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― 鐘の塔 ―
[ 街へ、王宮へ
重々しい鐘の音が響き渡る。
塔の上からは見えていた。
王宮に連なる道の上に
徐々に人の顔が増え始め、
鐘の塔を見上げる様子が。
急ぎ、逃げてしまえばよかったのだろうか。
人の駆ける速さは音を超えない。
ともすれば、不安を顔に浮かべた民の目から
――… あるいは王宮から成る道を、
駆けてくる兵の目>>79からは逃れ得ない。 ]
[ 民を鼓舞する王の姿は無く、
鐘の音を悪戯と断じる道理も民には無く。
ざわざわと街中の喧騒は
塔の上に聞こえるほどに大きくなる。
やがて、民のざわめきの元は
鐘ではない物に変わるのだろう。
近頃暴動の頻発していた南方の地>>3:216
そこから王都へ報せが齎されれば。
『 隣接する南の国に進軍の動きあり 』と。
何も情報を伝えるのは、
国に仕官する衛兵ばかりではないのだから。
…国の中に隣国と通じる者は少なくない。
かつて北の国と通じていた
[ ―― 石段を登る音がする。
城内に引きこもってばかりの
近付く足音の主の顔が見えたら、 ]
やあ。…また会ったね。
[ 振り返った画家はふふりと微笑む。
奇しくも、やって来た相手はかつて
名と顔を覚えてもらった>>1:228衛兵で。
人手不足で見張りの仕事をしていたのか
それとも今が人手不足なのだろうかと
緩く首を傾げたローレルの心は凪いでいた。
街中に、…向かい合う相手の貌に
不安の色が見え隠れしているからだろうか。
同行をと申し立てる言葉には静かに頷く。 ]
[ 彼が真に
一体いつになるのだろう。
鐘が侵攻の合図だと気付く者は居るだろうか。
お祝いや弔いや、大事な時に鳴らす鐘なんだ。
かつて少女には死んだ心を蘇らせてくれた
今度お祝いの鐘を一緒に聞こう?
そしたら――――… >>77
兵士に伴われ、塔を降りながら
風が弄る御転婆な髪を手で押さえ
娘の唇が誰にも聞こえない微かな言葉を紡いだ。 ]
( ごめんね )
[ "約束"を破ったかつての自分に向けたものか
それとも――、と、深く思案することはない。 ]
[ 形ばかりはあくまで丁重に。
けれど、逃げ出す隙などは無く。
王宮へ続く道を娘は行く。
街中で視線を向けられることはない。
民の多くが
鐘の余韻に不安を抑えきれず
程度は違えど右往左往し、
戸惑い、物々しい雰囲気だった。
さながら、
最後の審判を待つように。
それを見遣るでもなく、
絵描きの娘は道を行く。
…ある時、道端に立つ養父と目が逢う。
彼もまた家から出てきたのだろう、
ローレルは養父と目を合わせなかった。 ]
[ 養父から声をかけられることもなく、
道が別たれる前、ちらと見遣った顔には
どことなく哀愁が漂っているように見えた。
そのまま角を曲がり、
王宮に着いてとある一室に通されたら
付いて来た衛兵が行ってしまおうとするから ]
…悪戯っ子を閉じ込めておくには
鍵が足りないんじゃないかなぁ
[ と、態々呼び止め、冗談だよと言い直して
筆と紙を一つずつ持ってきてくれるよう頼む。
先に届けられるのは
彼の王子>>66の死の報せか、
それとも南の国の侵攻の報せか
どちらとも未だ知れぬことで
待つ間に何か描いていようと思ったのだった。* ]
ふむ、金言だね。
"
吟じる理由なんて、それだけで十分さ。
[>>63 青年のみせた素養に関心して目を細くする。この青年は、まっさらな羊皮紙に何を綴るのだろう。面白そうだと思えばこそ、託してみたくもなるものだ。]
[>>83 響く鐘の音。王城から視線を外し、市街の中程にある塔を見上げる。早鐘でもなく、数も多い。街の人々も戸惑いを浮かべているようだ。]
……おや、なんだろうね。
何か知ってるかい?
[問いかけてみるが、答えはあっただろうか。]
まあ、道は自分で選ぶもんだ。
気が乗らなければ、便箋代わりにでもしておくれ。
"
[別れの挨拶の代わりに古い言葉を添えて、青年に背を向ける。いつかまた巡り会えたときには、鷹と連れ合う姿がみたいものだと心の片隅で思いながら。**]
高い塔の天辺に吊るされた鐘が、七つ鳴った。
皆、一様に空を見上げて、たった今聞いた音の意味を探り始める。
時を告げる音なのか、
あるいは、何かが始まりを伝える音なのか、……それとも、
何かの終わりを告げる音なのか……。**
[金言と言われたならば、ほんの僅かに頷いてみせる。>>89
返された言葉も同じくそうであるのは分かったが、流石に妙齢ともなればそんな事は直ぐに分かるらしい。
それが吟遊詩人故に身に付いていくのか、或いは、元よりの彼女の素養が成せる技なのかは分からないが。]
成る程、固く考える事自体が無意味そうだ。
気の移ろう儘に綴るか、
それとも、心内に留め置かれるか。
今は、確とは返さないでおこう。
[細められた目の意味は知れないが、悪い意味でなさそうだとだけは分かったものだから、羊皮紙をそのまま手に持った。]
[
鳴り響く。
── 鳴り響く。
それが繰り返される事、七回。>>71
意味は知っていた、彼女がそう言ったのだから。
あと数日もすれば鐘の音が鳴る。
…国の弔う音色を聞くかどうかはきみ次第、
北から攻められているのに南からも軍が来る。
俺がこの現状に願うとすれば一つ限りだ。]
国内で南と北が衝突するような、
そんな事だけは、ないと良いのだが。
… まぁ、成るようにしか成れないか。
[民を害する気がないのなら、実質あれらの目指す場所は王宮だろう。
平常、兵士や国の要人に守られてきた民などが戦える筈もない。]
……
そういう事だ、御老公。
[遠回しに、知っていると口にすれば、投げられた言葉に返しながら王宮の方へ足を踏み出した。>>90
彼女が此方に背を向けたのと、ほぼ同じような頃合いに。]
[亡霊のように、三度の別れは口にしない。
ただ、いつか会う事があれば、と、思った。]**
[王宮への道を踏み行きながら、言うのは何処か劇染みた言葉ともとれるもの。]
あぁ、終わってしまうのだな。
この樹は、もし焼かれずとも、
育ててきたその枝を奪われてしまうらしい。
[何処か回り諄い言い回しをしたのは、その意味を悟られない為だった。
それは、関わる事の長かった彼女が、芸術家であるのも理由かもしれなかった。
彼女と別れてから空に溶かした言葉を、再び音にならない唇に乗せながら。]
(
[身を案じても、そのばかりに過ぎるのは、彼女の望むものなど自身が差し出せないと知っているからだ。
鐘を鳴らしただろう彼女が無事である事を希うしかないのも同じ事だった。]**
―― その夜 ――
[晩鐘が鳴り響いたその夜、小雨の降る中で。
僕は多忙を極める中でなんとか時間を作って、
護衛の部下も連れて、一時帰宅の途についていた。]
……我が国の情勢は依然として予断を許さない。
もしかすると、地図上からラメールの名が消える日が
もう間もなくまで迫っているのかもしれない。
しかし、まだそうと決まったわけじゃない。
軍事となれば僕らに出来ることは少ないけれど、
防諜に治安維持と、やれることは十分にあるはずだ。
[僕としても沈みゆく船に付き合うつもりはない。
だが、補修を重ねればまだ助かるというならば、
ギリギリまでは踏みとどまって保たせてみせよう。
そうでなくては、今までの苦労が水の泡なのだから。]
……しかし、万が一ということもある。
念のため、家族には国外に避難して貰うつもりさ。
戦乱の気配が垣間見える南北は不安が残る。
東から海路で治安の良い国へ向かうのが最も安全かな。
[せめて国外に頼れる親類でも居ればよかったのだけれど、
僕の両親は既に亡く、妻は孤児院の出で天涯孤独の身。
幸いなのは、外国生活でも不自由しないだけの資産があることか。
僕の隠し財産と妻が節制して貯めていた貯金があれば、
大黒柱が居なくとも余裕で生きていける筈だ。]
君たちも、もし家族を国外退避させるなら言ってくれ。
安全のためにも、逃げるなら一緒で大人数の方がいい。
[そう、二人の部下に告げつつ。]
[自宅が見えてくる場所まで来た所で。
近くの塀に凭れて蹲っている女性――まだ少女だろうか。
不穏な様子の女の子を見掛けて。]
そこの君、大丈夫かい?
[何の気なしに声をかける。
道に迷ったのか、怪我でもしているのか。
何にせよこんな所に居られては放っておけない、と。]
こんな夜更けに一人というのは危ない。
早く家に帰りなさ――……
[彼女の前に立ち止まり、そう忠告しようとして。]
[少女の手元にキラリと輝く"何か"。
彼女は街灯の明かりを反射して煌めくソレを構えると。
――正面から、僕に突き当たってきた。]
…………え?
[一瞬、一体なにが起こったのか。
何をされたのかすら分からなくて。
制服の腹のあたりを染めてゆく赤を目の当たりにして。
初めてその痛みと、自分が刺されたことを自覚する。]
君、は。
[僕に恨みを持つ相手なんて数えればキリが無い。
君は何者で、どうして僕に危害を加えたんだ、なんて。
無意味な問いかけをしようとして。]
(……ああ、いや、思い出した。)
[つい一月ほど前に僕が強請った税務官。
その娘が、確かこんな少女だった>>0:29。
だとすれば、これはきっと――。]
[崩れ落ちるように膝をつく。
深々と刺さったナイフから滴り落ちる血が、
降りしきる雨と混ざって足元を紅く染めてゆく。]
っ、待て、追うな!
追わなくていい……。
[逃げ去ってゆく少女を追おうとする部下を制し。]
嗚呼、僕としたことが。
なんて、呆気ない……。
[ばたり、とその場に倒れ伏した。]
[けれど、こうなるのも当然なのかもしれない。
妻と子があまりにも愛してくれるから。
ウェルシュ殿下が多大な信頼を寄せてくれるから。
部下たちが素直に慕ってくれるから。
僕はどうやら、忘れてしまっていたらしい。
――自分が本来、私利私欲に塗れた悪人だということを。
どれだけ忠臣面しようと、どれだけ善人面しようと。
結局、僕はどこにでもいるような俗物にしか過ぎなくて。
そんな奴には、こんな最期がお似合いということなのだろう。]
[急速に血が失われていく感覚。
身体が末端から痺れ、視界は段々と暗く染まってゆく。]
(僕は、何のために生まれたのだろう。
僕は、何のために生きてきたのだろう。)
[薄れ行く意識の中で自問自答を繰り返す。
滅びに向かいつつある国の中にあって、
少しでも自分の生きた証を残せただろうか。
失われつつある僕の目が最期に捉えていたのは、
慌てて家から飛び出してくる最愛の人の姿。
騒ぎを聞きつけて出てきたのか、部下が呼んできてくれたのか。
けれど、もう身体が何も言うことを聞かなくて、
手を伸ばしてあげることすら出来ないけれど。]
[ラメール王国、監査局長。
ヘルムート・ハイドリヒ・シュナウザー。
――――享年、27歳。
平民ながらにあらゆる手段を用いて地位と権力を求め、
それでいて妙な形で国と主君への忠節は貫いていた一人の男は、こうして呆気なく、唐突に、その短い人生を終えた。
後世においては、彼を奸臣・佞臣と呼ぶ声も、忠臣・能臣と呼ぶ声もあり、その評価は真っ二つに分かれている。]*
― 遠き日々 ―
護国の城塞綻びて 冷たき北風吹き荒ぶ
北へと駆け行く 騎馬の背見つめ
迷いし民は 身を寄せ合う
雄志の明星 集いし者を失いて
夜明けを待たず 地に堕ちる
重き鐘の音 響き渡るは 誰が為か
強慾の守り人たるは 誰が為か
隔たる心は 霧深く
在りし日は 果てなく遠き日々の中
溢れし水は 戻らぬけれど
確かに愛していたのだと
枯れし言葉は 届かぬけれど
確かに愛していたのだと
[窓を開け、地を濡らす小雨の音色に耳を傾ける。
静けさの中、暗闇に王城の篝火がぽつんと咲いていた。
馴染みの貴族から内密に、と。耳打ちされた王宮の顛末が、重く心に沈んでいた。
この雨が血も憂いも洗い流してくれれば、と願わずにはいられない程には。**]
[何を考えて弟に一言を放ったのか>>65。
此方の秘めた想いを決して口にする事は無く、弟の姿を見ようともしなかった。
己を呼ぶ弟の哀しい声を耳に入れども、彼に翠の瞳を向ける事は無かった>>74。
幸せだった幻想は最早此処まで、そう弟に告げるかの様で。]
……っ。
[不意に襲ってくる強烈な眠気に身体は揺れ、段々と視界が暗くなり、聞こえる声が遠くなる。
身体の力が抜け落ち、拘束しようとした軍人に崩れ落ちる己を支えられながら。
漸く聞こえる弟の叫びに反応すれど、上手く首を動かせない>>75。もしかしたら軽く首は動かせるかも知れないが。
怒鳴りつける弟の声もハッキリとは聞こえず>>76、微かに唇を動かし音を乗せるが。
その声は周りの喧騒に簡単に掻き消される、小さく弱いもの。]
―、―……―……。
[何かの音が七つ聞こえる>>71。
もうその音が何なのかは分からないが、ゆっくりとした音は此方を眠りの世界に誘う。
やがて唇も動かなくなり、完全に意識を手放し安らかな吐息を立てていた。
慌てて駆けつけた医務官達は診断の為身体に触れたり脈を取っていたりしている。
今の段階では特に命に関わる程の異常が診られないと判断を下したのだろう。
医務官がそれを弟に告げれば、此方の寝室へと運ばれていく。
自室の寝台に眠る身体を乗せられ、慌しく医務官が治療に尽力を尽くしたり、侍女達が身の回りの世話をしていく中。
少しずつ少しずつ、周りに気付かれる事が無く、その命の炎が消していく。
次第に呼吸が浅く回数も少なくなり、手足の温もりも消え失せてきているのだろう。
そんな自分の事にも気付かず、安らかな眠りを永久の物へと変えていく。
己の心を苛む黒い感情も一緒に消え失せ、自ら背負った痛苦も忘れ去って穏やかに眠り続けていく。]
[北が動いて南もまた動く>>84。
己が撒いた厄災の種が芽吹くのか否かは、最早相手次第。
『ゾネス要塞、陥落』
何れラメールを守っていた要が崩れ去った報告はそう遠くない内にされるのだろう。
南もまた進軍し王都を陥落させようと動き出し、北はラメールを侵略しようと、母国を守ろうと戦い始める軍人達。
最早自分はその顛末を見る事も知る事も出来ないのだ。
厄災の種を撒いた己は、もう二度と口にする事は無く秘めた想いを隠したまま静かに逝くのだ。]
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