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― 回想/個別領域 ―
[どこかぼんやりとした様子の主。
樹上にて微睡んでいたらしい所に話し掛けるのは申し訳なくもあったけれど、今しか出来ないことだからと、言葉を続ける]
[拙い調子で話す言葉を、終わりまで黙って聞いた後。
軽く息を吐き、向けられた問いに小さく頷いて]
今でこそ、ずっと海の中で暮らしていますけれど……。
もっと若い頃に、海の外や陸の世界も、見たことがありました。
空を飛ぶ竜の姿を見て、自分もいつかあそこに行くんだ、なんて思っていて。
でも……わたしの力は陸を壊すし、地に染み込めば植物を侵します。
何より、多くの生き物は、水の中では生きられないと知りました。
[自分にとっては当たり前で、意識することもなかった数々のこと。
陸の上で無邪気に力を揮った時、齎されたのは予期せぬ破壊であった]
だから、海の中にいれば……。
大海の中で幾ら海流が暴れても、表の世界に影響することはない、って。
[思い込みに過ぎないことかもしれない。
けれどそれはずっと、海に沈むことを選んだ蛇竜の心を縛ってきた]
――ここに来れば、何か変わるのかもしれないって思いました。
少なくとも
[そこまでを語って、蛇竜は長く息を吐きだした。
それから、ぽつり、と零したのは]
でも、そんなこと、申し訳なくて口に出来なかった……。
[もう一つ、心を縛っていたもの。
主への後ろめたさだった*]
[扇が変じた羽衣が、ふわりと竜の身を運ぶ。
膝に上がった男の胸に添えた手から伝わるは、鍛え上げた硬い肌。
けれど、もう一方の手、指で触れた唇は男に触れる竜のそれと似た柔さ。
相応、男の身にもこちらの重さ、温もりを伝えながら]
やはり主でも、こちらまでは鍛えられぬものなのじゃな。
[面白いと笑うその顔は、見目相応の少女のような素直さを隠さぬもの。
伸ばした手指へ、重ねられた手には最初、不躾を咎められたかと過ったが]
…ならば、此度の舞台は儂らの独壇場と出来るのぅ。
[月が身を引くならば、残る華が主役に成ると。
そう言って笑む竜のかんばせに乗るは自信に満ちた、けれど確かに恥じらいも含んだそれ。
重なる手はそのままに、視線をふい、と脇に逸らして]
さて、そろそろ降りるとしようかの。
時間もそうじゃが、主も儂もこの身形じゃ。
人目があればあらぬ誤解をさせてしまう所じゃろうて。
[己が纏うは、華霞に煙る雷光のような淡い薄衣。
肌を隠さず最低限の衣しか身につけぬ男の膝に上がる様相は、傍目があれば目を逸らされても不思議ではない。
小娘にでもなったような不思議な心持に、内心一つ、調子が狂うのぅ、と苦笑の溜息を落とした]
[「竜」の偽物。
その言葉に対して頷きを返す。
出自が原因で竜に劣等感を持つ、と言うことはないのだが、憧れに似たものは抱いていた。
ただそれも、ツェーザルの言葉で「竜」の偽物という意識から、個としての自信に転化されていく]
…うん。
ぼくは、ぼくだ。
ありがと、ツェーザル。
[とんでも理論だったとしても、救いとなる言葉]
ツェーザルが、出来損ない?
[俺の方が、と語り始めるツェーザル。
再生せずに鱗が剥げたままの肌が痛々しい。
その場所を労わるように、そっと手を伸ばす]
……そ、なんだ…。
そんなことがあったんだね。
……そっか、だからもう一人、竜の姿が見えたんだ。
今もツェーザルと一緒にいるから。
[もう一人の声も聞こえたことがある。
今もツェーザルの片割れはツェーザルの中で生きている、そんな気がした]
[初めて聞く、ツェーザルの願い。
自分のことで手一杯で、彼の話を聞けずにここまで来た。
その願いが、叶えられていたと知り、メルヒオルは目を円くする]
ぼくが、きみを召喚したから……。
ぼくが起こして、喚んだから。
ツェーザルは自由に飛べたんだ。
そっか……そうなんだぁ。
[ツェーザルの願いを叶えたのは自分。
その事実が心を温める。
ふわふわしたこの感覚が『嬉しい』という感情であるとは、今は気付かぬまま]
……ね、ツェーザル。
このままこっちに残る気、ある?
ぼくは、”ぼく”であることについては自信を持てた、けど。
生きる意味をまだ見つけてない。
一緒に、探して欲しい。
[舞闘会が終わった後も一緒にいて欲しい、と。
目線だけで見上げるようにして願う*]
― 回想/個別領域 ―
[問いかけに返ったのは、頷きによる肯定。
次いで語られるのは、蛇竜の過去。
海のものであるが故の憧憬と、それ故の相容れなさが齎したもの。
それはどこか、懐かしさを感じるもの]
……
人の世界に興味を持って、一人で飛び出して。
……ま、色々あって、自分が異端と思い知る結果になったが。
それで一時期、魔界に引きこもった事もあった、な。
[状況は異なるだろうが、似たような過去を経てきたのであれば、それも呼び合う要因となったか、などという分析は今は置いて]
……確かに、ここは力の集う場所。
故に、滅多な事じゃあ壊れない。
ここでなら己が在り方を、力の方向性を見出せるかも知れない……って思うのは、まあ、ありだろ。
[ひとつ息を吐き、紫苑色を領域の空へと向けて、零すのはこんな言葉]
……ま、何というか。
きみはもしかしなくても、考えすぎる癖がついてないか?
この場所に集う者は、皆それぞれに思う所を持つ。
それは他者があれこれ言って、どうこうできるものじゃない。
で、少なくとも、その理由は、
[ここで一度、言葉を切って]
だから、ま。
……申し訳ないとか、思う必要はない。
まだ望みがないなら、ここでの事を探す契機にすればいい。
案外、何とかなるもんだぜ?
[笑みと共に向けたのは、軽い口調の言の葉、ひとつ。*]
― 回想/個別領域 ―
[迷いと、少しばかりの恥じらいと共に語った過去。
それを受けての召喚主の語りに、蛇竜はゆっくりと瞬く]
ヴィンセント様、も?
[出自に思う所があるとは、先にも聞かされていた。
自分には立ち入れない事と思っていたけれど、それによる行動や惑いにどこか似た部分もあると知って、蛇竜は小さく詰めていた息を吐く。
翼持つ主を、目映く自由な存在としてどこか遠く見ていたことに、密やかな自省の念を持った]
[それから告げられるのは、この場に来た理由――或いは理由がないことへの、肯定。
考えすぎると言われれば赤面するよりないのだけれど、そうして主に受け入れられたことに、何よりの安堵を覚える]
ありがとう、ございます……。
[口にしてしまえば、些細なことだったかもしれない。
しかしここに至るまでの蟠りが解けたことに、目元が海水ではないもので潤んだ]
まだ、迷いながらで、至らない所もありますけど、でも――
[そうして全てをさらけ出した後に口にするのは、今この場において願うこと*]
どうか、最後まで、共に戦わせてください。
[むき出しの肌に這う手を許し、むしろ抱き止めるように背中側に手を回す]
顎や歯は鍛えられても流石にそこを鍛えようと考えてはいなかったな。
[必要ないと思えたことはしてこなかった…なんて考えをしておくのは、今までよりもずっと近い位置でみる雷華に、意識を取られ過ぎないため。
種族が違うから、年齢が違うから、そういう垣根を超えて見せる表情は、見た目不相応に老練とした気配が抜けた、見た目相応なものにみえた。]
…ふむ、確かに。
[見られたら、確かに誤解を受けそうな恰好だ。
自分はこの通りだし、雷華もまた薄衣を身に纏うのみではあり、姿勢を言われれば納得ができるものがあったが]
今気づいたんだがな。雷華
[膝の上から退去しようとする雷華を一度、ぐっと抱き寄せる]
見えたのか。ほんとに?
[ もう一人の竜の姿が、と言われて、竜はぱちりと瞬く。 ]
長い間に、もう俺とあいつは殆ど一つに溶け合ってるんだけどな、時々、あいつの記憶に俺が引っ張られたりもするんだ。
[ 口調が変わるのはそんな時なのだと、それも、先刻思い出したばかりだったが ]
姿まで見えたっていうなら、あいつの記憶以外の魂みたいなものも、ちっとは残ってるのかもしれないな。
なんか、ややこしいけどよ。
[ ぼやくように言いながら、竜の紅い瞳には嬉しげな光が灯る。 ]
俺とあいつは、もともと一つだったから、意志も好みも同じなんだ。
あいつもお前を気に入って、姿を見せたいと思っのかもしれねーな。
雷華の姿は写し身なら、その見た目からして初めてなこと、って、まだまだあるんじゃないか?
[純粋に喋ることなく、一緒にいたとして、見た目でいえば、自分より年下にすら見えるとは思える。
心情まで文字通り年を取っていたら、老婆のような姿ではないだろうか。そのような想像でもあった
そんなことを考えるのは、先ほど覗かせた、誇りをもった自信と不慣れな恥じらいを乗せた表情を見たせい。というのもあるのだろう。]
[だから年下扱いするな。というほど、自分は見た目相応に成熟しているとは思っていない。
ただ、今は、目線を合わせるように、軽く体を起こす。
立っていれば見上げられて、竜の姿であればさほど変わらぬが。人化でこうして視線を同じくして見せて]
色々な初めてをもらえた俺が、雷華を、可愛い。と告げること、間違いはないだろ。
[こんな調子でいるのは初めてだな。と似通った気持ちを内心で呟きながら伝えると、寄せるようにこめていた力を解いた。]
[ やがてメルヒオルの口にした問いと願い。 ]
いいぜ。
[ それに返る答えは、常のようにあっさりと軽い。 ]
俺たちはほんとに似た者同士だ。
竜郷の隅っこしか知らない俺と、生まれて間もないお前…きっと、世界の事も殆ど何も知らねえ。
― 回想/個別領域 ―
ああ、まだ子供と言える頃にな。
[瞬きの後に上がる疑問の声に声すのは首肯。
その時と、その後の葛藤を経て、今ここにいるのだと。
言葉にて語らずとも、その意図は伝わるか]
[告げた言の葉が齎したもの。
目元が潤む様には紫苑色を瞬いたものの]
いや、それはこちらこそ、だ。
[告げられた礼の言葉に静かに返しつつ、ふわ、と樹上から舞い降りて]
迷いながらも至らないも、人の事は全く言えん
きみが共に戦ってくれるのならば、最後の瞬間まで、全力で翔け行こう。
と、いうわけで。
改めて、よろしく、だな……ベルティルデ。
[屈託ない笑みにのせるのは、初めて言の葉なした、蛇竜の名。**]
そうさな。
ここは鍛えたとしても活かし様が無さそうじゃしのぅ。
[主の言葉を受けた竜は、詠うように笑う。
本来不安定な体勢を危なげなく支える手の主が、何を考えているかなど知る由もなく。
けれど流石に現状の危うさ恥ずかしさを自覚すれば、そろそろ離れようと思考は動いた訳だが]
?
どうしたの、じゃ?
[竜の言葉に同意を返したはずの男の手が、離れるでなく逆の動きで己を抱き寄せるのに目を瞠る。
先までも近かった顔はより間近に見上げる形に、触れていた肌はよりその硬さ厚さを教えられて。
気付いたという主が続けたその言葉に、浮かべた表情はきょとりとしたまぁるい眼。
それが緩く、仄かな色づきを広げていく様は間近で見ている男の眼が見逃すはずもないだろう。
一度、二度。
唇を開きかけては閉じるを繰り返した後]
そりゃまぁ、確かに、無いとは言わぬ、言わぬけれどもな。
[我ながら、今の己はらしくなく。
言わぬというよりも言えぬ、としか言えない訳だが]
主ももっと言い様があるというか、その、なんだ。
口説いておるような言い方だと、自分でも思わぬか?
[主の性質を考えれば、これを素で言っているのも有り得るが。
流石にこの状況、この体勢で言って良い事では無いのではないかと告げた後]
― 回想/個別領域 ―
[樹上より舞い降りる姿に、自身もまた小島へと這い上がる。
羽毛竜の血を引く召喚者と、海蛇の竜神。
姿は違えど、ようやく同じ高さを得た気がした]
はい。よろしく、お願いします。
――ヴィンセント様。
[言の葉に乗せられた自身の名に、沁み入るような喜びを感じ。
そしてこちらからも彼の名を呼び、深く頭を下げる]
[そして再び、月の舞台へ赴く時。
蛇竜の瞳から、懼れはもう消えていた**]
……まったく。
主は、儂をどうしたいのじゃ。
[小さく零した言の葉は、老獪な竜には似つかわしくない声音であったろう*]
[戦いの中、他のことを考えるのは、無駄な余裕の表れとして、思考していなかった。
でも今は、二人で戦っている。だからこれは違うのだ。と思うのは言い訳なのかどうかだが]
雷華
[どうしたいのか。それは、一区切りしてからだ。ただ、彼女を輝かせるように、その真名をつぶやく声は、柔らかかった]
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