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ざわり。
風もないのに揺れた空気に顔を上げる。石で作った釜の下に小枝を放り込む。もくもくと石釜にそれらしく作られた煙突から煙が上がる]
――??
[保存食を少し用意しようとした、のだがつい熱中しすぎて燻製やら蒸留水やら、当初の目的をすっかり忘れていたりとか。首を傾げつつ、続けて小枝を火にくべようとしたら、伸びてきた弦がぺしりと小枝を手から払い落とした]
あっ。
[燻製は火をたかないと完成しないのに。邪魔するように伸びてきた弦を、そばに置いていたサバイバルナイフで切り落とし、そのまま火の中にポイする。落ちた小枝も一緒に。]
[改めて辺りを見回すと、弦だけではない。木の枝が不気味にざわめき、まるでこちらに来いとでも言うように道を作る]
………。
[ぺしぺしと伸びてくる枝を切り落としては火にくべながら、考える。あちらへ行けということか。しかしあちらに何があるのか――もしこれを起こしているのが、あの化け物だとしたら。実際何度か助けられているし、会ったところで大丈夫、なのかもしれない。けれど自分に抵抗するだけの力がないのが問題だ。顔を合わせてしまったとしたら、きっと逃げるのは難しい。
行く気の薄そうな様子に焦れたのか、少し太めの枝が燻製釜を叩き潰すようにしなるのに目に入る]
はぁ!
[ナイフで一閃。しかしこれでは落ち着いて燻製が作れない]
あー…分かった。分かった行くよ、行くけどちょっと待って。これだけ作ったらちゃんと行くって。
[植物がこちらの声を聞いて、理解できるのかは分からないけれど…少し寄ってくる枝が乾燥したものになったから、聞こえていたのかもしれない]
離せ!!
[そんな声は相手に届いているのだろうか。しばらくはじたばたと無駄な努力をしてみるのだけれど。
触れた頬が濡れているのに気付けば、ほんのちょっと抵抗は弱くなった*]
[これは違う。
あの女ではないと、ここまで近づけばさすがに気づくことはできたのだが。
ならば何故、これを見ただけで吾の封は緩んだのか。
いや、違う、のだろうか?
封が緩んだのは小物であって、吾は、吾はただの──…
この世界に来て、より本来の吾らに近づいた今、
吾の中にはひとつの疑念が浮かんでいる。
あの女とこれの違いを理解していたということは、
吾以上にあの女を知っていたということではないのか?
小物の痛みを吾は引き受けることができるが、吾の痛みを小物に押し付けることはできない。護られているのはどちらといえるだろうか?
吾と小物、この生き物の主体はどちらだ?
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