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―サロン―
[野茨公にとって己は子という存在。
親の期待に応えられる子であれない事が心苦しい。]
――いくつになっても。
我が君だけを親と思い続けましょう。
けれど子はいつか親元を離れひとりだちするもの。
そう思えば、――…淋しい関係かもしれませんね。
[人間であった頃の家族への思いはあれど
親と敬うべき存在は野茨公のみと思い肉親の縁を断つような言葉を紡ぐ。]
[肩に添う手にゆっくりと顔を上げた。
野茨公を見上げ、眩しげに目を細める。]
またお逢いできた事何よりも嬉しく思います。
我が君――…、
[感極まるように言葉を詰まらせる。]
これ以上は無意味だということを、理解してもらうために君を呼んだ。
私は、君がこの侵攻作戦の切り札なのだと思っている。
だが、奇襲殲滅戦であるべき作戦は、すでに時間をかけすぎた。
聖なる力は、その威力を失っている。
それでも、強化兵らの身体能力はおそるべきものだけれど、君に関しては無害だ。
ゆえに戦場から隔離すべきだと思った。
女子供が抗争に巻き込まれるのは本位ではない。
ここなら安全だし、退屈もしないだろう。
君に、読書の習慣があれば、だが。
[ ヴィンセントの声は、教会のパイプオルガンの音を思い出した。
ずいぶん遠くへ来たような気がして、、
まだ数日と経っていないのに、と不思議を思う。
この時間だけを切り取れば、教会の書物庫で、
助祭に交じって聖人伝を読んでいる時とそんなに違わない感じがするのに、
目の前の人は魔物なのだ。 ]
……ええ。
[ 本題に、と言われて頷いた。
そうだ、話をしに来たのだ。 ]
……。
[ 再び言葉の使い方を忘れてしまったように、
ヴィンセントの顔を黙って琥珀の目で見上げる。
血の気の薄い頬やくちびる。
整えられた髪。
きれいな人だな、ともう一度思った。
指摘はそうかもしれない、と思いつつも、
自分でも驚くほど平常心だった。
もう聖女としての力はないかもしれない、というのはもっと深刻な理由で、
すでに心の準備がすんでいたから。 ]
返事の前に聞かせてほしいの。
貴方はなぜ吸血鬼になって、
何のために今も吸血鬼でいるの?
[子はいつかはひとり立ちするもの。
そう言う我が子の目を覗きこむ。]
もしも、私ではない誰かに"愛"を注ぎたくなったのなら、
その子と二人で新しい世界へ旅立ちたいというのなら、
私はそれを祝福するけれども―――
[愛、という言葉はいくつもの色を帯びる。
親子の愛、恋人の愛。自分以外の存在に注ぎたいと思う心。]
[己の中心へと、ただ真っ直ぐに距離を殺ぐ刃。
風に散る金の髪が、視線を浚う。
月にも陽にも、瞬く度に彩を変える男。
風に惑う蝶よりも、徒に翻弄されるしか術がないのはそのせいだ、と。
身が貫かれるまでの間に思い至ったのは、唯それだけ。
――男の自重を受ける身体は、影を連ねて夜空に舞った]
[言葉詰まらせる肩を抱き寄せ、髪に指を潜らせる。
こうしたかった、と指先に語らせて]
アレクシスのおかげだ。
彼が、私を引き戻してくれたから。
[救い手の名を、感慨深く口にする。]
[聖女欠格を指摘されても動じないユーリエを見やる。
疲れ切ってしまったわけではあるまい。
この城で、彼女なりに感じたものがあるのだろう。
虚実を操る公弟は、彼女の問いに、真摯に応える。]
魔物が「悔い改める」と言ったとき、教会の反応は、
「魔物のいうことは信用ならない」か、「殉教して証拠を示せ」に大別される。
神──教会は、制し、罰することを根幹において、世に幸せを導かんとする組織ゆえに、一度でも罪を犯した者に対しては厳しい。
情状酌量などしていたら、示しがつかない。峻厳なる法治の理だ。
私もかつて司法の側にあり、だが、出会った吸血鬼を断罪できなかったゆえに吸血鬼になった。
吸血鬼であることは止められるものではないから吸血鬼のままでいる。
そして、私は、愛する者と共に人生を謳歌しているから、滅ぼすと言われても拒絶するよ。
[細かい事情は省いたから、よく伝わらないかもしれないが。薬の切れる時間も迫っていた。]
[己を歪と思う理由。
己を醜いと称した理由。
嫡子であるのに決して家門を継げぬ理由。
半陰陽であったジークムントは
野茨公と通じる事がなくとも
結局は教会から追われる事となったと思う。
だから――、頼れたのは野茨公ただひとりきり。
その頼った彼にさえ、それは隠せていると思っている。]
[覗く眼差しに翆が瞬く。
野茨公の言葉に耳を傾け、それからゆると首を振った。]
――…それは誰にも望めません。
幸せに出来ぬ身で求めるのは、我儘が過ぎるから。
[誰かと共に旅立つ事は考えていない事を明確にしていた。
目の前の美しく気高い吸血鬼の幸せを願う。
大事だからこそ迷惑を掛けたくはない弟を、想う。]
いいよ。
ヴィンセントが、命を賭けて護ろうとしている愛する誰かが居ることは分かった。
だから私も、命を賭けるね。
私がもし、聖なる力を失っていたならば、吸い殺してもいいよ。
でもそうでなければ。
滅びるのは貴方だわ。
だけど、きっともう、苦しくも痛くもないわ。
私がそう信じているから。
そうして、貴方が滅びたら……。
貴方は私の子供になって、もう一度生まれておいで。
私の母も、私を処女懐妊したそうなの。
だからきっと、私にも出来るわ。
貴方の愛する人も吸血鬼?
お兄さんのギィかしら?
……もしそうならば、ギィも私の子供になるといいわ。
ちゃんと兄弟として。
吸血鬼はやめられないけど、人間から吸血鬼になることが出来るのだから、
もう一度人間になってみてもいいでしょう。
そうして、教えて。
貴方の幸せは、生きている間には絶対に出来ないことなのかどうか。
どうしても吸血鬼じゃないといけないのか。
君は、異端だ。
[ユーリエに向ける声は弾劾ではなく、むしろ賞賛のそれ。]
還る場所があるなら、安心だな。
[少女の両手に指を絡め、華奢な首筋に冷たい唇を押し当てる。]
今、けっこう、危険なことをしている自覚がある。
[服薬しているからといって、聖血の効果を消せる補償はない。
だが、ギィのところへユーリエを行かせるわけにはいかなかった。
行かせれば、ギィはなんの細工もなしに聖女の血を吸いたがるに決まっているから。]
あなたを、喜ばせることができればいいんだが──叱られるかもしれない。
[抱き寄せる腕に引かれ、野茨公の肩に口許が触れる。
野茨公の目に映らぬ騎士の貌がふっと泣きそうな色を過らせた。]
――…アレクシス殿に感謝せねば。
身に余るあなたからの贈り物をヴィンセント様から受け取りました。
……、これが、その手に戻れば、
あなたの望みは、叶いましょうか。
――叶うなら、これは、……あなたが持つべきもの。
[手に包む血色の薔薇を野茨公へと差し出そうとした。]
そうね。
[ ひやり、と触れる唇に、
からめられた指を、きゅ、と握った。 ]
こんなこと聖書のどこにも書いていないわ。
[ 指は震えている。
声ほど冷静ではなくて。 ]
でも、そう思ったの。
[ 目を閉じた。 ]
―地下礼拝堂→廊下―
ユーリエ…――。
[扉の向こうに消えたきり、ユーリエは戻ってこなかった。
意識を集注すれば、遠く離れていく小さな光り。
跡を追いかけようと感じる光りの方へ走り出す。
が、すぐに足は止まった。
どうして声をかけずに、彼女1人で行くことを選んだのだろうか。
礼拝堂で見せてくれた、強くて優しい意志。
彼女なりに思うところがあって、あえて1人で向かったのだとしたら。
自分が行ったとしても、ただ彼女の意志を無駄にしてしまう事に成るのではないかと。]
聖は魔を浄める。
魔は聖を穢す。
どちらの色に染まるかは、色の濃さ次第──にならないのは色彩学をかじった者なら知っていること。
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