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[部屋へ着いてすぐにクローゼットを開け、その上部へ手を伸ばす。
ガコン、と鈍い音がしてクローゼットの天井部分が外れた。
そこから重みのあるケースを取り出せばジャケットの内ポケットから引っ張りだした鍵を鍵穴へ差し込む。
ケースが開けば中からは無線機が姿を現わした。
それを手に、もう一人来ているはずの「仲間」へ通信を試みる。]
0800、無事、島への上陸は完了。
島内の宿泊所へ到着。
船の乗員には現状変化なし。
こちらは予定通り東の個室『佐野』を確保。
室内には不審物、監視カメラ、盗聴器などがないことは確認済みだ。
…オーバー。
[トランクを開けると底をべりと剥がす。
二重底になったそこには小型の無線機を隠していた。
手早く周囲を確認、配線とダイヤルを合わせると、クロゼットの陰に隠れるように設置。
見た目からは想像もつかぬほど重いそのトランクをお節介な部下がお持ちしますなどと言わないか、それだけが不安であったのだが杞憂に終わった。]
こちら当局 side-B 応答願う。
すまない、遅くなった。
こちらは異常ない、ああ、正体はわかるか?
――…陸軍士官 少尉 ファミルだ
OVER
[自室で通信を発した後、しばらく地図などを眺めている合間に通信があれば]
異常なし、了解。
無事にそちらも到着していたようで何より。
…なるほど、貴方がパートナーだったのか。
俺はオズワルド。
…表向きは雑誌記者をやってる。
よろしく少尉殿。
オーバー。
どうも、表向きの職業があまり良くないようでね。
[目をつけられた事実を知られていたことに苦笑して。やはり彼女は告げ口をしていたか、と思いながら]
ああ、フォローしてくれていたのか。ありがとう。
[力及ばずという謝罪には、会う度に心象を落としている気がするから仕方ない、と告げた。]
コードネームか。
普段使っているやつでいいかな。
OO(ダブルオー)で。
[イニシャルがコードネームとはコードネームの意味があるのかとも思うが、逆にカモフラージュにもなると考えて常に使用していた。]
オーバー。
うん、さすがというか。鼻が利くのだろうね。
いや犬呼ばわりではない。彼女も私にとっては「仲間」に代わりはない。
いや、案外最初に落ちてしまえば、そのギャップとで好転することもあるさ。
[と心証については答えた]
OO(ダブルオー)とは。
奇遇だ。私の局でのCNは「F」と言う。
単純なネーミングだな。
ここではそちらに合わせ「FF(エフエフ)」と名乗ろうか。
一つ、私の話をしていいか。
君にとっては面白くない話かもしれない。
確かに私は当局側の人間だ。
だが軍人としての全てを放棄したかと言えばそれも違うのだ。
上官の盾になる事も、部下を庇う事も必要ならするだろう。
軍から与えられた―すなわち島と民間人の保護―も忘れてはいない。民間人には勿論君も含まれている。
その上で…。例の調査を、行いたいと思っている。
調査結果は勿論、局へ持ち帰るつもりだ。
不振と言うなら君に預けても構わない。
…何か意見はあるか。
OVER
…そうだな。
彼女も軍人の貴方にとっては仲間だろう。
はは、これ以上落とさないようには気をつけるよ。
へえ。F、か。
案外そんなものなのかな、コードネームってやつは。
FFね、了解した。
ああ。
軍人としての仕事は勿論、遂行して貰うに越したことはないと思っている。
普段と同じようにするのも任務では大事なことだしな。
勿論、それだけが理由ではないというのもわかる。
俺も普段のように記者らしく行動するつもりだ。
任務遂行のためもあるが、多少危険なこともするかもしれない。
それに…知っている事実以上に何かがここにはある気がしてね。
だから、FFの意見や行動には異論はないさ。
任務さえこなしてくれるなら、な。
オーバー。
[OOの返答を聞けばあからさまに安堵の声を上げた]
そうか、そう言って貰えれば助かる。ありがとう。
軍に恩義は感じているし、愛国の精神は変わらない。
ただ…。
いや、私の話はここで一先ず終えよう。
OOも色々事情があるのだろう。困った事があれば言ってほしい。
軍から多少気を反らすことはできそうに思う。
もっともバルダザール中尉は、一筋縄ではいかんかもしれないがな…。
そうだ、OO
ローズマリー女史とはコンタクト済か?
彼女は島の血筋と聞いている。
感染症について、何か知っているかもしれないな。
OVER
FFの話も興味はあるからな。
話したくなったらいつでもどうぞ。
[困ったことがあれば、の言葉に]
それは助かる。元より期待はしていたけどな。
…確かに、准尉や二等兵よりあの無愛想な中尉殿はやっかいそうだ。
あまり周りに興味はなさそうだが…当局から渡された資料にもなかったし、な。
ローズマリー…
[その名を聞けば、暫し沈黙する]
ああ、船でいくつか話したよ。
島の者だという祖母の日記も見せて貰った。
内容はありきたりの日記だったが……
なにか、ひっかかるものもあってね。
彼女のことはこちらも注視するつもりだ。
[その理由は任務だからなのか彼女と交わした会話から出た個人的な興味なのかは自分にもよくわからなかった。]
オーバー。
中尉殿は…あれで相当な切れ者、と聞いている。
そう、一見やる気はなさそうだが。
ああ、そうなのだ。
私の記憶では確か別の上官殿が同行する手筈だったのだ
…変な話、この妙な配属に、中尉殿が当局のお仲間かと思ったものだ。
[一瞬考え込んでは]
私の話を?…、そうか、ありがとう。
OOは良い奴なのだな。
そちらも何かあれば、…私で差支えない話であればいつでも聞くよ。
ローズマリー女史とそこまで話していたのか。
彼女については君が対峙するのが適しているようだね。
OVER
別の上官が…?一体、何故。
どうりで彼の同行を当局でも把握していなかったわけか。
多少甘く見ていたかもな…気をつけるとしよう。
はは、俺がいい奴かはわからないが、FFも部下や仲間想いの良い奴だと思うよ。
貴方がパートナーで心強い。
俺もそのうち、自分の話をさせてもらうさ。素性を明かせる相手がいないのも結構つらいからな。
…彼女が俺だけで手に負える相手かは自信はないが、出来る限りのことはしてみるさ。
オーバー。
そういう事なのだ。
何度も上官を確認したが、オリエンテーションにもいなかったし、担当者―ゾフィヤ准尉の事だが―にも連絡がなかったと聞いてね。恐らく直前に何かあったと見えるね。
その件、確認できるようならしておくよ。まあ、はぐらかされるだろうが。
心強いのはこちらの台詞さ。
軍人と言うのは駄目だね。どうにも警戒されてしまうし。
まあこの成りと言葉では仕方ないか。こちらでは多少言葉が崩れるかもしれないが、大目に見て欲しい。パートナー殿。
ローズマリー女史はなかなか手強いか。
私も一度話してみなくてはならないと思っていたところだったのだ。
OVER
確かな答えは軍でも本人でも期待は薄いかもしれないが、頼んだよ。
俺も一度挨拶でもと思いながらも中尉殿とは結局話せていないからな。
何かあるにしても記者にボロを出してくれるようには見えないが、見かけたら俺も探りを入れてみよう。
まあ、FFは俺も警戒はしていたからな。多少は威厳がなければ務まらない仕事だし、仕方ないさ。
俺も表向きの顔よりは余程砕けてるから気にしないでいいよ。
その方が気楽だ。
ああ、一筋縄ではいかないという意味では民間人の中では彼女がトップだろうから、会った際には頑張ってくれ。
オーバー。
そうだな。一応中尉殿は顔見知りだから、上手くいけば、あるいは。
なんだ、君にも警戒されていたか。
ううむ。それはいかんね。みだりに民間人を怖がらせてはならぬ…いや軍人としては喜ぶべきか。
ローズマリー女史が民間人ではトップか。
これは興味深いね。話せる機会があるといいが。
よし、あまり長々と通信していては嗅ぎ付かれるやもしれん。そろそろ終わりにしようか。
毎日何かしらの報告はするつもりだし、情報があれば共有したいと思っている。
そうだ…抗体は打ってあるね?くれぐれも無茶はしないで。ではな。
OUT
ああ。この中では一番彼と近しいのはFFだろうからな。
はは、民間人に警戒される貴方と軍人に警戒される俺、ちょうどいいバランスじゃないか。
[笑いながらそう言って]
まあ、話せてない人はいるからな、彼女以上に手強い相手もいるかもしれないが。
ああ。調査もしないうちから誰かに勘付かれては困るしな。
また明日情報共有をしようか。
…勿論打ってあるさ。
感染したら死しかないからな…。
そちらも気をつけて。
アウト。
― 回想・14年前 ―
[フレデリカは昔から強い子だった。
力が、とか。
そういう意味の強さではなく。
幼少の頃から風邪ひとつひかない、強い子だった。
一族殆どがそんな調子だったから、恐らくは遺伝なのだろう。
フレデリカは、それに疑問を抱いた事など一度も無かった。
ただ。]
ふぇ、ぇぇぇ……
おっかぁ、おっかぁ……、
みるく、うごかね。
あさ、みず……あげようどしたんば、ふどんさ、つめでぐて……っ
[当時飼っていたハムスターの亡骸を両手にしゃくりあげた。
家では中々ペットを飼うことを認めさせてくれなかったけれど、一度だけ強請って、やっと許してくれた、最初で最期のペット。
母親は表情に諦観を浮かべて、しゃがみ込んで諭す様におらに言ったっけ。]
『小動物ん寿命さ短けぇさ仕方ね。
みるくば幸せだてし』
[みるくは家に来てからたったの数週間で天国へと旅立っていたのだ*]
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