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あーまァ確かに。
俺も好きだぜ甘いもの。
ただ定食屋で食うかってと微妙だけどな。
……女連れの客にでしょ?
[ベルティルデの問いに曖昧な返答をした店員に、
重ねて問うと「えぇまぁ」などと返されて肩を竦めた。
一人で頼む猛者も中には居るのやもしれぬが。]
欲しいって? だったら取り皿ついでに貰うか。
チーズチキンカツ定食もなかなか美味そうだし、
足りなかったら追加していいから俺にも一切れくれ。
[適当な雑談に興じていれば、早速注文の料理が運ばれて来たろうか。
手際の良い店のようだと、視線見交わして笑んだ。]
おー、こりゃ思った以上だ。
すきっ腹にこの香りは反則だよな。
卵の絡み具合も丁度良い感じだし、そっちのカツもいい色の衣。
そっちの分、このくらいで大丈夫か?
上官の長い話じゃ腹は膨れんからな。
いただきます。
[「少しくれ」と言っていたベルティルデの分を追加で貰った取り皿に取り分けて手渡して。いざ、待ちに待ったお食事タイム。]
……あん?
[ベルティルデはいち早く食事を始めていただろうか。
手に取った割り箸に力を込めようとした瞬間、
相手から飛んできた「ところで」に阻まれて顔を上げる。]
[―――そうして、手の中の割り箸は無残、犠牲になった。]
………は………?
[人間、予想外の出来事に直面すると固まるというのは本当らしい。
文字列だけが頭の上を素通りしてゆくようで、
その唐突な言葉の意味が漸く落ちてきた頃には
冗談だろうと笑って切り返せる時間は過ぎてしまっていた。]
いや、お前、言ってる意味分かって……
[長さが全く違う割れ方をした箸に気づくと、そっと右に除けて置き。
手持ち無沙汰になった手は無意味にコップに伸びた。
握るでも掴んで飲むでもなく、淵を小さく爪弾く。]
…… つか、向こうで話したろうに、
[よりにもよって場所とシチュエーションが余りにもそぐわず、
何かの意趣返しかも知れぬと半信半疑で、けれども……
冗談でなかった場合は、どうか。]
お勧めしないって、言ったろ?
[覚えているはず、と、苦笑する。*]
― 出立 ―
[太陽が南の空を通過する頃、空の一角に小さな点が現れる。
黒い点は次第に大きさを増し、形を明らかにしていった。
軍用のヘリだとわかるほどの距離になれば、ローターが大気をかき回す音が地上にまで轟くようになる。
宿舎から少し離れた森の小さな広場で、フェリクスは信号灯を振って合図を送った。
ヘリが広場の上空でホバリングを始めれば、ミヒャエルを引き寄せてしっかりと抱きしめる。]
ちゃんと捕まっていろ。
離すなよ。
[耳元で大声で告げたのち、ヘリから降りてきた梯子に掴まって島の大地と別れを告げた。]
― 出立 ―
[島からの帰還は再び空の旅となった。
手だての違いはあれど、今回もまたフェリクスと密接しての移動だ。
他所の目のあるところでは毅然としていたい。
そう思いつつ、フェリクスのベルトを掴む手は以前よりも寛いだ弾力をまとう。
必要とされている自信と未来を望む気合いが溌剌と漲っていた。]
大丈夫だ、離すものか。 セア・ロゥ
[ローターの風に紛れさせて愛しい名を呼び、新たな一歩を踏み出すのだった。]
もちろん。
[ガラスのコップに口を着けたまま言って、ちらと相手の様子を伺うとお箸がえらい勢いで割れていた。気持ちは解らないでもない。逆にされたらこっちは握り割っていたかもしれないし、と。
だから先手を打ったという訳ではないのだが、手持無沙汰代わりにまたグラスの水で口を湿らせて。]
いやまぁ、覚えてるし、解ってるけど…
オススメでないだけで、駄目ってわけじゃないでしょ?
…あれから考えたんだけど。
[コップの位置は変わらないが、視線は向こうを見るようにしながら。]
いや、うん、別に凄く誰かと今すぐ
付き合いたいとか飢えてる訳じゃないけど…。
そもそも誰かと付き合った事がないから、
何って言うか、出るのは理想ばっかりだし。
だけど並べた私の理想に、ものすごーく嵌るのって
オズワルドかなって、思って…。
それなら一度、ちゃんと付き合うって
形取ってみたら、どうかなるのかなーって…。
[自分でも歯切れの悪い、らしくない言葉を並べているのは解っているが。付き合うと言った言葉を引っ込める事はせず、さてと相手の反応を待つ。
沈黙が長ければ、冷めるよ、と言って自分は水をまた飲んだ*]
うん……いや、確かに駄目とは言ってないけどな?
[明確な拒絶はしていない。
駄目かと聞かれて駄目と言うかといえば、きっと言いはしない。
言葉尻を取られた形で、返答に詰まる。]
そりゃあ。確かに話せば気ィ合うし楽しいし、
見た目も割と好みだし… っとその、なんだ、
俺にとっちゃ素で接することの出来る女なんざ、珍しい相手なわけで……
[訓練中にも告げたように、
『対象外』かと言われればそうではなかったのだ。
過去、ベルティルデの相手への誤認もあったにしろ、
時既に遅しとして女性として彼女を見ることを諦め、
気楽な関係に甘んじていたのは、恐らくは自分の方。
そして現在は、数々の女性絡みの所業が
果たして彼女へ及ぼす影響はいかばかりか、という憂慮もある。
既に仕事上では影響を出している為、今更ではあるかも知れないが、友人・同僚ならまだしも、それ以上となると話は別だろう。
何より一番の問題は、己の女狂いが治癒する見込みはどうか――というところでもあり]
けーど、こっちに色々不安要素があんだよ。
……だから手付けないで大事にしてたのに。
…理想ってお前。
「お試し」みたいな雰囲気で男に食われようとしてんじゃねえよ。
言っとくが、先を考えりゃそういうことだからな?
[分かってんのか、と念を押しながらも、迷いは巡る。
過去から現在まで続く大事な友人という形を保った先を想像する。
一方で、今、関係を変えることで生じるリスクとを天秤にかける。
形を取ることで何かが変わるかと
実験めいた話であれば付き合う気は実のところない。
しかし、先の任務を経て、穿った楔が揺らいだ自覚はある。
だから今、是も否も、己の気持ち一つだというなら]
〜〜〜〜……
ッ…… 弱った。
[テーブルに肘をついて頭を抱えた。]
こっちに断る理由がねえや……
[沈黙の中で食事を勧められれば、
既に風景の中の一つと化していた親子丼を一箸。
こんな状況、すぐに意識は料理から離れてしまうのだが。]
まァ、じゃあ、やってみますかね。
今後とも、ヨロシク?
[挨拶とか要るんかこれ?などとたどたどしい会話ひとつふたつ交わして、ベルティルデの頼んだデザートが運ばれて来れば、これ幸いと食事の続きに取り掛かる。
相手への恋情抜きで形を取る気はないと言ったこと、
少し癪だから、これについては念を押さずに黙っておこう。
是を返すということは、つまりは「無くは無い」ということになってしまうから。*]
愛しき月は狼に翼を与える。
[徐々に高度を上げていく翼の下で、確かな温もりを腕に抱く。
次第に遠くなっていく地面や木々は、到着したときの逆再生のようだ。
あの時はちゃんと抱きしめられなかったものが、今は自然に腕の中に収まっている。
この島で得たものの、なんと貴重なことか。]
これが俺とおまえの初飛行だ。
ファールア。
これからはおまえとどこへでも、どこまでも行こう。
─── 愛している。
[梯子がヘリに収納されるまでの短い間に思いを告げ、島の風景に別れを告げる。
これから先、ふたりで見る風景はきっと色鮮やかなことだろう。
未来へ思いを馳せながら、そっと腕に力を込めた。]***
[腰に回された腕が腰元を撫でる動きに、ん。と僅かに反応を示す。
首筋に回した腕が咄嗟に肩口を添えられて、ただ引き寄せるだけのその行為に、甘やかな吐息が零れたことに照れを隠すように俯く。
ソマリから返ってきた言葉は、自身が想定していたよりも甘いもの。
そこに嫉妬を表すようなものが含まれていることに瞬きを一つ。
幾つもの浮名を流してきた彼と自身を比較すれば、その心配は杞憂だと思うのだが……。
くすり、笑みを漏らせば]
そんな心配を向けるのは、
貴方ぐらい……、ン、ッ……
[その表情を見たいと顔を上げようとすれば、
すぐ傍に気配を感じて、言葉の続きごと彼の唇に奪われる。
不意を突かれたことに驚きに目を丸くしたものの、深くを求めるような動きに気づいたなら、薄く唇を開いて彼の舌を迎え入れていく。
背に回る腕に身を委ねたなら、肩口に置いた腕も自然、首筋に絡んでいく。*]
[フェリクスの背に翼を幻視するように見上げる。
彼の唇が「愛している」と動いた。
それを実感できる嬉しさ。]
わたしの愛しい狼──
愛される喜びを分かち合おう。
[足元に広がる海も世界も、ご照覧あれとばかりに宣言する。]
[ヘリの扉が締まれば、ふたりで肩を並べて、始まりの島に感謝をこめ敬礼した。
ここからは新たなmissionだ。]***
うん。
[向こうも駄目ではないらしい。それには頷いて。]
うん。
[見目を褒められる時は素直に嬉しそうな顔をしながら、その後に続いた言葉にも満足そうな顔をする。]
不安要素って…あぁ。
私も鬼じゃないから、大丈夫。
何かあったら、
グーチョキパーの好きなの選ばせてあげるから。
[殴るか目を潰すか平手かの三選択に、にこりと笑んで。]
[大事に、には一瞬、目を丸くして視線を彷徨わせた。]
そりゃまぁ、うん、子供じゃないんだし?
いやうん、ほんと…それは、そのうちに。
[念押された部分については、昼間の食事時という状況柄やんわりしながらも、是を返す。
さっきからコップを口からあまり離せていないのは、内心ではわりととても緊張していたからなのだが、それを悟られるのは癪なので、さも何でもないような顔をする。
思えば自分からこんな申し出をするのは初めてで。
断わられたらきっと思ったよりも落ち込むんだろうなぁと思いながらも相手の言葉を待って。]
……。
[頭を抱える様子から、反語のような肯定が返る過程をつぶさに見届けると、少し目元がほっとしたように和らいだ。]
…ありがと。うん、よろしく。
[コップを横に置いてから、何となく気恥ずかしくなるような台詞を口にしあった後、届いたデザートを前において(会話を聞かれたかもしれない店員には笑顔で押し通した)、スプーンを取る。
取ったまま、だがデザートは口にしない。]
[歯切れが悪い言葉の中に、あえて口にしなかった言葉がある。
オズワルドが気恥ずかしさから逃げるように親子丼を口に含んだタイミングで、にっこりと。]
好きよ、オズ。
[その言葉をとびきりの笑顔で言ってやった後、極上の味付けがされたデザートを一口、おいしそうに口にした*]
[微かな一音に、また彼の声が聞きたくなるけれど
揺れる甲板の上ということもあり自制する。
ささやかな照れ隠しにふっと目を細めた。
軽口は数知れず綴ってきたけれど
自身でも甘いと思える響きを向けるのはセルウィンだけ。
笑み零す彼の言葉に、僅か目を瞠る。
けれど言葉を返す前に口接け、開かれたくちびるの間に舌を挿しいれて
彼の舌をなぞり絡ませ甘露を味わう。
彼の甘さを堪能するうち、腰を抱く腕に僅か力が篭った。
首筋へと絡む手がくすぐったくも愛おしく
名残惜しむようにゆっくりとくちびるを離す頃には
セルウィンを見詰める眸に蕩けるような色が混じる。]
綺麗で可愛い恋人を心配するのは当然だろう。
[揶揄の響きなく、本心と知れる声を向ける。]
セルウィン、あいしてる。
――…ねぇ、キミは ……?
[期待と、微かに不安げな音色で問い掛ける。
尋問は得意としていたが、愛しいひとの前では形無しで
聞きたい言葉を促し、彼が言ってくれることを願うばかり。*]
………ルティ。おっまえなあ。
[食事に意識を振り分けかけたところに、
綺麗な笑みを向けられて、不覚にも額が熱くなった。
先刻から意味もなく傍の通路を行き来している店員、
あいつ絶対聞いてるだろ、間違いない。]
………俺は、
あとで、な。
[相手にしか伝わらぬほど、声を落とす。
自分の言葉は兎も角、彼女の反応まで
わざわざギャラリーにくれてやる趣味はない。
『恋人』に、どのようにして伝えようか。
上辺をなぞる戯れではなく、内側に届く本心を。
愉しい想像に想い馳せながら、今は『デート』の続きをしよう*]
……、は……
[長いキスの後、唇を解いたなら視線が絡む。
解かれた唇は2人の合間に落ちて、その場に馴染んで。
目の前に居るその姿を認めたなら、過去と現在が重なった。
彼の胸元に戻った、思い出が脳裏を過ぎる。
芽生えた感情は生まれたばかりだが、確かなものと感じて。
その想いを口にするより、数秒ばかり早く。
彼がその言葉を口にする。
そのタイミングに、思わず肩を震わせて笑いを堪えながら。
落ち着かせるように、軽く息を吸い込んで。
此方を窺う様子の彼を見上げた。
少しだけ踵を上げて、彼の耳元に口を寄せる。]
― それから ―
[本国に帰還したのち、フェリクスはすぐさまミヒャエルを部隊に招き入れて、"訓練"の続きができるように取り計らった。
寝食を共にできる環境を整え、仲間たちとも引きあわせ、慌ただしく動く日々がひと段落したある日、ミヒャエルに見せたいものがあると告げる。
共に暮らす部屋の中、テーブルに小箱がひとつ置かれていた。]
ファールア、見てくれ。
この間、作らせたんだ。
おまえに、じゃなくて悪いが……
[言いながら開けた小箱に収まっていたのは、月長石のイヤカフス。]
おまえと揃いのものが欲しかったんだ。
─── 似合うかな?
[照れ隠しに笑って、ミヒャエルの耳をつついた。]*
― それから ―
似合うよ。
[手づからイヤカフスをフェリクスの耳につけて頷く。
何より、その心が嬉しい。
これまで宝飾品など興味なさそうなフェリクスが、常に身につけてくれる月の雫。]
これは、特別のしるし。
[揃いのイヤカフスの内側に、互いに与えた名前と、初めての記念日を刻印するのだった。]
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