情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 エピローグ 終了 / 最新
構わんさ。
俺は族長だが、別に王様ぶって過ごしちゃいない。俺たちの中では、茶も飯も大抵年長者が注ぐんだ。
[茶に口を付けて、声音も穏やかに。卓の上に置かれた陶器の蓋を持ち上げ、中から小さな菓子を取り出した。
焦がした砂糖とバターの香り。グラシン紙に包まれたキャラメルを、口の中に放り込む。
舌の温度で溶かしながら、はー…癒されるぅ、呟いて卓の上に行儀悪く突っ伏した。]
この中は自由に歩いていいから、あとで好きなだけ見て回るといい。
扉の付いた部屋がひとつだけあるが、唯の寝室だ。使っていない。
…で?ルートは何か聞きたいことがあるんだったかな?
なんでも答えるぞ。
[片手で頬杖をついて、首を傾げる。
糖分も補給したことだし、骨董品の脳味噌を働かせる準備はそこそこ整っていた。*]
[太刀を手に、駆け始めた魔の帯びし熱。
その熱の一端は、与えし力を介して伝わるもの。
熱さの中に一抹の狂気を潜ませるそれは、太刀振るい舞う姿とも合わせて先に零した言葉──『戦気質は疲れる』の意を伝えるに足るか。
そうして思うままに舞える理由の一端──己が燭と定めし者が容易く手折られはせぬ、との信までは、伝わり切らぬだろうけれど。**]
[郷に入っては郷に従え、という言葉があるように。
そういう文化だと言われてしまえば、従うほかない。
口にした茶は、紅茶に似たもの。
そして、主が手にした菓子も、見覚えのある者で。]
…存外、あちらとこちら、似ているのかもしれませんね。
[やはり文化の発展は同じような軌跡をたどる物か。
あるいは、どちらかが他方から輸入した形であるのか。
それは不明であるが、思ったことを口にすると、再度辺りを見回して。
そこに並ぶものたちも、己が知らぬだけでどこかの国に似たようなものはあったのだろうかと。
己のいた世界へ思いを馳せる。
聞きたいこと…と促されると、視線を主へと戻し、その姿をまじまじと眺める。
それから、問いを、口にした。]
私は、貴方にお会いしたことがありますか。
[これほどの強烈な存在感を放つ相手に出会っていれば、忘れること等なさそうなモノである。
しかし、どこか懐かしげな気がするのは、果たして気の迷いであろうか。]
貴方はまるで…
私の事を古くから知っていたような口ぶりです。
けれど、生身の私に出会える方法が、
他に無かった、などと仰る。
[問を口にし、金色を正面から見つめる。
それに対する、説明を求めるかのように。*]
どうだろうな。
神やら魔やら名乗る連中は御供えモンで腹一杯だったりするのかもしれんが。
俺は彼奴らと違って、肉の器持ちだからな。腹も減るし、血も流れる。
そういう奴らが興した流通は、大なり小なり存在してる。
[青年が口にした感想が、おそらく今手にしている茶や菓子に対してだろうとアタリをつけて。
己の感知し得ぬ何かに想いを馳せているらしい青年を、二つ目の菓子を口に放り込んで黙って眺めていた。
そうしていると、今度は己の上を滑る青銀の視線。彼が口にした疑問は、当然のもので。
男は琥珀を細めてそれを見つめ返す。]
その質問だと、答えはノーだな。
逆は、それこそ何度もある。
[懐かしいものを見るように。けれど恐らくそれは、男に取っては長い永い生の、ほんの一瞬の出来事で。
目の前の青年に取っては、人生における大きな部分を締める、出来事。]
とある
その国はずいぶん穏やかそうに見えたんだが、火の手は内側から上がった。
兵の殆どを乗っ取られる形で、元あった王家は十日と持たずあっさり堕ちた。
[何の話をしているかは、青年こそが重々承知のものだろう。
男は見ていただけだった。
ほんの少しだけ、手のひら一枚分だけ関わりを持った、傍観者。]
お前を初めて見たのは、その戦の最中だ。
俺たち雷華は、生き物の強い闘争心に惹かれる。稀だが、加護を与える事もある。
…俺がそのとき『付いた』のは、お前では無かったが。
[少しだけ、遠くを見るような目で。
誰を、何を思い出していたのかは、男以外に知るすべは無い。]
俺にとっては、たいした事もしてやれなかった"敗け戦"だ。
そんでも、終わった以上は並んだ首の数だけ、手向ける花は要るもんだ。
[戦火の鎮んだ戦場に。
悼む者の無い墓石に。
無数の"再会の約束"を咲かせるために、男は独り練り歩く。
そうして打ち捨てられたような冷たい石の上。彼岸と此岸を繋ぐ緋色の花が揺れる中で、再び彼と出逢ったのだ。]
戦さ場を駆けるお前は美しかった。
手負いになってもそれは変わらなかった。
動く脚を失っても、未だ消えぬ火を押し隠し生きるのを見るのは忍びなかった。
…どう話かけてみても、お前に俺は見えなかったようだが。
[変顔とかも相当やったぞ。まあ見えるほうが稀だからな。
肩を竦めて、茶化すような溜息。けれど、青年はどんな表情をしたとて、男はそれから目を反らすことはしない。]
ルート。ルートヴィヒ。
俺はお前が愛おしいよ。
もう一度、お前が自由に野を駆けるのを見たかったんだ。
[すいと手が伸びて、青年の銀の前髪を掬った。そのまま、指の甲が頬の上を撫で落ちる。
慈しむようなその動きは、彼が拒まなければそのまま何度か繰り返されただろう。*]
[闘舞を開始して間も無く、身の内から熱が湧き出るように溢れてくるのを感じる。
何事かと思ったが、それが与えられた力から滲み出ていると知ると、熱が何から齎されているかを悟った]
(は……これは疲れるわけね)
[じわりと身に染みる蒼月の狂気。
これを伝えぬため、彼は戦神とは異なる一面を常に出しているのだろう。
ナネッテ自身を取り込もうとするそれに、く、と喉奥で笑いを零した。
呑まれるものか、と内と外、両方で戦う決意をしたのは、短い笑いからも伝わろう*]
・・・・・・そりゃ。 ドーモ・・・・
[こいつ変なもんでも食ったか、紺野に頭でも打たれたのか。
そんな事を思いながらそそっ、と視線を逸らす]
[舞の最中、微か届いた笑む気配。
それは、熱に酔う『狂い桜』を震わせる]
…………。
[音を届ける事はない。
ただ、笑う気配は伝わるが]
(……まったく持って……)
[飲まれず、屈せず、意志貫かんとする在り方。
畏れ敬い、ただ従うを選びし者たちとは違う煌きは、魔を惹きつけて止まぬもの。*]
[強い衝撃で意識が飛びそうになる。
そこに滑り込むように染みてくる、蒼月からの熱]
ッ、 こん の …!
[思わず零れた声は蒼月にも届こうが、それは抗う意思を持つもの。
熱の侵攻を利用して意識を保ち、それ以上の侵入を阻んだ]
……っは。
ああ……まったく、まったく。
[知らず、零れ落ちるのは嗤う声]
……楽しゅうて、仕方ない、な……!
[声に乗るのは一際強い狂気と熱。
その響きは、艶やかささえ帯びるもの]
[主の語るのは、己の良く知る物語。
当然だ。
その渦中に、己はいたのだから。]
…あの日、王都は深紅に染まりました。
[咲き乱れる、曼珠沙華で。
思いだし、男はそっと呟く。
戦場とは言え、ただの革命。
舞台となったのは、人々の済む王都の中心部。
にもかかわらず、民衆の一人として巻き込むことなく終わった戦。
流れた血は、最後まで王を裏切ることの無かった僅かな兵士たちのもの。
それと…王自身。]
『お前は、この国を戦火に沈める気か』
[問う王に、当時将軍として戦場に立ち、そして革命を起こした張本人である
『この地へは、断じて踏み込ませません』
[国を想う心は同じであった。
ただ、目指すモノが異なっただけ。
民の幸せとして、願う物が異なっていた。
穏やかな平和か。
邁進する未来か。]
『なれば、見せてみよ』
[お前の創り上げる、未来を。
蒼い目をしたその人は、
振るわれる刃の下、紅に散った彼の人は、最期まで己を飲み込む
[勝利した者には、正義を名乗る権利がある。
同時に、その陰に散った誰かの願いを背負う義務がある。
そう教えたのは、男の
一国の王の願いを喰らい、新たなる皇帝として君臨した男である。
当時の男には、分からなかった。
誰かの志を討ってまで、通す大義があるのか。
しかし、喰らった以上は働かねばならぬ。
そうして世界は回っている。]
[だから、これは罰である。
若き王子の牙を受け、傷を負ったこの体が、思うように動かなくなった時にそう思った。
努力はした。
しかし、どうしても、傷を負う前には戻らない。
しかし、戦場へと赴けなくなったことが、何よりも男を苛む。
この手に刃を握る意味。
自らの手で、切り開く意味。
喪って初めて気づく、それらに、無言の内に歯噛みした。
男自身が喰らった三つの命、それに報いることは、できるのか。
三つの無銘の意志の前で、男は贖罪すらできずに立ち尽くす。]
そう、でしたか。
[己では、泥の中を這いずっているような心持だった数年だった。
それを、この人は美しいと言ってくれる。
それが己にとって、どれほどの救いになるか。
貴方はきっと、気付かない。
けれどせめて、と男は願う。
己に、失ったものを与えてくれたこの人の、その心に報いたい。
失望させたくはない。
期待に応えたい。
…愛され続けたい。
願う言葉は胸の内に。
静かに降り積もる、想いを胸に抱き。
ただ一言、感謝を述べた。*]
[短い礼の言葉に目を細める。
青年のその心中、その表情の意味を全て慮れるほどの感情の機微は、長命すぎる男は持ち得ていない。
けれど分かることもある。
だから、何も言えなかった。]
…俺ばかりがお前に詳しいのも、あれだな、なんか狡いな?
戦に向かう前に、予備知識として少し俺の話をしよう。
[二杯目の茶を継ぎ足しながら、肩肘ついて話題を変える。
それが気遣いなのか素なのかは、傍目に判別し辛いところであったかもしれない。]
最初に言った通り、俺たち《雷華》は、闘争と放浪の民だ。
戦を好み、乱世を歩く。
古くは雷神の血を引くってハナシで、だから大抵みんな"
[そう言って自らの髪をひと掬い指で弾くと、小さな稲妻が空気を裂く。
やや鬱陶し気に掻き上げると、赤灼と金糸の波が流れ落ち、また守るように男を包んだ。]
俺たちの中には、生まれたときから雷華のやつは殆どいない。なりたいやつ、なれるやつに血を分け与えて、仲間に迎える。
だから元の種族も姿もまちまちだし、獣なんかも多い。
その世代の長が、みんなの親父だ。
同じ親父に拾われたやつは、兄弟になる。
[こいつらも兄弟なんだ。
示した先には定位置らしき敷布の上にめいめい臥せるハイイロオオカミの姿。
アイスブルーの双眸はちらりとこちらを一瞥してまた伏せられたが、エメラルドは呼ばれたものかと立ち上がり、尾を揺らして駆け寄ってくる。
ウルはルートがお気に入りだなあ。
男が笑って撫でてやると、狼は嬉しげに男の手をべろりと舐める。
それから、手前に座るルートヴィヒの顔に鼻先を近付けて、すんすんと鳴らした。]
ルート。
口開けて、じっとしてな。
そいつ、お前のこと
[獣が相手の口元や口内を舐めたがるのは、主や仲間に対する挨拶は勿論、親愛や好意を示すことが多い。
甘えているだけの場合もあるが、兎角鼻先を突っ込みたがる。
面倒でも、付き合ってやってくれ。
そんな話をする間に、青年の顔面はべしゃべしゃにされたやもしれないが。
いつの間にか挨拶に加わっていたシヴにもしっかり舐め回されて、ルートヴィヒはどんな塩梅だったやら。
その間ガートルートはと言うと、にやけた表情を引き締める気も無いらしく。一人と二匹を楽しげに眺めながら、またキャラメルを食んでいた。**]
[声と共に増加する蒼月の狂気と熱。
衝撃を受け続けている状態では、ともすれば流されそうになる]
ンァッ…!
[熱を押し留め、狂気を抑えようとするが、無言ではやはり耐え切れなかった]
Shut up…!
[暴れまわらんとする狂気に対し、思わずぽつりと呟く。
膨れ上がるばかりの熱と狂気は、大きな奔流となり始めていた]
[押し止める事なく解き放つ狂気と熱、その最中に響く声。
ただ飲まれまい、と。
抗う意思は、初めて触れるもの。
過去の従華は皆、狂気に飲まれ、それにより強き力を得たものの、制しきれぬ者が続いた。
それ以上狂気に触れては完全に深淵に堕ちかねぬ、と。
それと気づいた魔は選より引き、隷属を解く事で従華が堕ちるを未然に防ぐようになっていた]
……ふ。
[微か、零れるのは笑み。
従華を案ずるあまり、選そのものにも退屈を覚えるようになったのはいつからか。
そんな退屈にも、背後への懸念にも囚われる事なく舞える事。
それは『狂い桜』の内にある、戦神の熱を更に強く高め行く。*]
[身体が外側からも熱さを得る。
内に在る熱がそれに同調し、ナネッテへの侵攻を加速させた]
ッッ、
[熱が広まれば狂気も広まる。
ただ耐えるにも限界が近い。
けれど、ナネッテはまだ諦めていなかった]
──── いい加減にしなさいよ。
[零れた声は低く、身を支配しようとする
……お?
[低く零れた声が、ふと、『狂い桜』を引き戻す]
ああ、すまぬすまぬ。
何分、久々の事なのでな。
制御が飛んでおるようだ。
[笑って言う事じゃないはずだが。
届く気配は楽しげなものを帯びて]
文句は後でまとめて聞く故。
……いまは、眼前に酔わせておくれ。
[楽し気に笑む気配と共に伝えた後。
『狂い桜』が僅かなりとも鎮まる気配は伝わるか。*]
...ハルト
[ 僅か、躊躇うような、間が空いた ]
覚悟は良いな?
[ けれど、届いた声は、常の如く、己の心のままのもの* ]
良いわよ、好きにやんなさい。
…私も好きにやるわ。
[紡いだのは先とは逆の意を乗せたもの。
次いで、何かを思いついたかのような声。
ゆらりと、己が身に流れ込み溜め込んだ熱を、誰かさんの首根っこを掴むように意識で握り込んだ*]
溜めきれないなら吐き出せば良いのよ。
情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 エピローグ 終了 / 最新