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あるがままでいることを憎まれるなんて
[そっと胸の前で左手を握る]
可哀想に
[一歩を踏み込んだ]
― 1 ―
でも、それでいいの……?
骸を晒し、偽りの殉教者として名を記されるか
死地に命を拾い、そして唾棄すべき魔女として彼らに焼かれるか
──人間たちが私を焼いたように!
[青い翼を広げ、十字架ごと包み込むように彼女を抱擁する]
お前の信仰を愛し
お前が老いて死ぬるまで、その祈りを護るのに
[薄い背に左腕を這わせるように身を寄せれば、胸の膨らみが二人の間で撓んだ]
でもそれも、お前が拒むのなら、叶わないのだね
[細く柔らかな首筋に唇を触れさせる。
甘く匂い立つ命露の拍動]
さあ、ここでは言葉は力をもつ
「はい」か「いいえ」を選ぶ自由があるわ
私を……*受け容れてくれる?*
私は……
[紡いだ言葉がまるでふわふわと浮かぶように、思考に再び靄がかかる。まるで二人を包み込むかのように青い翼が広がる。目の前にあるのは――]
わた、しは――
[感覚の無くなりかけた背に、引き寄せるかのように腕が回る。まるで――]
――
[天使のような口付けが、首筋に――]
神は――人々にこのように触れたりなさらない
[そうだ、目の前にいる存在は、まるで天から舞い降りた天使のよう。
――だからこそ、違うのだ]
貴女は――私の救いではない!!
[思考が急激に晴れる。指先が動き、握り締めた拳から血が流れる。歯を食いしばり、出来うる限り身をよじってその唇から逃れようと藻掻いた*]
宴は楽しんでいただけていますか?
貴方の心を歓ばせるものがあれば、嬉しいのですが。
[囁く声は、コウモリを通じて響く。]
ええ、面白いわ
[コウモリの喉を撫でて、ふわふわと微笑んだ]
まだ主菜をどうするか決めかねているのだけど
……私もなにか、槍でも持参すれば良かったかしら
槍持つ貴方は麗々しくありましょう。
ですが、槍などなくとも貴方であれば、
指先ひとつで身を差し出すものもいるでしょう。
私もまた、そのひとりですよ。
[柔らかな笑い声が、コウモリの立てる音と混ざる。]
主菜、といえば。
牢に、なにかを置かれましたか?
あのあたりから、貴方の気配となにか…芳しい香りを感じるのですが。
……初めて血を吸った時の事は覚えているものか?
[手首をとったまま、まだ口をつける事はせずに聞いた。]
あら。貴方の身なら
畏れ多くて……奪ってしまえないわ
[コウモリの被毛は軟らかい。アズリウの羽毛とはまた違う感触を愉しみ、混じり合う柔らかな声にとろりと目を細めた]
牢?
なんだったかな……
ああ、そう
味の良い処女がいたのだけど、振られてしまったの
それで、仕方がないからもう少し醸成させて美酒に仕立てようと思ったのだったかしら
[忘れるところだった、くるると笑う]
でも玉を磨くのに貴方ほどの才はおられない
お気に召しそうだったら、見てあげてくださる?
……初めて血を吸った時?
[双子が憶えているはずはない、それは遠い昔、幼少の頃。
ヒトは乳を吸った赤子の頃、初めて食事をした幼児の時のことを記憶しているだろうか?]
覚えていないな。それがどうかしたのか。
名前は、シルキーという。
[確かに名乗った覚えがないと苦笑した。
強くて衝動を誘う血の匂いを前にしても思考が働くのは、]
…怖いと言っても、通じんだろうな。
[これまで血を口にしてこなかった自分。
変わってしまうのではないかという恐れ、背徳感。]
[白い手首へと顔を寄せる。
逡巡したような間の後、舌先を這わせる。]
… ふ、
[口に広がる血の味に背筋がぞくりとし、身体を小さく震わせた。
うっとりと瞳を閉じ肩で息をすると緋色の線にあまく食むように口付け、ちゅく、と音を鳴らした。]
[生まれついての吸血鬼には、人間生まれの吸血への忌避感は想像が付かず、怪訝な顔になる。
それでも、彼女が餓えるほど長い間悩んできたのとは伝わる。]
……血は我らの糧、悦楽、生きるよすがだ。
恐れる必要は無い。
[何でもないことのように、それでいて励ますように、
……同時にこちら側へ来いと誘惑するように。]
[躊躇うような間ののち、彼女の舌先が傷口に触れる。
瞬間、ぞくりと体を震わせたのが分かった。
吸血鬼の血を受けた者、誰もが味わう恍惚に、彼女も打たれたと確信する。
自然笑みが唇にのぼった。
母の乳房に吸い付く赤子のように、赤い泉に口接ける様を微笑ましく思う。]
……ふふ、 ッん、
[吸血は提供者にも快をもたらす。
じんわりとした悦に浸され、小さく息をついた。]
[むずがゆい感覚に襲われながらも牙をたてることはない。
舌で舐めてあまく吸い上げるだけの行為。
頭上から降ってくる吐息には上目で見上げるがそれはほんの一瞬。
欲求に身を任せて舌を這わせ続けた。]
[腕に感じる熱が徐々に引いていく。
感じた事のない奇妙な感触に吐く息は熱い。]
あ……、
[しばらくして指が動く事を確認すると唾液に濡れた手首から顔を離し、不思議そうに顔の前に手のひらをかざし、くちもとを拭った。]
…すまん。
[項垂れたまま、苦笑混じりに言う。]
…私は、この街の生まれだ。
母が出産間近に吸血鬼に噛まれたらしい。母は私を産んで死んだから母の記憶は無い。
[小さく肩が震えた。]
騎士だった父が私を育ててくれた…けど、牙が目立ち始めた頃から、街の人々から迫害を受けた。私の成長が異常に遅かったのもある。
……父は誇りにしていた騎士をやめて私を連れて街を出た。
[街を出る時に父には何と言っただろう。街の人々の目は怖かったが、友達と離れるのは寂しかった覚えがある。]
しばらく前に父が亡くなって、せめて母の元へと思ってこの街に帰ってきた。今日の事だ。
幼かった私を追放した街だ、そう思ったが……、街を破壊されて、腹がたったんだ。不思議とな。
ただの思い出に残る風景、そう思ってたんだ。
[右手で顔を覆う。]
…腹がたって、やり返してやろうと思った。
それで、ここに来た。
でも、
[項垂れた頭は更に落ちる。
金の髪が揺れた。]
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