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驚いたよ。
こんなところに人がいるなんて。
[視線を走らせて周囲を素早く観察する。
他に隠れている人間はいなさそうだ。]
ギィだ。
君に出会えた幸運に感謝しよう。
[胸に手を当てて、軽く腰を折ってみせた。*]
[ 快諾の返事とともに、森の闇から男が姿を現す。
頭が二つあったり、腕が4本あったりはしなかったが、
どこか異質な感じがした。
なんというか、服装も顔もきれいすぎる。
少なくとも自分のようにこの密林で何十日も過ごしているわけではないだろう。
そのくせ、歩み寄る姿は無防備な散策の態で、それが却って怪しかった。]
[ 場違いな感じがするほど紳士的な挨拶をされたので、相応の礼儀で応える。
もはや階級も何もあったものではないと思うが、習い性だ。]
俺はウーヴェ。
よい時を過ごされるよう。
この森で人間に会うのは初めてか ?
[ 焚き火を挟んだ反対側の場所に座るよう促しながら情報収集の問いを投げてみる。*]
[観察されているのを感じたが、それはお互い様だ。
男は、しばらく文明社会から離れているような風体をしていたが、言葉と所作は貴顕のそれだった。
なぜ彼がこんなところにいるのか、ふと興味が湧く。]
人間に出会ったのは君が初めてだよ。
奇妙な動植物ならいくつも目にしてきた。
この森は興味深いね。
まるで異界だ。
[勧められて、差し向かいに腰を下ろす。
片膝を立てて座って、炎越しにウーヴェと名乗る彼の瞳を眺めた。]
[ 怪しまれているのは感じ取ったろうが、ギィはそれに反応することなく、当然のように話を続ける。
ある意味、似た部分があるのかもしれない。
もっとも、"冷血"と呼ばれた自分より、ギィの方が随分と愛想も機嫌も良さそうだった。]
そうか…、やはり人間の暮らす土地ではないのだな。
[ 奇妙な動植物、異界、といった表現から、ギィもまたこの世界には馴染みがないのだとわかった。]
ここに住んでいる── というべきか、滞在を余儀なくされている。
夜露はしのげるし、野宿よりは安全だと思う。
[ 巨石が作り出した庇の下のねぐらを一瞥する。]
俺は洞窟や地下水路を通ってこの森に流れ着いた。
貴君は ?
[ 互いの存在を確かめあうような質問の交換だが、しゃべる相手がいることで郷愁めいたものも感じる。
ここで朽ち果てるつもりはない。*]
[人間の住む土地では無いと知って、彼は落胆したのだろうか。
大きくは動かない表情から、心情を読み取ろうと試みる。
絶望しているという感じはしない。
生きるために力を尽くしているのは、この拠点を見れば分かる。]
君には森で生きる才能がありそうだ。
[危険な生き物も徘徊するこの森で、よく生き延びてきたものだと素直に感心する。]
私は、友人と狩りをしていたのだのだけれどもね。
別れた後ひとりで散策していたら、いつのまにかここに来ていたよ。
[虚実を取り混ぜて、経緯を説明する。
狩りの会場であるこの谷へは空間を渡ってやってきたから、彼の言う洞窟は通っていない。]
地下水路を流されたというなら、同じ道で帰るわけにもいかないかな。
他の道は探したかい?
[周囲から隔絶された谷というこということであったし、まっとうな道は無いのかもしれない。
自身が帰る方法ならばいくらでもあるので、そちらの心配はしていなかった。
ただ彼がどう感じているのかを知りたくて、問いを重ねる。*]
[ 森で生きる才能があると言われて、苦笑した。]
褒めてくれているのだろうが、
できるなら平和な場所で別の才能を発揮したいものだな。
もう56日も探索しているが、この谷から出られる方法がない。
[ 彼と友人はこの森で狩りをしていたという。
口ぶりからして遭難したわけではないようだ。
わざわざこんなところまで出向いて狩りとはと思うが、何より今は、]
貴君の支援を求めたいところだ。
56日も。
[二ヶ月近くも彼はここで過ごしているのだという。
生きる力が無ければ数日と経たずに屍をさらし、心が強靱でなければ無為と孤独に挫かれていた事だろう。
彼はどちらをも持っていた。
未開の、未知の森で生き延びるばかりか、自力で帰還することを諦めていない。
極限の状況に置かれてなお品性を失わず、懇願するでも威圧するでもなくただ支援を求めたいという。
そんな彼をもっと知りたい。
彼の奥深くに触れてかき回してさらけ出させてみたい。
単なる獲物には抱くことのない感情を掻き立てられる。
自然と、軽く身体を乗り出していた。]
もちろん。
私に出来ることならば、惜しまないよ。
[今すぐ攫っていきたい欲と、もっと彼を知りたい欲がせめぎ合って、後者が勝る。
彼がここでどう生きてきたのか、見てみたい。]
とはいえ、私も帰り道を教えられるかはわからない。
ここへ至るまでに超常の道を辿ったようだから。
[嘘でもないが本当でもない。
本心を隠して笑みをつくる。]
[ 可能な限り支援の手を貸すとギィは言うものの、続けて胡乱なことを言い出す。]
…友人とやらに置いていかれたのか ?
供はどうした ?
[ 差し出された手に、素焼きのカップを渡す。
中身は川で捕まえた魚を煮たスープだ。
土器は水が洩らなくなるまで試行錯誤を繰り返した。
できる限りのおもてなしである。*]
[伸ばした手に器が載せられた。
土の色をした素朴なカップから湯気が立っている。]
これはご馳走だね。
いただこう。
[皮肉抜きに応じてカップを口元に運ぶ。]
温かいな。
こんな場所でいただくスープは、身体に染みるようだよ。
[回し飲むかと、口をつけたカップを彼に差し出してみる。]
社交界の友人など、そんなものだろう?
いや、置いていかれてわけではないよ。
私が勝手に離れたんだ。
無為な狩りは気疲れするからね。
少し一人になりたくて、供も先に帰した。
[経緯を語ってから、悪戯な笑みを閃かせる。]
今頃慌てているだろうな。
[叱られるのが自分ではないので、気楽なものである。*]
[ ギィは口をつけたカップを返してくる。
さほど空腹でないのだろうが、あくまでも礼儀正しい。
素朴なことこの上ない食事が、彼にかかると優雅な酒宴のようだった。]
ふ、貴君といると、ここがどこだか忘れそうになる。
[ 受け取って、残りのスープを飲んだ。
腹が温かくなったのは、スープのせいだけでもあるまい。]
[ 社交界の友人云々には回答を避けた。
友人は選べと諭す立場でもない── 元許嫁にハメられてここに流れ着いた身としてはなおさら。]
捜索隊が出そうなら、居場所をわかりやすくして動かないのが得策だろうな。
俺としても、交代で眠れるのは大層ありがたい。
[ 今のところ、頼みたい支援はそれだと伝えた。*]
[同じ器から同じものを飲むだけで、距離が近づいた気がする。
彼もいくらか寛いだ様子を見せていた。
他者との会話も56日ぶりなのだろうか。
孤独の果ての邂逅と思えば、愛しくもなる。]
一人では満足に眠るのも難しかったのだろうね。
私は夜が遅い方だから、先に寝てしまうといい。
君の安眠は、私が名誉にかけて守るよ。
[捜索隊については頷くに留め、冗談めかして休むよう勧める。*]
[ 夜が遅い方だから、などと、この状況で口にできるギィはどこまで通常モードなのだろうか。
自分の初日はこんなものではなかったが。
名誉にかけて守るとまで言われたからには、四の五の言わずに横になろう。]
火は絶やさないようにしてくれ。
薪は後ろに集めてある。
腹が空いたらこれを。
[ 木の実をいくつか葉の上に置いて出した。]
モンスターの襲撃を警戒せずに寝られるのは本当にありがた…い。
[ 手製の槍を枕としても使い回して、目を閉じた。*]
[いくつか指示を残したあと、彼は横になる。
これまでよほど気を張り詰めていたのだろう。語尾が縺れて、そのまま寝息に変わったようだった。]
……おやすみ。
[そっと布をかけるように言葉を置く。
それから座り直して、密林の方へと視線を向けた。
闇に沈む木々の向こうは、相変わらず命の気配に満ちている。
驚異に溢れたこの世界をもう少し堪能したいような、彼を伴って早く帰還したいような。揺らぐ気持ちを夜の空気に遊ばせていた。]
[日が昇り、空は明るくなってきたけれど、生い茂る木々に阻まれて地上はまだ暗い。
鳥たちが目覚め始めたのか、賑やかな囀りも聞こえてくる。
ウーヴェが自然に起きてくるまで、外を眺めていた。
焚火はといえば、燃えさしの中に表面だけ焼けた枝が突っ込まれていたりして……たぶんまだ燠火くらいは残っているだろう。*]
[ 一日のうちでもっとも冷え込む時間帯ではあるが、ことさらにそう感じたのは、火が落ちかけているせいだ。]
しまった… !
[ 何故こんなに深く寝てしまったのかと飛び起きて、その原因を見出す。
そうだ、ギィがいたんじゃないか。]
[ 別段、不思議でもなかったが、貴族の子弟らしき彼は火の番のやり方など知らないのだろう。]
おはよう。
[ 火が消えれば、密林生活はたいそうな後退だ。
焦ってはいたが、眠らせてもらった借りがあるから、冷静に挨拶をする。]
休ませてくれてありがとう。
今度は貴君が寝る番だな。
[ 木っ端を集めて火に勢いを戻そうと働きかけつつ、自分の体温で温まっている場所をギィに譲った。*]
[背後から聞こえてくる彼の呼吸が、眠りから浮上してくる。
覚醒の吐息が聞こえた時には意識だけを振り向けたが、飛び起きる声には顔ごと振り返った。]
おはよう。
よく眠れたかい?
[挨拶を返し、彼のために場所を空ける。]
あいにくの有様ですまないね。
どうも私は火に好かれないようだ。
[火を蘇らせようと奮闘する彼の作業を、すぐ側で見守った。]
どうも興奮しているのか、寝付けそうにないな。
眠くなったら寝るから、気にしないでおくれ。
[そもそも睡眠が不必要なのをさておいて、心配は無用だと伝える。]
なにか必要な作業があればしようか?
私に出来る範囲で。
[このまま彼を眺めていても楽しいのだけれども、一応殊勝な態度をみせてみた。*]
村の設定が変更されました。
[ ギィは殊勝に謝罪の言葉を口にしたが、次から努力するという意気込みでもなさそうだ。
鷹揚な性格とみえる。
寝付けそうにないので起きているという主張にも、無理強いはしないでおいた。]
俺は川に行ってくる。
貴君はここに残って、この石皿で木の実を割っていてくれ。
[ 邪険にしているつもりはない。
川での沐浴も洗濯も、まだギィには必要なさそうだと思っただけだ。
生き返った火にあえて生木をくべて、狼煙の代わりにしておく。*]
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