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別に考えただけでまだなんもしてねーし。
それに、わけわかんねえけど透明になっちまったんなら、せっかくなら楽しまねえと損だろ?
だから透明じゃねえとできないことを考えてだな。
あ。じゃあ、泳ぐか。
[一度、あの大きな湯船で泳いでみたかった。]
[ 口では素直に答えたけれど、
ちょ…っ、 そこ
[ 抱えられる姿勢を居心地よくしようと、じたばたしているうちに、気を持ち直す。 ]
順応性が高いな。
おまえのようなのを部下に欲しいものだ。
ま、人様に迷惑の掛からないよう楽しめ。
泳ぐなら、温水プールに行けばいいだろうに。
温水プール、ってのは泳ぐところなんだろ?
普段泳がない所で泳ぐのが、こういう時の醍醐味ってやつじゃねえか。
まあ心配ねえよ。
得物は預けろってうるさくて、手元に無いからな。
[人様に迷惑、というのはつまりそういうレベルの話らしい。]
[抱えているうちにだいたい体の形が分かってきたから、適当に持ち変える。
ひとしきり動かして、ようやくちゃんと抱き上げる形になったところで、今度は降りると主張された。]
いいのか?
離したらまた居場所が分からなくなるぞ?
[聞いておいて、あっさりと降ろす。
あまつさえ、素早く後ろに下がって距離を置いた。]
ふむ、逸脱を好みつつも聞く耳はもつ、といった性格らしい。
部下にほしいと言ったが、むしろおまえは人の上に立つ人間のようだな。
適当なところで元に戻れるよう祈っているぞ。
[ 接触状態を保っていなければ、互いの居場所がわからなくなると指摘され、直後に実際そうなって、焦った。
とっさに枕をとって彼がいそうな場所に投げてみたが、弾(?)数は限られているし、下手なところにぶつけると備品を壊しかねないと冷静になる。 ]
[ 視界を外れたところから彼の声が、次の指示を告げた。
ドアが開いて閉じてから、1分ほど時間をおいた。
待っている、と言われるのは、なんだか嬉しい。
到着時刻は指定されなかったから、ちょっと待たせてみようか、などという気持ちも過ぎったけれど、やっぱり早く会いたくなって、荷物から水着とウォーターシューズを取り出すと装着する。それも消えた。 ]
[ 廊下を覗いたら、空調がきいていてちょっと肌寒かったので、部屋にもどって水着の上からバスローブをはおった。
フェイスタオルにくるんで、ラバーナイフも持ってゆく。水中戦だと言っていたし。 ]
[ 動く人の姿がないホテル内は、やけに閑散として見えたが、時折、何かの物音がしたり、人の声が聞こえたような気もする。
何故か足音をしのばせて、そこを通り過ぎた。 ]
[扉を開けて、閉めて、そのまま部屋の隅にいた。
水着が出たり、消えたりするさまを眺めながら扉の脇にうずくまっている。
姿を変える微かな気配は察知されないだろう、と思う。
扉が開いた瞬間に、するりと先に出た。
足元の高さに風が流れる。]
[匂いを嗅ぎつつ、耳をそばだてつつ、移動する気配の後について行く。
扉があれば必ず先に立ち、開いた瞬間に足元を抜けていく。
猫のように爪は引っ込まないが、足音を忍ばせる術は身についていた。]
[姿の見えない相手の追跡はさすがに初めてで、面白い。
流れる温水プールについたところで、先に湯に飛び込んだ。
とぽん、と綺麗な水柱が上がる。]
[ ずっと観察されていたと気づくこともなく、温水プールに到着する。
飛び込みでもしたらしい水柱が上がるのを見ながら、バスローブを脱いで椅子の背にかける。 ]
他に誰もいないか確認してあるのか?
[ 問いを投げかけながら、ストレッチ運動。 ]
[しばらく潜水してから顔を出せば、椅子の背にバスローブが出現したところだった。]
周囲に他の気配はないな。
今のところは二人きりだ。
[風の匂いを嗅いでから保証する。
他の人間と巻き込んだりしたら困るから、確認するのは正しい。
よく気が付いたなと満足の顔になった。]
[ 声がした。
周囲の安全保障と、そこにいるのが彼だという保証を同時に得られて嬉しい。
おまけに、開放的な温水プールという環境だ。
心が弾む。 ]
[ 相手が飛び込んだ水柱と、水中を移動しながら溢れる泡が見えた。
まだ獣だなと分析する。 ]
了解。
[ 答えながら、まずはプールサイドに腰掛けて、爪先を水面につけてみる。
温水とはいっても、やはり風呂とは違う。
長いことつかれば体温を奪われて体力を消耗するだろう。
短期決戦がいい。
一方で、獣モードの彼の動きも、地上ほど素早くはないのではないかと予測する。
潜水が終われば、位置もわかりそうだし。
そこに一気に飛びかかろうかと、飛び込み台に移動して機会をうかがった。 ]
[ 待っていると、水面が揺れた。
たぶん、息が続かなくなって顔を出したんだろう。
そう判断すると、両手を広げて前方を抱え込むようにプールに飛び込む。
飛び込みのスタイルから外れているから多少、着水の衝撃が強くなるのは承知の上。
あと、頭から突っ込んでも受け止めてくれるんじゃないかなって期待したけど、自分が透明化しているのを忘れてた。 ]
[ アイスティーにレモンが浮かんでいる。
傍の皿にはパンケーキ。
メイプルシロップがたっぷり。
サクリと切れ目が入って、三角形が消えた。 ]
[立てた尾の後ろで水を蹴って、少し先で頭を出す。
背後で派手な水しぶきが上がった。
すぐさま反転して水しぶきを追うように頭から突っ込む。
何かに触れたら抱き着いてしまおう。]
ぶわっ!
[ 案に相違して、両手は水を抱いただけだった。
水中で泡が渦を巻くのが見えたと思った次の瞬間には、ぬくもりを備えた質量に押される。
捕まえた、ではなく捕まえられたみたいだ。
体をひねって足を絡めようとする。
なんとか捕まえたという体勢に持ち込みたい。 ]
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