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[王の声が疑問の形でも、ツィーアは正しい解を提示することが己の役目とは思わなかった]
家畜の人間と野生の人間は異なる種族か?
シラーの家畜は死にたくないようであったが
[それでも考える間をおいて、なにか応えようと回路をめぐらせる]
野生の人間が従う道をとらぬは
……ラーグを喜ばせるため?
[抵抗する方が面白いのだから]
人間に違う種族がいるとは、あまり聞かないな。
家畜となれば従順になるのは、他の獣も同じだろう。
野生の…、馴らすのに手間のかかる種族か。そうか。
[思えばナールもそうだった。
慣らすまでは実に手を焼かせて──今ではすっかりツィーアと戯れるまでになったが。]
なるほど。
愛しい種族というべきだな。
それならば、我も存分に楽しんでやらねば。
[うむうむとこの場はひどく納得して、幾度か頷いた。]
そうであろう
[魔力の波動は嬉しげに弾んだ]
人形もそのようだからな
[顔も柔らかい体も持たない兵器にとって、五感豊かな流動鉱石の人形を介して王を知覚できるのは得難い歓楽だった。
眼が王の姿を見て、声を振動に聞き、肌に触れる。
与えられる苦痛、引き裂き溶かされるを人間の記憶は好んでいない素振りだが、
それを王が楽しむのはツィーアのよろこびでもあるのだから、やはり愛しい種族なのだ]
やはり、雑魚ばかりよりも好いものだな
[機嫌の良い声を響かせる。
眩しい光と、放たれた矢がもたらす夥しい死。
弱い人間や低級の亜人ばかりよりも質の良い餌がいくつか、収穫としてあった]
強いものほど美味
それを知るたびに焦がれるのは、お前にだ
お前は強く、最も美しい。ラーグ
良い食餌をしているようだな。
[響いて来る波を手指に絡ませるよう、片手を宙に伸ばして声を捕える。]
ふふ。
我を喰らってみたくなったか。
おまえの隅々まで、我は満ち行くだろうな。
[巨体を、喪われた本来の姿をさえ満たして溢れさせる。幻視。]
[夢想に重なるもう一つの夢想。
"無"一色の世界を、ふっと意思がかき消す。]
頂を極めずに言うことではないな。
我はまだ、この程度では満足しないぞ。
[先へ。
幻想に浸るよりも先に、覇気が踊った。]
あれが勝手に壊れるのだ
……仕置をするか?
[芸も披露しないうちに褒美を強請る獣のよう、期待を露わにした波動がゆるりと王の指の間を絡みぬけ]
[戯れる波動を指に絡ませる。
期待し、強請るさまは愛らしい。
何もなくとも、
それほど我に仕置されたいか?
そんな悪い子には、特段きつい躾をしなくてはな。
[喉を鳴らすような、優しげな声]
あれだな?
ひどく壊れたものだ。
我以外の手で、こうまでされるとはな。
[声が不快を含んだ。
お気に入りの玩具を別の者に触られたときのそれ。]
───ふむ。
もう少し、壊れにくくするか。
[真剣に検討する色で唸る。]
この素体は弟より弱いのだと言うていた
[だから壊されたのだろう、と判断する]
皮を硬くするのか?
あるいは魔力を注いで含ませてやれば良いか
[創造主である王の叡智に任せておけば良い、と。こちらの検討は抽象的なもの。
そもそも射撃に対して回避行動をとらさせれば良かっただけ、とは思いもよらぬこと]
そうか。弱いのか。
[人形の頭を踏み砕きながら、声はまだ思案する風。]
全て硬くすれば動きが悪くなるな。
打撃に反応させて密度を増やすか。
[ぐずぐず崩れる流動鉱石を足先でかき回し、]
── 戦い方を書き加える、という方法もあるか。
新たな素体を探して、記憶を抜き出すか。
人形自身で死を増やせれば、効率もいいだろう。
[試してみようと言って弾む声は、ツィーアを改造していた時と同じだった。]
あ
[頭が砕ける新奇なる感触に、魔力の波動は悦をほころばせ]
……今、お前の顔を見ていたというに……
[次いで、憮然としたような響きをおびた]
記憶を継ぎ足すのか
ならば好戦的なものが好い
[戦えと命じればそう動くが、人形の自律に任せておくと殆ど自らは剣を振るわない。
強弱だけではなく、そも剣技を護身の法として記憶から参照している節があったから、そこへ戦い方を書き加えるという策は魅力的に響く。
王がこの身の世界を広げていく、全ての過程を楽しんでいるのが嬉しかった]
またよろこびが増える
お前が私の為に手をかける人形は、私の誇りだ
好戦的なものか。
───そうだな。
[記憶の継ぎ足しに、ツィーアは興味を持ったらしい。
思い当たるものは、ひとつあったが]
……あれは、シメオンが殊の外気に入っているものだからな。
寄越せと言ってもいいが、あの数寄者が結局あれで何をしたいのかは気になる。
案外と便利にも使っているようだしな。
そうだ。
人形の素体を獲りに行かせたのもあれだったか。
何故だ
仕置は楽しいものだろう
[むぅ、と唸る声はちょうど、城が封印された魔導炉を動かそうとしている際の振動数と同じ]
なんでも良いが、またシメオンか
横取りせぬとは言うたが、奴は王族を落とすのに手間取りすぎではないのか
この素体を獲った者…どうだったか。強いのなら欲しいが、手間取りすぎではないのか
[二度言った]
[ツィーアの反応に、堪えられぬとばかりに笑いが零れた。]
おまえは、本当に良く私を楽しませてくれる。
[くつりくつりと笑いの波動が暫く止まない。]
そう拗ねるな。
すぐにおまえにとっても楽しいことになる。
そうだな。
差し当たっては──あのあたりを一匹、使ってみるか。
[笑いを収めてから、とりあえず、と先のことを考える。
手頃なところに、いくつか近づいてくる気配もあった。]
あれで、奴は何かを為しているのか?
[屍術を理解できないツィーアには、シメオンが何をしようとしたのかも、その結果も、曖昧として掴めないもの]
普通に死なせて喰らえば美味そうであったのに
[それも、人形が脆いせいだから是非もないこと。
楽しいことになる、と王の告げた"改良"に、意識は向いた]
ああ…高みに座すが当然のお前が、下賤と同じ地べたなど歩いているのも面白い
よく覚えておくとしよう
[眼が戻ってきたことで上機嫌、我が王の美しい背を見つめて喉を鳴らすように波動を揺らした]
さあ?
なにやら試したいことがあると言っていたが。
[シメオンの行う屍術には、魔王もさして造詣は深くなかったから、返答も曖昧なものになる。]
ここで終わる程度の相手のことなど捨ておけ。
人形がまともに動くようになれば、いくらでも狩れるぞ。
我とて歩くくらいはするぞ。
歩かねば太るらしいからな。
[上機嫌なツィーアに、返す言葉も冗談のようなもの。
太る、の意味は自分でも今一つわかっていなかったが。]
太る… …太る?
[なんだそれは、という響き]
では地べたになど降りずとも歩けるように、私の中に道を作ろうか
[歩けど歩けど永遠にループする廊下ならツィーア自身の工夫だけですぐに実現できそうだ、などと]
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