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[だから、距離を置こうとする彼女が
ヤコブの部屋の中へと、足を後ろに遣りながら進む彼女が
”何を、得よう”としているのか、探しているのかを
敏くない俺は未だ、知らない*]
ありがとう。忘れずに取りに行く。
[カタリナの説明を聞いて、確かにパメラはニコラスから巻貝を受け取っていたと、たまたまそこに居合わせた男は思い出す。持って行く荷物がまたひとつ増えた。
彼女が何故距離を取り出しているのか、真の意味を理解しないまま、最後の引き金を引くように口を開いた。]
さて、そろそろ全てを終わらせよう。
[それが吹雪の夜、仲間と共に村へ惨劇の始まりをもたらした男が感じた責任と。ジムゾンの手は最後まで汚させない。そんな強い決意の表れなのだ。
ナイフはまだ部屋の中にある。そも男は、ヤコブがナイフを持ち去ったことなど知らない。*]
そうね。もう話し合いなんていらない。
でも、……ねえ、一つだけ教えて。
あなた達の幼馴染の死は、兄さんの死は
それを嘆くわたしは、どうだった?
お腹を抱えて笑える「ショー」だったかしら。
面白かったのなら良かったわ。
[煽るように問うのはずっと思っていたことだ。
それでも怒りや憎しみは声に滲まない
残った二人が誰なのか分かった時点で、そんな気持ちにはならなかった。
そう、だから、これは時間稼ぎでしかない。
正常な人間は皆死んでしまった
視線を部屋の中に移し、探す。そんなことも落ち着いて行えた。
彼らが到着する前、何かが落ちているのは目の端に捉えていたのだが
その時、意識を向けずにいたものは──]
でもわたし、何もせずに死ねないわ。
[最後の行動だけは唐突
飛びつくように手に取り、血に汚れたそれを両手で握りしめ彼らに刃先を向ける。]
わたしは選ばれなかった
そして、わたしもあなた達を選ばない。
わたしの兄さんは、殺されたあの人だけ。
[それは、目の前の二人を大切に思っていたという意味
未だ夜には遠い時間、それでも。
大人の男性二人、食事も最低限しか取らなくなった20に満たない女。
羊の解体すら父親の仕事で、未だ教えられてもいなかった。
この場で処刑の為に手を汚すことも、しなかった。
──結果は既に見えている。]*
[大切だった。
いつも、助けてくれた。
彼らにはそれぞれ守るべき女の子が他にいた。
だから、そんなことを言うことは一度もなかった。
それでも──
再び泣いたわたしが、持っていた気持ちは事実。
そうね、全部過去。
そう思っていたことも、三人の間にあったことも。
だから、決別したの。
わたしの兄は殺され、その人に妹まで殺められようとしている。
あのお気楽で不思議な人だけだと。]*
[話し合いなんて必要ない>>38、そう言い出したカタリナの態度で男は察した。妹のように大切に思ってた幼馴染の妹であり、男の妹の友人である彼女から、自分たちが拒絶された証なのだと。]
カタリナ、君が感じた気持ちが君にとっての真実だと俺は思っている。
[だからこちらも静かに彼女が離した手を見送るのみ。煽りに対して感情は全く動かない。最早その段階は通り過ぎたし、演技をする気にもなれなかった。
それでも男は動かずにいる。カタリナが次に何をしようとしているか、ただ見守り続けた。それが何をもたらそうとも。
一瞬の隙にナイフを手にしたカタリナを前に、ジムゾンの前へ一歩踏み出した男は、背中で幼馴染を庇おうとした。]
俺はジムゾンを守る。こいつだけは殺せないし殺させない。
[絶対の意思を込めた宣言は、カタリナの意思を肯定する意味もある。
彼女が自分たちをどう思っていたことを含め、全ては過去形、全ては過ぎ去ったこと。もう元には戻らない。*]
そうだね、君の兄はゲルトだけ
――俺の”妹”は、君じゃない
[だから俺も、やはり君を選べない
訣別の言葉を自ら、吐いた
護りたかった。だがそれ以上に――
欲しかったものがあったから
――構えられた刃は血に汚れている>>39
一晩で刃の周囲に固まった血は切り裂くことを邪魔をするだろう
幼い頃だが各地を旅してきた神父故
血に濡れた解体ナイフを放置して、肉屋のお兄さんに
だめだなーと笑って諭された過去を思い出す
きっと切り口は鈍い筈だ、とわかっていても
それは窓からの光を浴びて鈍く光っている
自分たちに、向けられた刃に。殺意に一瞬だけ動きを止めた]
(どうするべきか)
[人であるからこそ、迷う
どうすればディーターが傷つかないかの方に思考はゆく
自分が下手に手を出せば邪魔になろうか
大人の男2人ではあるが、風来坊な幼馴染と、平均的に
力仕事はできたとしても、デスクワーク神父では
そもそもの基礎体力も膂力も違うわけで
ディーターに庇われながらも考え、動けない
その判断が正しいかどうかは*]
[ただの冗談だと気楽に放った言葉で誰かが悲しめば、それは冗談ではなく言葉のナイフだ。
こいつは何でも許してくれると傍若無人な態度を取って相手を傷つけたら、それは只の暴力だ。
感情的でわがままで、自己中心的な性格の男だったけれど、この信念だけは譲れない。
カタリナが騒動を通じて傷ついたなら、あれこれ言い訳はしたくない。加害者の”そんなつもりはなかった”など、被害者には通じないと考えている。
ただ動けないジムゾン>>43とは違い、来るべきものが来たと感じた男は、むしろホッとした気持ちを抱いている。自分が受けるべき感情をようやく向けられたのだと。*]
[煽りへの答えなんて、なんだって良かった。
一昨日オットーの背後でディーターが咄嗟に行った──ように見えた──ように
この部屋から、何かを見つけるまでの時間稼ぎ。]
ふふ。
その人は守るべきで、兄さんは違ったのね。
……その違いってなんなのかしら。
[庇うように踏み出す姿>>42に
何もかもが遠い過去に思えて、少しもおかしくないのに口元が歪んだ。
なんの抵抗もなく刺される筈も無いだろう。
汚れたナイフは、その鋭さを失っているだろう。
なにより、殺し方も知らない弱った女の力だ。
それでもやるしか無い
ヤコブの部屋に入ったことで、逃げ道も失っていた。]
[足を踏み出し、ナイフを胸の前で構えたまま少しの距離を駆ける
赤毛の男、わたしが想定する人狼に向けて、ただがむしゃらに振り下ろそうとした。
──元々小柄な若い女、それに加えて未だ能力の劣化からの頭痛を抱えたままの動きには、大きな隙がある。
殺意を向けられる本人が動けさえすれば、もう一人が庇いに飛び出す必要もないようなもの。
致命傷を負わせることなど、可能性すらなかった。]*
[男は何も答えない。口元をゆがめるカタリナ>>46を黙って見つめるだけだ。
そしてナイフからジムゾンを守り、カタリナを止めるための好機を全神経を集中させて狙った。
やがてカタリナが動き出す。ナイフを自分に向かって振り下ろそうとした途端、体をひねってかわし、左手の手刀でそれを叩き落そうとした。
どんな結果になろうとも、カタリナの背後へ移動し、彼女の首筋に右腕を回した。そのまま力を込める。ずっと妹と同じように大切にしてきた女の子が、苦しまず一瞬で逝くことができるように。**]
[ 何一つ守れなかった
羊舎に残され、
吹雪に凍え飢える羊のように。
独りで、誰にも嘆かれることもなく
──ただ死んでゆく。
わたしの魂はきっと、
人間でありながら酷く汚れて
あの子の、パメラの美しさとは
──比べ物にもならないのだろう。 ]
[やがてその目も閉じ、抵抗していた腕もだらりと垂れた
選ばなかった二人に何一つ言い遺すことはなく、最期の思考は本人のみが知る。]*
[持ち主を亡くした荷物が残る部屋の中
木机に置かれた小さな紙には
毎日の犠牲者の名前が順番に、処刑された者以外も
連なる、連なる。
たった一人を残し他の全員に「人間」と記され
シモンの名前の横だけが、空白のまま。
多くの名前を書く為か、一つ一つの文字は小さい。
それでも、紙は埋まりかけていた。
自分が何も言えずに殺された時の為、人狼に見つからないことを祈りながら残そうとした遺言。
その裏面に薄い筆圧で、より小さく一言だけ。
「ごめんなさい」そう記されていた。
後悔も、死んではならない者が散る中生き残った悔みも
その一言では、表し切れず。伝えたい相手も皆もういない。
そんな感情も、書き記した者の命と共に過去になった。]
[ナイフを振り下ろそうとして叶わず落としたカタリナが、男の腕を引き剥がそうとする。けれどもそれを力任せに封じ、一気に彼女の命を、この腕で、刈り落とした。
最期に何を考え、何を見たのだろう。だかどんな言葉をかけても、もうカタリナに届かない。その術は全て絶たれた。
自分が人狼と分かったら、言葉の限りを尽くして罵られると恐怖を抱きつつも、当然のことと達観していた。しかし今思えば、どこかでそれを望んでいた気もする。だからカタリナに冷たい態度を取られても、全然気にならなかった。
むしろ感情を抑えているように見えた彼女が心配だった。そんな権利などないと知っていても。]
……。
[抵抗が止んだことを確認してから、ジムゾンの顔に一瞬見つめる。
オットーの処刑を実行したときとは決定的に違う、お互いカタリナを人間と分かっていて、それでも男はこの結果を選んだ。胸の中に複雑な感情が吹き荒れる。]
[それから目を閉ざしたカタリナを丁寧に床へ寝かせ、男は崩れ落ちるように両膝をついた。]
……っ、ううっ、うあああああっ!
[獣のような咆哮ののち、目から涙があふれる。今まで密かに溜め込んでいた何かが決壊してしまったかのように。
何故自分は泣いているか分からずに。両手で床を叩きながら、叫び続けた。*]
オットー、終わった。終わったぞ。
[咆哮の隙間から押し出すように、仲間へ呼びかける。]
俺は、遂に生き延びた。
お前が最期の演技のお陰で、シモンが疑いを逸らしてくれたお陰で。
だけど、俺はお前もシモンも喪ってしまった。
それは悲しい。悲しいんだ。
[感情を爆発させた獣は、仲間の不在を一心に嘆いている。]
[自分は祈りから顔を上げ
慟哭する男の傍により、そっと頭を撫で続ける
狼の事は狼にしかわからない
かつてオットーが言っていたことを思い出す
では。今ディーターが慟哭しているものは
――己は。人ではあるが
これは彼の。ディーター、としての痛みだと思った
己は唯、その心がすべて叫び終わる迄
色々な感情をないまぜにしたような、その声を聴きながら
ずっと傍にいて―――撫で続ける
己の顔には彼と違い涙はなかった
雪解けは、近い*]
……っ、……っ。
[一体いつまで号泣していただろう。
叩き続けた両手の感覚はなくなり、体中の水分が全て目から出てしまった気がする。
そんな状態になってから、男はゆらりと立ち上がった。]
ありがとう。お陰で落ち着いた。
[ずっと頭を撫で続けてくれたジムゾンへ告げる。これから始まる村の終焉に向けて、やらねばならぬことは山ほどあるのだ。]
まずは、カタリナを弔おう。
それから珈琲を飲んで、ヤコブの秘蔵の酒を味わうんだ。*
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