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[『クリシュナの記憶』
私が小学生の頃だったかな?中学上がってからだったかな
住んでる街の教会に新しい神父様が来たの
ルイス神父っておっしゃる方で、朗らかな人なの
そんな彼を見ながら、思うんだ
私も男性に生まれていれば、もっと色々おしゃべりできたのかなぁ
ほら、いつも女子に掃除を押し付けるマシューが神父様と楽しそうに話してる
私はただ、文庫本を持って端の方で神への祈りを聞くだけ
だから多分、神父様は私のことが分からないんじゃないかな
もしかしたら、覚えててくれるかもしれないけれど]
[厳しい暑さも過ぎ季節が漸く秋へと変ろうとするころ。]
こらこら、そんなところで遊んではいけませんよ。
ちゃんと公園に行きなさい。
[教会の前でボール遊びをする男の子を優しく叱る神父。
遊びたい盛りの男の子は中々いう事を聞いてはくれない。]
お友達も公園で待ってますよ。
[いつも一人で遊んでいる男の子]
『嫌だ!だってあいつら僕のことを馬鹿にするんだ!』
[男の子はとても貧しい家に生まれた。
ただそれだけで男の子は同年代の子供たちから虐められていた。
ただ一度だけただ一つだけ両親から買ってもらったボールだけが彼の遊び相手だった。
神父はそれを知っている]
ではこうしましょう、今から私と貴方は友達です。
だから一緒に公園へ行きましょう。
[少し驚いた顔の少年へ優しく微笑みかける神父。
男の子はその笑顔にうっすらと涙を浮かべた]
『うん!!』
[その涙を腕で拭おうとしてボールがその手から零れ落ちた・・・]
『まだお若いのにね』
『なんでも子供を庇ったって話だよ』
『神父様のお話好きだったなぁ』
[葬儀に参列した人々は神父の思い出を口ぐちに、その死を惜しんでいた]
『神父様・・・ごめんなさい・・・ごめんなさい』
[目を閉じて棺に横たわる神父の傍らで涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら謝りつづけていた]
いいのですよ。
・・・・・・貴方が無事で本当によかった。
[もう、その声は男の子には届かない]
[教会の神父様のお葬式
皆泣いてる、お世話になったから
なんでも子供をかばったらしい
棺に縋り泣く子を宥める人達、その子を責める他の子供たち
それを庇う子供たち
人はあっけなく死ぬ
人はあっけなく壊れる
そして記憶は、季節が過ぎ去るとともに薄れ
新たに派遣された神父様もまた子供好きな人
心に傷を負った子供も、優しい人たちのおかげで少しだけ、その傷が癒えて
季節は過ぎ去る
時は過ぎ去る]
[もし、私も神父様に話しかけていたら仲良くなれたかしら
神父様とも、棺に縋って泣くあの子とも
クリシュナ、として仲良くなれたかしら
ううん、無理ね。私は臆病者
男の子になりきることも
女の子として生きることにも抵抗がある中途半端
せめて、男の子として生まれるか
”記憶でもなくなってしまえば”]
[おさげ髪の少女は、ジルからかくれるためにいろんなばしょをさがしました
オルガンした?いいえみつかっちゃいます
書庫?いいえみつかっちゃいます
それとも厨房?いいえみつかっちゃいます
さぁてどこがいいだろう
こんこん
こんこん
かんかん
あれ?ここだけ音が違う?
ぎぃとあけた、そこには]
─ いつかの教会 ─
[その女の子は両親に連れられてきてはいつも端のほうにちょこんと座って本を読んでいた。
いつも騒がしくそれはとても子供らしくはしゃぐ男の子たちとは対照的に行儀よく物静かに。]
マシュー君、人を傷つけるようなことをしてはいけませんよ。
[少し乱暴者のマシュー君。いつも誰かと喧嘩していつも誰かを泣かせて。
でも本当は優しい心の持ち主。彼がいつも小さい子たちの面倒を見ているのを知っている。]
そうですか。
フフ、本当はあの子のことが気になって仕方ないんですね。
[そういうとムキになって精いっぱい否定して、精一杯あの子の悪いところ並べたてて。
でもそれは、それだけその子のことを一杯見ているってことでもあって。]
[神父様の声が聞こえる気がする>>74
『失くした』記憶の中のものよりどこかもの悲しいのは何故かしら
あれ?おかしいね神父様はお亡くなりになったはずなのに
どうしてかしら
『何を言ってるの?今ルイス神父は生きてらしてじゃない』
そうだったかしら?
『そうだよ、ほら耳を澄ませば声が聞こえる』
そうね、確かにそうね
『それにこのままこの姿でいれば僕らは何ももう、悩むことなんてないんだよ
ベル姉ちゃんやドロシーもいる、神父様やドヤ顔のあいつもいる
ねぇもとに戻らなくていいんじゃない?』
もとに?もと……私の元の姿って何かしら
ゆらりゆらり
薄れて消えて混ざって溶けて
そんな記憶の 泡沫]
[声がする こえがする
『クリシュナ、目を開けて』
『クリシュナちゃん、お願いだから目を冷ましてよ』
『このまま目覚めなければ――』
その声は父と母と、友人
…ゆうじん?僕にはいたっけ(わたしにはいたわ)
『おい、眼鏡ブス!何寝てんだよ馬鹿!』
誰だこいつ、失礼な奴だな(あのこよ、よく私をいじめた子)
しかも頬を叩いてる(神父様とも仲が良かった子ね)
『もうみつあみ引っ張ったり、からかいはしないから起きろよ
なぁ、クリシュナ』
なんでこいつ、泣いてるんだ(なんでこのこないてるの)
僕は、今の幸せなままでいいのに(もどらなきゃ、いけないかなぁ)
どうしよう(どうしよう)]
[血が道を赤く染めようとして、雨がそれを押し流す。
何もできなかったし今も声を掛けることすらできない。
なぜならもう私には肉体が無いから。
いつからだろう?どれだけたったのだろう?
クリシュナ。
いつも教会に来ていた女の子。
私にはもう貴方を救うことはできない]
『ルイス神父、貴方に仕事を任せます』
・・・司教様?
[そして私はここに来た]
[『先生、患者の容体が急変しました』
『除細動急いで』
『クレンメ、もうちょっと速度あげて』
ばたばた、ばたばた
(もどれなくなっちゃうわ)
(おかあさんもおとうさんも、みんなないちゃうわ)
(もうそろそろ、めをさまそうよ)
(ねぇ、***)]
届きますか私の声が。
聞こえますか私の声が。
可愛いクリシュナ。
気づいてください。
貴方が生きているこの世界はこんなにも美しい。
……?
[声が聞こえる
おかしいな、僕はシュナウザーなのに
(声が聞こえる
おかしいわ、あの優しい声はかつてなくなった神父様)]
あなたは、ルイス神父?
(いきてらしたの?ルイス神父)
[重なる声は青年のもの、少女のもの]
[クリフの声に
神父様の声に
『僕』は消えて(わたし、はよみがえり)]
神父、さま?
[そこにいたのは、1人のおさげ髪の少女]
[当時、誰にも言えなかった願い
(私が、私としてともだちになりたいといえなかったことば)
それを ぽつり 漏らして]
[救うなどとは思い上がりも甚だしい。
彼女はそんなに弱くは無かった。
大丈夫、ちゃんと自分の足で歩いていける。]
・・・・・・救われたのは私のほうですね。
……神父様。
私、私ね
ずっと神父様にも話しかけたかったのよ
何時も素敵なお話、ありがとう
[消えゆく彼にそう告げる、どこか穏やかな顔で]
[『先生!患者のパルスに反応が!』
『ああ、ようやくか!』
『それじゃ親御さんに連絡を』
ばたばた
ばたばた
ピッ ピッ ピッ
『おきて、シュナ、シュナ』
『クリシュナ』*]
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