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[ふつりと湧いた怒りが収まることはなく、煮え滾るものを胸の内に溜めながら腹心の冷静な声を聞く。
怒りに霞んだ頭では、絶対なる主君という言葉さえ空虚なものに響いたが、そこから続く言葉と声のいろに、心が揺れた。]
…………おまえは、いつもそうだ。
[深い呼吸を二つするほどの間を置いて、淡とした声を零す。]
俺の先回りをして、俺の分まで骨を折って、
全部終わってから、涼しい顔で言ってくる。
俺は、おまえの背に負われて勝ちたいわけではない。
[言葉の内容ほどには、声に咎める色はない。]
おまえはいつも言葉が遅いんだ。
俺とて、馬鹿ではないぞ。
作戦というなら、理解もする。
……あまり、俺を怒らせるな。
[それはどこか、心配させるなという響きにも似ていた。]
おまえの処分は保留とする。
勝って失地を回復しろ。
方法は、すべて任す。
[支配者としての冷徹な声に戻して告げる。]
俺の支配は力に基づくものだ。
負けたとなれば、今は服従している連中が勢いづく。
次は勝てよ。
[そう締めくくって、残りの報告を聞いた。]
……申し訳ありません。出すぎた真似をしていること、承知しております。
……しかしギィ様。お言葉ですが。
私の背は、ギィ様を背負えるほど大きくも強くもありません。
私は只、ギィ様の進む道の露払いをしたいだけなのです。
[主から零れる言葉>>*8に淡々と返すさまは、果たしてどう伝わるのか。
ギィが自分の事に集中できるよう、ということらしいが。
とは言え、その考えそのものを「背負われて」と言われれば、回答に詰まるのだろう。
しかし、それもまたクレステッドの本心ではあるらしかった]
……不器用ゆえ確約は出来ませんが。
ギィ様を怒らせるなとのご命令、確かに聞き受けました。
[言葉に滲んだ微妙な色>>*9を察しつつ、それでもなお堅苦しい返し方しか出来ないこの男。
自分で不器用と称するだけのことは、確かにあるらしかったが]
[主らしき、冷徹な命令>>*10に対しては、こちらもまた真剣に。]
承知しました。
最後には、必ずや我が軍の完全勝利を献上してみせましょう。
[そうして、支配に関する主の論を聞けば]
はい、解っております。
最後には、誰の目から見ても、あえて我々は戦略的に退いたのだと。
我々は反逆者よりも圧倒的に強いのだと、羽虫や雑草に至るまで全てのものに思い知らせます。……ご期待を。
[力強くそう返す。
そしてギィが促せば、現在の戦況を詳細に報告した。>>*2 >>*3]
そうか、とにかく君が無事でよかったよ。
[声には出さないが、心の底から安堵する。]
今回の作戦成功にはレト殿の働きが大きかったと思う。
合流したら労いの言葉でも掛けてやるといいさ。
それじゃあ、またハールトでな。
っと、ドラゴンの像だな。
分かった、こちらで準備をしておく。
[建材であれば十分な量が至る所にあるだろう。]
……今後の策、か。
そもそも、自分より大きい軍に当たる際の基本は各個撃破だ。
例えば、我らの五倍の敵と一度に戦えば負けるのは自明の理。
しかし、我らの半分の敵と十度に分けて戦うのなら勝ち目はある。
[もっとも、これはあくまで消耗や士気を度外視した理論。]
勿論、今の我々にそんな余裕はないだろうが……。
少しでも勝機を見出すためには、何らかの方法で敵を分断しておきたいと考えている。
[具体的な方法は、考えている最中だけれど。]
それと、君の言う通り指揮を乱すというのは良い作戦だと思う。
末端の兵が動揺している間に、相手の指揮官や隊長を打ち取れると、なお良いな。
それと、可能なら地の利も活かしたいところだ。
僕はこの辺りの地理に詳しくないが、活かせるものは活かしたい。
今のところは、こんな感じかな。
レトも無事か、嬉しい。
うん、直接会って声をかけられるのを楽しみにしているよ。
[顔は見えないけれど、ベネディクトの安堵の気持ちが伝わる。
その共鳴は、民を目の前で失った心の痛手をいくらかでも癒してくれた。]
[今後の策を問えば、ベネディクトからは的確な仕分けを連想させる方針が返ってきた。
それをカレルなりに噛み砕いて考える。]
「各個撃破」に「敵の分断」か。
うん、それができたらいい。
んんと、
おまえが船団を率いて、カトワールに向かってしまうのはどうだろう?
ハールトの外で魔軍と対峙することになるなら、今、ハールトにある船団は暇になるよね。
移動する船団を見て我々の次の攻撃目標がカトワールだと思えば、魔軍はそちらにも兵をわけるんじゃないか?
実際、先にカトワールへ回り込んで、おまえ得意の交渉手管で、カトワールの船も手に入れてしまえたらすごい。
ああ、ハールトには模造ドラゴンを残し、敵の裏をかいてレトの兵も船に乗って、実際にカトワール攻略に向かうのもありかな。
カトワールの魔物がどれだけいるかわからないけど、それなら寡兵をつくことができるかもしれない。
なるほど、陽動作戦か。
それじゃあ、君とレトは本隊を率いて西進。
敵を撃破しつつカトワール方面へ向かう。
僕は陽動部隊の船団を率いて先にカトワールを攻撃する…
…というのはどうだろう。
とはいえ、カトワールは相手方にしても重要拠点。
おそらく結構な数の兵士がいるだろうから、陽動部隊だけで落とすのは難しいだろうな。
[現状は、ハールト近辺で姿を隠し奇襲の準備をしつつ、情報の収集に徹している。
そのためもあって、ギィの“声”は、必要以上によく聞こえてしまう。]
……お呼びですか、ギィ様。
[応えるべき言葉ではなさそうではあったとしても。>>*13
聞こえてしまう限りは答えてしまうのはもはや習性であって。]
……賊将の捕縛、ですか。
承知しました。……恐らく、接近戦闘に持ち込めればその目もあるでしょう。
首尾よく捕縛したならば、
[と、主からの新しい任務>>*14を脳に刻み込んだ]
他に問題があるとすれば、敵の本隊――魔王本人が出張ってきた際に、逆に此方が各個撃破される危険性があること。
船団がカトワールを攻める時には、洋上ではなく江上からの攻撃になる分、こちらの被害が増大するであろうこと。
……これくらいか。
[それを加味すれば、船団の方は攻撃しながらも防御を意識して、陽動に徹するべきかもしれない、などと頭のなかに。]
ああ、それと現在製作中のドラゴン像だが、台車の上に作ればハールトから持ち出せるかもしれないぞ。
動いているように見えるから、リアリティも増すかもな?
……正直、今後の施策については僕もまだ詰め切れていない部分がある。
まあ、僕は出来るのはあくまで助言。
結局は、君の最終的な判断に従うまでだ。
[君の判断の中で、最大の結果を残すのが僕の役目だから。]
レトは残して行くんだね。了解。
ちょっと船足が遅くなるかもだけど、カトワール攻撃が本命で兵員をたくさん乗せてると見せかけるために、船にはバラストを積んで喫水を深くしていく?
ハールトで投石機を鹵獲するか船上で組みたてできれば、バラストにした岩を弾として使えるかも。
レトの部隊と合流しても、魔軍と正面から当たるにはやはり兵数が少ないから、こちらの西進は、魔軍が兵をわけるなりしてからになりそうだ。
模造ドラゴンは有効活用させてもらうね。
うわ、可動式にしてくれたの! すごくいい!
確かにこちらが兵をわけることで各個撃破はあるかも──
カトワールを落とすのが無理と思ったら、逃げて。
おまえの才は計算に裏打ちされた冷静さにあるから、俺に引き際の講釈なんかされたくないと思ってるかもだけど。 はは。
すぐにカトワールへ出発してもらうことになると、入れ違いになって会えないかも。
休む間もなく転戦で申し訳ないけど──
いける?
[武の人ではない相棒を思いやりながらも、期待し励ます声を送った。]
レト殿の武勇は、野戦でこそ最大限の力を発揮できるだろうからな。
[それに、腕の立つ者は出来るだけカレルの側にいて欲しい。]
あくまで陽動だから兵数は少なめで行く。
ただ、大船団に見せるために軍船は全て使用するつもりだ。
君の言うとおり、それぞれ岩を積んでね。
[投石機はハールトにあっただろうか。]
もちろん、無理はしないつもりさ。
[一呼吸置いて]
……僕は軍人じゃない。戦場に立つのはさっきが初めてだった。
あの時、指揮を取っていて何度も不思議な高揚感を覚えたんだ。
もしまた、同じような高揚感に包まれた時、冷静さを保っていられるだろうかと不安だったんだけれど――君の言葉を聞いて、なんとかなりそうな気がしてきたよ。
ありがとう、もう僕は大丈夫だ。
準備を整えたら、船団を率いてカトワールに出立する。
君の方こそ体には気をつけて、充分な休息を取るようにな。
ありがとう、 丈夫なのが取り柄さ。
お互い、頑張ろう。
[見えていればブンブンと手を振って見送るようなオーラで、ひとまず通信を終えた。]
ギィ様。急ぎ申し上げます。
ハールトに駐留していた賊軍が、投石船によるカトワール攻撃を目論んでいる模様。
こちらは身を隠していたハールト西部より早馬を送り、カトワールの駐留隊へ、火矢と魔法による迎撃を命じております。
恐らくこの戦、勝負の分かれ目となりましょう。
もし、王城の防衛部隊に余裕があるのならば、カトワールへの援軍を願えませんか。
報告ご苦労。
カトワールを狙ってくるか。
やはり海路を押さえられているのは痛いが、致し方ないな。
いいだろう。足の速い部隊を送る。
後方は気にせずとも構わないぞ。
ありがとうございます、ギィ様。
必ずや。我らに歯向かったことの意味を賊軍に教えてやりましょう。
[そう言って、クレステッドは通信を切った**]
クレス。
カトワールへの援護にウルフライダーとボアチャリオットの隊を出した。
少数だが十分だろう。
指揮はエディに任せてある。
グランツェルツ橋で迎撃せよと命じてあるから、必要に応じておまえも連携して事に当たれ。
エトヴァルトの本格的な初陣だ。
どれだけ手腕を発揮するか、楽しみだな。
エトヴァルトに?
[応答する彼の声には様々な感情が滲む。
喜びと期待と驚き、そして僅かな安堵の色。]
承知しました。戦の采配を振るうのは彼にとって良い経験になりましょう。
ならば、彼の作戦を汲みつつ、私は影となって支えましょう。ご期待を。
カレル、報告だ。
現在、グランツェルツ橋の所で敵の奇襲を受けている。
今は指揮が混乱はしているものの、次第に落ち着くだろう。
作戦自体にはそれほど影響もなさそうだ。
ただ――
[一瞬、言い淀んだけれど。]
――敵の奇襲部隊の指揮官は、エディだった。
直接この目で見た、間違いはない。
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