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[ どう見ても、あちらも戦場の只中であろうというタイミングで、飛んできたコエに、思わず苦笑が浮かぶ ]
ああ。覚えているとも。
[ けれど返すコエに動揺はなく。 ]
お前が、どれほど馬鹿なのか、あれ程思い知った時はないからな。
[ 実際に、戻ってきたカナンにもそう告げた。
自分の顔など自分では見えていなかったが、怒りながら泣くなと、怒らせた当人に指摘され ]
『泣いてなどいない!!』
[ と、ぶち切れて、殴りかかったのは...若気の至りと思いたいところだ。
実の所、今も同じことが起これば、どうなるかは自信がないが。 ]
...今度は俺が、遭難するかもしれんがな。
[ ふい、と、落としたコエは、弱音ではない、どこか悪戯めいた響きを含む。 ]
そう言うな。
ちゃんと負けずに帰ってきただろ。
[俺以外に負けるな、との無茶振りは、いつも心の底にある。
嵐にも海にも負けずに帰った俺えらい。と主張したのだ。
怒りながら泣いていると事実を指摘したら殴りかかられて、そのあとはうやむやになったものだが。]
ん?
なんだって?
[落ちてきたコエを聞きとがめて返す。]
お前、ひょっとして今船か?
そっちからも来たか。
まあ、来るよな。
[類推するに、そういうことだろう。]
お前に任せておいた俺の目に狂いはないということだな。
[胸を張った感が伝わるだろう。]
嵐相手に勝ち負けを主張するな。
そういうところが...まあ、お前らしいが。
[ 呆れたコエは、結局最後は吐息に紛れる。 ]
ああ、船の上だ。
来るに決まっている。
お前だってそう思ったから、俺に留守番させたんだろう?
[ 戦の中で交わすコエは、常より更に気安く少年の頃と殆ど変わらぬ口調になる。 ]
どうやら、王国軍の新しい頭がこちらに来ている。
覚えているか?赤毛の王弟殿下...
一筋縄ではいかなさそうだが、彼を落とせばこの戦も長引かずに済む。*
=15
[ 近づくゼファー軍船を見ながら思う。
先ほど、ベリアンは、己は持たざる者だと主張した。
自分とつながるこの"声"は、彼にとって価値のないものなのだろうか。
そんな意地の悪いことを言って、からかってみたくもあるけれど、
「持たぬことこそ、俺の強みだ」と告げる声には、彼の自負が感じられて、何ともベリアンらしいと思った。
おそらくは生育環境に起因する自己評価の低さに拘りつつも、彼は決して後ろ向きではない。]
そんな君が好きでたまらない。
[ つれないところもまたいいのだと、"声"に想いが溢れた。]
さて、ゼファーの軍船が動いた。
見張り程度を残して、係留されているだけなら簡単だったのだが。
一直線にこちらに向かってくる。
ぶつけてくる気かもしれない。とてもゼファーらしい判断だな。
あの船に乗り込んでいるのが誰であれ、真剣で頑な矜恃を抱いているのを感じるよ──あの時の君を思い出す。
懐に入り込まないと進まない話というのは往々にしてあるもの。
──届かせてみせよう。
[ 相手の策に乗る、というのではなく、こちらの力を示すという意味でだ。]
─ 過去 ─ =16
[ あの時。=24
"女神の子"は、なりは年相応でも、いまだ、人間界の礼儀も常識も身につけてはいなかった。
自分がしたいことは、自分を包んでいる波動や旋律を表現することくらいだったから、歌ったのだ。
それに激しい制止を叩きつけられれば、痛みに触れた気がして身を引く。
メランと名乗った少年が涙を零すのを、俯きつつも凝視していたが、やがて、じわりと近づいた。
"声"を発したのが誰であるかは、 正確に把握していた。]
[ 彼の何であるか。
その問いかけに、息を呑む。]
── 翼
[ 予言にも似た"声"を繋ぎながら、黒髪の少年の頬を流れる涙に唇を寄せる。
遠慮とか断りという概念はわからない。
ただ、獣が患部を舐めて傷を治そうとするように、彼を癒そうという行動だった。*]
王弟殿下?
あの目立つ優男か。
確かにあいつがいたのなら、指揮権引き継ぎでもたつくこともないか。
とすると大将自ら出てきたということか?
思った以上に剛毅だな。
[ちょっと見直した、とばかりの鼻息ひとつ。]
― 回想 ―
政敵を、余興のどさくさに紛れて暗殺しようとする野心家だと、王国に喧伝でもしたいのか?
[ そんなものは叔父一人で沢山だ。という本音はコエにも乗せなかったが、恐らく、カナンには伝わっただろう。 ]
― 回想 ―
この猫の顔した虎は、そんな単純な男でもないだろう。
向こうがそう思うならそれで、たいした相手じゃないってことだ。
[しれっと答えたあと、一拍の間が落ちる。]
…それもお前が無事だったおかげだな。
今度、なにか奢る。
[若干の謝罪と安堵の念がコエに漏れた。]
― 回想 ―
彼が虎だというのは同意するが、お前は他国からの評判を少しは気にしろ。
たいした相手でなかろうが、お前が侮られるのは、俺が侮られるのと同じだ。
[ お前と同等に戦えるのは俺だけなのだから、と、続ける前に、落ちる一拍の間......声音を僅かに変え、落とされた言葉に、小さく息を吐いた。 ]
奢るなら肝を冷やしたお前の信奉者達にしろ。俺は、あの程度の事で、お前に借りを作られる程、惰弱じゃない。
[ 殊更に冷めた声を返してから、小さく笑う。 ]
お前が自分を的にと言い出していたら、その場で殴り倒してやったがな。
[ 結局はそういうことだ。と、言葉の裏の想いが、その響きの柔らかさに乗るのは無意識のうち* ]
― 過去 ―
お前はどうしてそう、落ち着きがないんだ。それで先輩面なぞ、良く出来たな?
[ 危険にも一切怯まぬカナンは怪我も多く、いつの間にか、その度に説教めいた言葉を吐きながら応急手当てをするのは男の役目のようになっていた。 ]
お前を倒すのは俺なんだ、くだらん怪我で命を落とされては困る。
[ 付け加える文句は、少々苦しい言い訳に近くなっていたものの、本音であることは間違いない。 ]
[ 苦しくはあるが、楽しくもあった、と、振り返れば思う、その日々が様相を変えたのは、父...バルタ・ザールが戦死し、母が後を追うように亡くなった時だ。
本来であれば、成人までの次期当主の後見となる筈だった母を失い、叔父が当主代理として、その権を握った。 ]
「私がお前の母を毒殺したなどと噂する者もいるが、女を手に掛けるほど恥知らずではない。無論、お前が望むなら、いつでも当主の座は譲ろう」
[ 父母の葬儀の場で、そう告げてきた叔父に、男は「それには及びません」と答えた。 ]
私は未だ若輩で未熟です。いずれ妻を娶り、当主としての責を果たせるようになったと、叔父上が認めてくださる時が来るまで、研鑽に励みます。
[ そう答えなければ、おそらく自分は成人するまで生きられない。
それを判断できてしまうだけの知恵が、男にはあったのだ。 ]
[ その時から、表情を変えることも稀になった男が、顔色を変えたのは、カナンが遭難したと聞いた時、そして、新元首の候補としてカナンと男の名が並べて噂されるようになった頃、叔父からカナンへの激励の酒を渡すようにと言付けられた時だ。 ]
カナン、くれぐれも叔父上には気を許すな。
[ 自分はカナンには疎まれているから、贈答などは渡しても突き返されるのがオチだ、と、毒入りの酒は叔父に返したが、それで諦める相手ではない、と、カナンに改めて注意を促したのも記憶に新しい。 ]
[ わざわざ芝居掛かった毒味を始めたのもその頃だ。いつ叔父に毒殺されるか知れない、と、毒に体を慣らして来たことが、こんな形で役立つとは思わなかったが、それを望外の幸運だと、男が思っているのは確かだった。** ]
ベリアン、
ゼファーの船は、バルタ・ザール将軍が指揮をとっていた。
戦闘中に見失ってしまったが、船と運命を共にした、ということはないと思う。
ロマンには流されない男だろうから。
自分は、引き続き海にいるが、余力があればゼファーの拠点まで攻めたいところだな。
カナン、お前を出し抜き損ねたようだ。
まだ、勝負はついていない、と、思いたい所だが。やはり、あの虎は強いな。
[ 炎揺れる海から、届くコエは、僅かに沈む。弱音ともとれる内容は、この男には珍しいものだったろう。
耐性があるとはいえ、身に回った毒が、いくらか気を弱らせているのかもしれない。 ]
だが、お前を無敵にするつもりはない。
お前が、戻るまでには片付けておくさ。
[ けれど、最後の宣は、常の如く...いや、常より明るい調子で告げられた。
だから必ず戻れ、とは、やはり言葉にしないまま。** ]
[>>=22届いた”声”は、いつもの軽口。
余裕を崩さぬ様は、すぐにも駆けつけぬ場に在る今なんとも心強い。
>>=23耳に届く状況を考えれば楽観などできようもないが]
そうか。
なら、俺が案ずる必要も無いな。
[懐に入られた己自身が証人だとばかり、軽い”声”で応じた]
─ 過去 ─
[今まで人前で発したことのない感情は、もう抑えなどきかなくて。
目の前、顔を合わせたばかりの相手に向ける”声”の違いにも気付かぬまま、ただ感情のままに言葉を投げる。
近付いてくる気配に気付きはしても、退くことは逃げるような気がして、身動ぎせぬままにただ、泣き続けて。
頬にその感触が触れるまで、目の前の相手が何を成そうとしたかも、為したかも知ろうとすらしなかった。
だから]
……なに、したんだ。
[それが何だったか、想像はついていたけれど。
こんなことをされるなど考えてすらいなかったから、疑問を投げた後]
俺は、女じゃないぞ。
[分かり切ったことを告げて、けれどもう涙は流れることなく相手を見据え]
ティノス。
お前は俺の、翼だと言ったな。
だがな、その言葉を俺はまだ受け入れられん。
俺にとってお前は、突然現れただけの得体のしれん奴でしかない。
だから、お前が俺の翼だというのなら。
俺にお前を、理解させろ。
お前も俺を理解ってみせろ。
お前が俺の翼なら、俺はお前の手足だろう。
[年不相応なリアリズムは、目の前の少年を即座に受け入れる事は難しく。
けれど、掲げた条件は受け入れることを前提としたものだという矛盾は無意識の為したもの**]
[ギィの”声”は、いつでもギィの心のままに投げられる。
それは互いの状況の把握など出来ぬ>>=27遠くの地にある時も変わらないのだから、今のように密接な報告を要する状況などは当然で。
けれど、先の報から随分と間が空いていたから何事かあったか、とは思いはしていたのだが]
ザール将軍……例の酒杯の御仁か。
お前のことだから心配は要らないと思っているが…
あまり欲はかくなよ。
ゼファーとて折角取った領地に築いた拠点だ、何も用心していない訳ではなかろうしな。
[己がゼファーに足を運んだ事はなくとも、ギィが見聞きしたものは己の知識ともなるものだ。
彼の国の宴での一件だけでも油断ならぬと分かる相手と対峙したという友に、忠告の言を投げた**]
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