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[聖女の血を吸い出してくれと口にしたのは自分だったが。]
“分身”なら… と、
[それでいて、本心ではギィ本人が来てくれることを渇望していたのだ。
ならば、求めていたのは──]
教会の者とさきほどまみえた。
もしや、と思っていたが、アデルもこの城に来ていたんだな。
[乱れそうになる息遣いを隠しながら
求めていた存在の声をきく。]
――…私が魔に堕ちたと知ってもなお、
うれしい、と、会いたい、と言ってくれるのかい?
[拒絶を覚悟していた男の声に揺らぎが生じた。
昔から優しい子だったと思う。
優しさゆえの言葉ならそれに甘えては迷惑をかけるわけにはいかない。
それでも、会いたい、と、触れたいという思いは強まるばかり。]
[幸せか問う声が届く。
この城にも居場所を見いだせぬ男にはそうだとは言えなかった。]
幸せとは思わない。
不幸だとも思ってはいないが――…
私にとっての幸せは――、
教会でアデルと過ごした日々だよ。
[慎ましくも穏やかに流れた時間は確かに幸せと思えた。
その頃を思い出して、声音は柔く落ちる。]
会いたい…
今すぐにでも、会いたい…
[彼の住処を荒らし、仲間をこの手で葬りに来た自分が言える言葉ではなかったけど。]
兄さん…――
[それでもジークは、唯一無二の存在だった。
例え彼が人を捨て、魔に落ちてしまったとしても――]
だけど、今はダメ…
とても好戦的な人がいるから、兄さんは安全な所へ逃げてて…――
[完全に目的から外れた、矛盾した行為。
それでも、どうしても彼とは戦いたくなかった。]
[サイキカル家は元々戦場で武功を立てた一門であった。
それが何時しか魔物討伐へ特化したのは、人を殺めるよりも、
魔を打ち滅ぼす術に秀でていたからだ。
人の世に生き、魔物を屠る術を磨く高貴なる義務を持つ一族。
己が次男として生まれた時から、我が道は決まっていた。
兄は嫁を迎えて血を練り、弟の己は使徒の開発に献じられる。
それが当然であり、貴族の義務であると認識していた。]
――嗚呼、嬉しいよ。
アデルがそう思ってくれるなら近いうち逢えるだろう。
生きていれば、きっと、また逢える。
だからその時が来るまで
君は無事でいてくれ、――…アデル。
[神に祈りが届かずともアデルの無事をただ願う。]
[好戦的な者と聞けばはたと瞬く。
先ほど対峙した修道騎士の近くにアデルは居なかった。
ならば他にも好戦的と言われるような者が居るのだろう。]
――忠告は受け取っておくよ。
君はやはり、優しいままだな。
[彼の心遣いに癒されるような心地でぽつと声を返した。]
[この城で、彼女と出逢えば、
口を開くより先に互いの立場を理解するだろう。
魔物に口上述べて敵対する声を、蝶は拾うだろうか。
魔物殺しの血を持つ男は、
重責を背負い、彼女を気安く誘って見せた面影が遠い。]
―水浴室へ行く前―
いつか、必ず会える…
きっとだよ…?
[優しいのは、こんな時でも気遣ってくれるジークムントの方だと思った。]
兄さんも、それまで無事でいてね…――
きっとだよ…?
[それだけを告げて、走り出したか。**]
馬鹿だな、ヴァンスは。
[揶揄する調子を声に載せる。]
私が欲しいのだろう?
最初から素直に言えばいいのに。
[確信。]
―――…。
[礼を言われれば、吐息を零す。]
おまえにそう言われるだけで、
どれほどのことであろうと耐えられるよ。
私の ―――
きっと。
――約束しよう。
大丈夫、大丈夫だから。
[いつかのようにあやす響きを滲ませて
自身と彼の不安を拭おうと穏やかに囁く。]
[――だから二度目を、期待はしなかった筈なのに。
まして一度は月下に潜めた姿を、戦火に照らし出されるくらいなら]
――…“自信過剰”なんて。…よく、言えたわね。
[愚かしいと知る願いを、自ら抱え込む訳がない。
今この時まで、そう信じていた。
火種を男に植えつけたのは、己への過信と驕り]
[眼となる任だけ与えた筈の蝶は、城主に名乗りを上げる、毅然と張った声さえ拾う。
すぐ傍で紡がれる男の声に、一心に耳を澄ませていた自分のように]
……、まるで別人じゃないの。
自信家なのは、向こうも相変わらずのようだけど。
[城主を前に、怯む気配は些かもなく。
また少し燠火を煽られる心地がして、微かに笑った*]
[幼馴染の得意とする技に男の心は乱れる。]
――リエ、お前は何処に…。
[頼むからこの場にいないでくれ。
勘違いであってくれ、と。]
[崩落の刹那、己は確かに蝶を見た。
それが魔物の一だとは何故か思わなかった。
綺麗だ、と胸に留めたのは、純水と鮮血の飛び交う中を、
悠々と蝶が泳いでいたから。
その閃く様は、果たせなかった約束を己に突きつけているようだった。*]
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