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[ひらひらと舞う蝶は、未だ居ただろうか。
城主を失った異変に飛び去ってしまっただろうか。
もしも、まだ居たのなら、視線をツイと投げ。]
―――…見てくれるなよ。
格好がつかない。
[片腕を負傷したとして、折れる矜持は持たない。
だが、代わりに、彼女に似る蝶に見られることを恥じた。
色恋に関して利かない第六感は、蝶に気恥ずかしそうに、
己の失態を隠して身を捻った。]
[男の心は強く在った、或いは強く在ろうと努めた。
何故ならそれこそが、我が身が背負った義務であったからだ。
義務を背負わず、自分で在れるのは限られた世界。
それを罪と覚えぬ相手は極限られ、
彼女はその中の一人だった。
ひらひらと舞う蝶が居たのなら、
祝福を強請った唇が気恥ずかしげな苦笑の形に変わり。]
―――君とは花畑で逢いたかったな。
きっと戦場よりも、よく似合う。
[無知の言葉が、蝶を通じて彼女を苛むとも知らず。
ただ、純然と小説の中のワンシーンめいて呟いた。
蝶に誘われ、再会成すなど、遠い夢物語に過ぎず。
どれだけ抗い、どれだけ夢想しても、運命は勝手にやってくる。
血に濡れた月下で、きっと必ず、後悔と絶望を抱いて回り逢う。]
[出逢った事すら罪なのだ。と、
互いに退けぬものを抱える両者は、
聖に、魔に、咎に、
友に、血子に、
―――重い裁きを受ける事となる。*]
[血子と友人の命が決する、その時まで。
己の咎に下る裁きを、見届けるまでで良い。
どうか強く在りたい、在らねばならないと己に戒める。
願いを掛ける神を持たぬ身、どうかそう在れますようにと縋る想いが、ふと手繰り寄せたのは――]
[微笑で、皮肉で、虚言で、幾重も隔てた帳に差し込んだ、陽の光にも似た金髪の男。
月夜に垣間見た、何処か稚さを留めた男の笑顔。
柔らかな全てを冷徹な仮面で覆い、智謀を振るい、戦場で強く在る聖将の姿。
似合う場所は、あの笑みが綻ぶ場所は、もっと違う処にあるだろうに。
――焦がれて灰と消えても、もう一度だけ、と。
身の奥に潜む願いを照らし出すように、蝶は戦禍を率いる男に、つかず離れず纏わる。
願う罪の深さを恥じ入るよう、闇に溶ける黒い翅で、その気配を運び続けるため]
[いつか、を考えることはしなかった。
義務の果ての未来など、どうせ知れている。
だが、己を強くと掻きたてる義務が無くば。
その仮面が落ちてしまえば。
己が散々見ない振りをして、
知らない振りをしてきたソマリと言う、
本当の男が追いかけてくる。
本心を踏み躙り、貴族として強く佇む己へ。
血の徳を超えた、運命がやってくる。]
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