君の本性のさらけ出し先という役得は、誰にも譲らないとも。
[ 本分とは。]
[ そんな応酬の後、乗る笑みのいろは、いくらか強くなる。]
そろそろ、我々も攻勢に出ていくべきだ。
よく守ってくれた。
──風を吹かせるぞ、ベリアン。
[ ベリアンが動き出していることを、予期しているかのように、告げた。*]
不穏でも何でも、挑まれて逃げるというわけにもいかないだろう。
こちらが勝ったら、半島から手を引けと言ったら聞くだろうかな?
[ まず、それは無いだろうと思いながら軽口めいた言葉を吐いたあと ]
カナン、俺は誓いを違える気はない。
女神の前に膝をつくつもりも、な。
[ 殊更静かに、そう告げた。 ]
それで手を引くなら、俺はお前の背を蹴飛ばすがな。
[蹴り飛ばしてでも戦わせると軽口に応じ]
当然だ。
お前は俺の唯一なんだからな。
[ふふん、と胸を張る調子で答えた。]
お前以外に見せる気も無い。
[>>=18感謝の言葉に返したのは、短い言の葉。
それを本分というのはどうかなんてツッコミは、今更だ]
[こんな時であっても余裕の乗った応酬は、ある意味落ち着きを取り戻すもの。
続いて告げられた>>=19それに、微かな瞬きを見せたのは一度きり]
分かった。
[こちらもまた、短い声で応じ答えた**]
もしそうなら、お前に蹴られるまでもなく、突っ込んでいく、が、
[ ふと、コエが途切れたのは、王国軍からまた返答が>>129届けられたからだ。 ]
あちらも似たようなことは考えたかな?
[ 冗談めいて、とはいえ、最初にそれが浮かんだのだったら...と、巡る思考は、カナンの続けた言葉の効果で停止する。 ]
.........俺にとっても、お前は唯一無二の好敵手だ。
だから、それ以上は怪我を増やすな。
[ 微妙に間を空けた、答え。そして同時に、苦言を送る。
すでに怪我を負っている事は聞かずとも確定している口ぶりだった。* ]
[向こうも同じ考えだったのならば、効率的で良いな、とは思う。
ただその場合は、己が出るべきだろう。相手が、おそらくは臨時とはいえ総司令なのだから。
だからこそ相手の、我が唯一無二への関心を警戒するのだが。]
───っ。
お前、時々妙に勘がいいな。
[負傷を言い当てられて思わずの言葉は、自白したも同然だった。*]
― 過去 ―
[幼い時分、年嵩の者らに絡まれているのをリトスに見られたことがある。
普段なら相手の年も人数も関係なく乱闘になっているものだが、この時は地面にうずくまって背を丸めたまま、黙って暴力に耐えていた。
暴虐が去った後もしばらくは無言が続き、重い口がようやく開いたのは、リトスの他に誰もいないと確信してからだった。]
あいつらに、これを見られそうになったから。
[むくれた顔のまま、握っていた手を開く。
そこには、見事な金細工の護符があった。
連中に見つかれば取り上げられるのは当然として、それを理由に更なる事態を招いただろう。]
親父の、……形見だ。
[ぼそぼそと落ちる呟きは、告白に似る。]
親父が、作ったらしい。俺の、ためにと。
[時々息が零れるのは、痛みをこらえるためではない。]
親父は、本当は、細工師になりたかったんだと。
[これまで胸に押し込めていたものを吐き出すことへの、ためらいのようなものだ。]
俺は───戦士になるのに文句はない。
けど、思うんだ。
こんなにすごいものを作れる親父が、
臆病だからってだけで馬鹿にされて、
追い出されて野垂れ死ぬようなこんな国、
……俺が、 変えてやるんだって …!
[血を吐くように声を振り絞る。
何も持たない孤児の、それが意地の根源だった。*]
やっぱりか。
[ カナンの反応は男の予測の正しさを裏付けるもの。 ]
俺とお前は心臓が繋がっているからな、お前が怪我すれば俺にも分かる......なら便利だが。
[ 現実には「全ての怪我が」分かるというわけではない... ]
命の借りがあるから、恨み言を聞いてやる、と言っていただろう?
お前は頭より体で借りを返すタイプだからな、そんなことになるんじゃないかと思っていた。
親父さんの護符の効果にも限界というものはあるだろう。
少しは自重をしろ。
[ 彼にその美しい護符を見せられた時の事は、はっきりと覚えている。
世の中に、これほど繊細で美しい造形があったのか?と、細工物などとは一切無縁だった男の胸を打つほどの細工。
それが、カナンの父の手によるものだと知って二度驚いた。 ]
これを守るために、何をされても耐えていたのか。
[ カナンが、文字通り血を吐くように絞り出した言葉、それを胸に刻むように聞きながら、男は、カナンの手にした護符に、そっと触れた。 ]
綺麗だな。本当に...
[ ため息のように、そう言ってから、護符と同じ金色の頭を軽く小突いた。 ]
だけど、お前はやっぱり馬鹿だ。
親父さんがお前を守るために作り上げた護符なのに、それを守るためにお前が傷ついたんじゃ、意味ないだろう。
[ カナンはむくれたままだったか、構わずその手を引いて、剣帯に絡められていた唯一の装飾だった銀の鎖を外して渡した。 ]
色合いが合わないけど、これを繋いで首にでもかけて服の内側に隠すといい。
交代で水浴びする時には俺が預かってやる。
言っとくが、お前に同情してるわけじゃないからな。
お前の親父さんの腕に敬意を払うためだ。
こんな凄い職人がゼファーに、もっと居たら、きっと交易で国を富ませることだって出来るんだ。
お前も元首になるなら、そこまでの方策を考えろ。
[ 淡々と、そう告げてから、踵を返す。 ]
ちゃんと、傷の手当はしろよ、明日の訓練をサボったら、今度は俺がぶっ飛ばしに行くぞ。
[ 言い捨てて駆け去った先は、カナンを痛めつけていた連中のところで ]
貴様らの卑怯な振る舞いには、虫酸が走る。その性根叩き直してやるから、俺と勝負しろ!
[ 怒りのままに、言葉と拳を叩きつけ、結局、自身も傷だらけの打ち身だらけになったのだが、それがカナンと同じ痛みだと思えば、苦しさより胸に湧く熱が勝ったのを、覚えている。** ]
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