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― 夜襲前 ―
[ これまで押さえて来た物を放つように激昂したテオドール>>323は、
天幕の外まで漏れそうな声でそう叫ぶと、ふいに力を抜いてソファに身を預けた。 ]
……過去へ戻るのは。
この時間軸で7度目になる。
[ それは6度も失敗したと言う告白に他ならない。
自嘲じみた笑みが浮かんだ。 ]
戻れるのは決まって……今からで言うと3年前になるか、その春嵐の日。
それが……1周目の俺の生まれた日だ。
……だが、やり直せるのもたぶんこれで最後だろう。
俺の体はもう持たない。
ベリアンに、俺を屍鬼化するように言ってあるゆえ、
それが間に合えば、これからも何度でもやり直す事は可能かもしれぬが。
……1周目には、俺はお前には出会わなかった。
2周目。15歳の時、俺は騎士団に居て、お前は年上の悲しげな眼をした女性だった。
ある日、ふっと居なくなってしまって、探すうちにカスパルやアランとの因縁を聞いた。
俺ならば両方助けるのにと。
そう思ったその時の俺は、まだ青かったのだろう。
3周目。俺はお前が居なくなってしまう前にと急いでプロポーズをした。
20歳だった。
断られた。
何度も口説きに口説いて、最後は泣き落した。
結婚式では、騎士団の皆が祝福してくれた。
お前がアランにシャンパンをぶっかけたのは、実に痛快だったな。
息子も出来た。トーマスと名付けた。
[ テオドールの普段は昏い目が、今だけ懐かしそうに揺れる。
楽しげに大事な思い出を語る。 ]
[ しかし、その続きには少し間が空いた。 ]
5周目、俺は騎士団に居なかった。
魔物をまとめ、人間と戦わせようとしていた。
ことごとく失敗した。何もかもうまくいかなかった。
魔物は騎士団に敗走させられ、俺は怒った魔物どもに追われ、どこにも行き場がないままに、
アニーズの町はずれに蹲っていた。
……そこで、この周ではまた行方不明になっていたお前を見つけた。
その時の俺は38歳だった。
年上になった俺に、お前は優しかった。
俺とお前は再び夫婦になった。
お前との思い出は以上だ。
……まだ聞きたいならばいくらでも話せるが、
それは結局、別の選択肢を生きた別のイングリッドだ。今のお前とは違う。
[ 4周目と6周目を飛ばし、テオドールはそんな風に締めくくった。 ]
……これを聞いて、
お前はどうしたいと思う。
俺は、こんな思い出を持って居てもなお、
部下としてお前を扱える魔王だ。
[ イングリッドを見つめた。 ]
失望したなら出て行け。
今なら追わぬ。**
おつかれさん。
[人の波から視線を戻して、ヤコブへと向け直す。
彼の周囲を囲む人垣に加わらないまま、心だけ向けて]
…良くやったな。
[声よりも良く感情を良く伝える”声”には、
間違いなく静かな喜びの色が乗った]
― 立ち合いの後 ―
ああ。……まあな。
[シェットラントから届いた声に意識を向ける。
声を返したが、息も絶え絶えなのはバレバレだろう。]
は…。おまえにそう言われるなんて、変な気分だ な
でも、悪く な い …
[意識が途絶えるのと同時に、声も途切れた*]
っ、
[目の前で気を失われるより、突如途切れる”声”というのは、
どうもあまり心臓に良いものではないらしい。
途切れた声>>=12に、ハッとなって振り返った。
人に阻まれてやはりヤコブは見えなかったけど、
どうやら単に気を失ったらしきに息を吐いて再び歩き出した]
…ふん、
[妙な気分はこっちだって同じだ。けど、別に悪くない]
ヤコブ、
[気になっているのは]
その鍵の使用期限…あとどれくらいか分かるか?
[砂時計の砂が落ちきるまでの時間]
鍵の?
[聞かれて、自分の手を見る。
腕に絡みつく文様は、鎖のひとつふたつが欠けていた。]
いや。わかんねえ。
これが消えたらしまい、ってのはわかるが、
時間で消えてるのかどうかもわかんねーな。
[1日1つ消えるなら、あと1、2か月かそこらというところだろう。
鎖の数を目算して、むうと唸る。]
…ん、そうか。
ああ…時間で消えるとも限らなかったな。
流石にそこまで詳しく伝承も残ってない、か。
[やれやれと肩を竦める調子で頷いた。
いざとなれば、己を含めた全軍すり潰してでも、
ヤコブは門に向かわせなければならないと考えている。
もっとも、些か不穏にすぎる考えは未だ胸の裡。
最後の手段というやつだ]
厄介だな。
ところでヤコブ、
[そういえば。と思いついた調子で話題を変えた]
今夜の戦い、俺を自由にさせておいてくれないか?
[どうやら親衛隊の配属は変わらない。
ならばヤコブに話を通してしまえば手っ取り早い]
…ちょっと相手方魔術師の様子が見たい。
[身軽に動きたいのだと、朝とは逆のようなことを言った]
[不穏な考えが聞こえなかったのは幸いだろう。
それを聞いたら、今すぐにでも飛び出していきかねない。]
おとぎばなしなら、英雄王は長く戦いましたって言ってるしさ。
そうさっさと終わりになるものでもねーだろ。
わかんねえものは考えてもしかたねえ。
全力でいくだけだ。
[絶対間に合う。間に合わせる。
そんな、妙な自信が声にこもっていた。]
あ?
[唐突に変わった話題に、声が出る。
だが要件を聞くと、あっさり頷いた。]
ああ。構わねえよ。
おまえが必要だってんなら、好きにしてくれ。
[寛容というよりは、よくわからないから分が強い。
同時に、任せても大丈夫だという気持ちがある。]
[ヤコブが行けばやはり追おうとなりかねないわけで、
つまりは戦線ごと崩壊を招きかねない。
こうして戦いの前の危機は回避された。知らぬが仏だ]
長く、なあ…。
年寄りになるまでとかは、やりたくないな。
それまでには頼むから終わらせてくれ。
[考えても仕方ない>>=18とは、確かにその通りだ。
苦笑して返す最後は半ば冗談めいた]
───シュテルン?
[続いて響いたぼやきに、もう一人の名前を呼んだ。
顔が見えずとも、大変にこやかな響きの声が続ける]
ヤコブ?友達を困らせるな。
[笑顔を保ったまま声をかける。
あくまで穏かににこやかに、有無を言わせぬ上から目線。
恵まれた容姿・資質から繰り出す得意技だ]
[わけもなく]
いいから。
あいつの言うことは、聞かなくていいから。
[そーっとそーっと、シュテルンに小声で言うのも
全部筒抜けなのが、悲しいところだった。]
誰が裏切りだ、阿呆。
[騒ぐヤコブは素っ気無く切り捨てて]
シュテルン、頼りにしている。
[もの分かりの良い青年へと頷き返した]
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