[>>*21音も立てずに近づいてきた少女は、かなりの実力者なのだろう。
薄らと浮かべられた笑顔には悪意は感じられない。]
…まぁ、それはそうなのですが。
[ワインの入ったグラスを傾ける、悠久の時を生きる少女。
一応、慰められているのだろうと思う。
けれどパーティーで強く残る印象がカスパルのやらかすポカというのは勘弁して欲しいものだが。
ここも騒ぐか、と言ったのが聞こえれば、僅かに目を見開くだろう。
ホストの反応をそっと窺った。*]
― 少し前 ―
ありがとう!
[>>1:166気にするな、と首を左右に振ってくれた彼女に礼を言って。
あくまで今の姿だから、と思っていて、目の前の彼女が同種族からさえ間違えられるとは考えもしていない。*]
[東の空の端が白む頃。
宴の幕引きの時間と相成れば、そろそろ飲む酒も尽きるだろう。]
さて、そろそろ我も帰るとするかぇ。
ギィは今年の主催、ご苦労であったな。
来年の集まりも楽しみにしておるよ。
[今年の主催であったギィと、
まだ未定な来年の主催へ期待の声をかけ。
館の外に出れば仮初の姿は崩れて
青白い鱗を纏った大蛇がその場に現れた。]
そう不機嫌な顔をするでないよ。
少しは楽しめたかぇ?
[外で待っていた膨れ面の主に細い音を立てて笑い、
宥めるように体に巻きつく。
そのまま主の魔法で、消えるように棲家へと戻っていった。*]
あ、……。
[他の参加者たちが覗きこむ水盤――別室で執り行われている
彼等の使い魔たちの宴――の様子は、やはり気になるもので。]
わ、 私も失礼してよろしいでしょうか?
[一言断りを入れて、自らも覗きこむ。
本能で動く、人の姿をした動物たちの宴は実に面白い。
くすっ、と笑みが漏れた。]
[好戦的に聞こえたか、側にいた者がぴくりと反応するのを愉しむと、ギィが応えるのを待たず、]
なに、ほんの戯れだの。
[と左の手を差し上げた。
小さな指先からぽろぽろ溢れるように体が崩れ、無数の蝙蝠に変じたかと思うと、それらは瞬く間に集まり、大きな金の塊を作り上げた。
のさりとそれが頭をもたげる。
金の体毛に金の目をした、大狼だ。
つまりは彼女の使い魔の姿。]
このようなのも、悪くなかろ?
[くつくつと笑うと、鼻先を主催者に向けた。]
貴女が騒ぐとなれば、真剣に館の再建を考えねばならなくなるな。
[騒ぐか、などと嘯く幼形の永世者に視線をやり、
彼女が体を金の狼に作り替えるのを見れば、喉奥で笑った。]
―――ああ。それも悪くない。
[応じた言葉が空気に溶けるよりも早く、
体が薄れ、揺らいで薄闇の霧に変じる。
渦を巻いたそれが収縮し、現れるのは漆黒の翼広げた鴉の形。]
ここが定位置だったか。
[ばさり。
羽音を一つ鳴らして、金狼の頭に舞い降りる。]
[ギィとドロシーがそれぞれの使い魔…黒い烏と金の狼の姿を取るのを見れば目を細めて喉を鳴らし。]
−これは壮観。
[グラスを傾けて鑑賞する。
気が向けば、自分も変化してみようか。
気は2(6x1)
奇・偶:向かない・向いた]
[酔いの勢いでか、レナルドは使い魔の飛竜の姿を取る事にした。
身体が陽炎のように歪み、一陣の風が吹き抜けば、そこに現れるのは貴族の青年ではなく若い雄の飛竜。
体色が銀朱の飛竜は悠々と長い首を巡らし、挨拶代わりに咆哮を上げた。
この青年には珍しい、ちょっとしたはめ外し。*]
ふわぁ……
[金色の狼、漆黒の烏、銀朱の竜。
変り身をした荘厳なる光景に息を飲み、畏敬の視線を向けていた。
ただし水盤の影にしっかり隠れている。*]
[ばさ、とひとつの羽音と共に、頭の上に艶やかな漆黒の翼を持つ大狼が舞い降りる。]
ふむ。存外、重いの。
[独りごちたら、一陣の風が吹き抜けた。
ぴくりと耳を動かし風の来る方向へ向けば、銀朱の鱗を輝かせる飛竜。
挨拶だろうか、長い首を巡らせ咆哮をあげる姿はなかなか間近では見られぬ姿だ。
ゆったりとした空間だったが、手狭い状態になっている。
ぐる、と喉を鳴らしそちらに近づけば、水盤の影に隠れる若き魔女が視界に入って、]
そちは変わらぬのか?
[などと顔を近づけてみる。]
[どこか幻想的な光景に見惚れていると、
水盤へと近づいてきた金狼と視線が合ってしまった。]
わ、私、はっ!?
その……ま、まだうまくできなく、て。
いつも失敗しては怒られるの…です。
[緊張にどもりながら返した。
変化の術は大の苦手で。
生まれた時から共にいる大蛇への変化すらうまくいかずに、
1mにも満たない子蛇になってしまうのだった。]
−ふむ。存外悪くはないな。
[…などと呟く何処か満足げな響きを感じさせる声は、竜のものだっただろうか。
この際だと尻尾や羽を動かしてみる様子は好奇心に満ちていた。*]
[うまくできない、と言う少女に鼻先を押し付ける。]
失敗など気にせぬことよ。
――良き師がいるようだの。
[初々しさは新鮮だ。目を細めていると、突風が体を打った。
飛竜がどこか珍しげに羽や尾を動かしている。
ひとつ動かす度に大風が起きる。]
この部屋も荒れおるの。
[自らも調度品をころんと転がしながら、愉快げに笑い声をあげた。]
……は、はいっ。
がんばります。
[押し付けられた鼻先は温かかった。
かけられた言葉にこくこくと頷く。
それから部屋で起きる騒動については、
水盤を盾にしながらも少しは楽しむ気持ちが持てただろうか。*]
− 宴の終わり −
[時計がパーティーの終わりが近い事を示す頃、変化を解いたレナルドはグラスに残っていたワインを呷り。]
ふむ、もうそろそろか…。
[今年は平和だったような気がする。
…途中までは。
自分も羽目を外してしまったのは使い魔には内緒だ。
うっかり調度品を倒してしまった事についての謝罪は変化を解いた際に済ませていた。]
それでは、これで失礼致します。また来年に。
[流れるような動作で一礼すれば、使い魔達の会場の方へと足を向ける。
あれはきっと時間ぎりぎりまでそこにいるだろうから。]
[重い鐘の音が鳴る。]
おぉ、終いか。
つい長居してもうたの。
[暇を告げると、その姿のまま集っていた間を後にし、使い魔のパーティ会場に現れた。
そのまま端で眠りこけているスコルを咥えて、屋敷を出る。
口を離すと同時に、その姿は少女のものから、金の狼に戻った。]
[鐘が鳴り、館を出ればハロウィンの魔法は解けて、青年はワイバーンの姿に戻る。
その刻限はあと少し。]
あは、もうすぐ終わりかぁ。
早いよねぇ、本当。色々あったけど楽しかったな。
[今年もやらかしたトラブルメーカーはへらりと笑って他の使い魔達にそう言った。]
はーい!
[主人の姿を目に収めれば、喜び勇んで主人の元へと向かう。
そしてくるりと回って振り返れば]
それじゃあ、また来年も宜しくねー。
[にこやかな笑顔を浮かべると、場にいた使い魔達に手を振ってその場を後にした。*]
[廊下では、主人と使い魔の賑やかなやり取りが繰り広げられただろう。
やがて館の外に出れば、使い魔は銀朱の体色をしたあるべき姿に戻り。
主人がその巨大な背中に跨って手綱を取り、出発を命じれば、
飛竜は翼をはためかせ、夜空へと飛び立つ。
主人の住まう館へ戻る道中に交わされるやり取りは、離れていた時間を埋めるもの。
時折叱責する言葉が聞こえて、ゆらりと進路が歪むかもしれないが、それはいつもの事。*]
[そろそろ今年のハロウィンも終わりが近づいていた。]
ギィさん、本日はお招きいただきありがとうございました。
[主催であるギィに恭しく一礼をし、
他の参加者にも軽く挨拶を済ませる。
ツィスカを迎えに別室を覗けば、
そこでは未だ騒がしいパーティが繰り広げられていただろうか。]
……ふふっ。
随分と楽しそうね。
でも、そろそろ魔法が解ける時間よ?
[別室に居る自分の姿をした使い魔は、はっとしたようにこちらを見た。]
ご主人様――……!
……って、あっ、もうこんな時間……!
[言うが早いか、ぽんっ、と軽い音と共にハロウィンの魔法は解けて
元の鼠の姿へと。
――ある程度の体格差はあれど。
パーティの間は使い魔たちはそれぞれヒトガタへと化けている。
しかし元の姿に戻ってしまえば
天井に頭がつかえるほど巨大なものまでざらにいるのだ。
真っ青になってダッと一目散に主の元へ駆けていく。]
時間も忘れちゃった?
[その様子に、くすくす、と可笑しそうに笑って。
使い魔たちにも会釈をして会場を後にするのだった**]
もうお別れの時間なんだね。
楽しかったよ、 皆、気をつけて帰ってねー
[双眸に、キラキラと歓びと氷雪の煌めきを宿して手を振る。]
[目が覚めれば、頭がかきんかきんと痛かった。]
あれ……?ここどこ?
[顔をあげれば、鏡写しのような姿がそこに。]
「楽しかったかの?」
[一度口を開けば、それが主だとすぐにわかった。
こくこくと頷いて尾を振れば、満足そうに笑った主はそのまま駆け出した。
まだ頭はきんきんと悲鳴をあげていたけれど、その後を追って、すぐに並んで一緒に走る。
夜が明けるまでに、家に帰れるだろう。
金の毛をなびかせて、二匹の大狼が走っていく。*]
[浮かれ騒ぐ時は過ぎ行き、明けの鐘が祭りの終わりを告げる。
それぞれに帰っていく参加者らを見送る吸血鬼の肩には鴉。]
来年はもっと騒ぐぞ。
壁に穴空くくらい大騒ぎだぞ。
[カァァ、と笑うがごとき鳴き声を上げて羽ばたく。
この鴉、ホストでなければ騒ぎを大きくするほうに傾注していただろう。
来年はそれがいかんなく発揮される、かどうかは未だ不明だが。]
[万魔節の夜が明ければ、魔の時間は終わり。
暫くはゆるりと眠ろうか、と呟く主の肩の上で、
鴉は一つ、大きな欠伸をした***]
わたしの
よほど好い経験をしたようだな。
[宴がひけて現れた主は、ジー・クムン・トと同じ貌でありながら、冷たく透き通る声をしていた。]
ここに残りたいか?
[ジー・クムン・トが首を横に振って寄り添えば、凍り付くほどの美貌をほのかに綻ばせる。]
紅卿、 よい余興であったよ。
そなたの心が許すならば、我が居城へ来るといい。
歓待しようほどに。
[囁き、銀の裾を翻した。**]