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今日は犠牲者がいないようだ。人狼は襲撃に失敗したのだろうか?
現在の生存者は、語り手 、次期領主 ディーター、政務官 ベルティルデの3名。
[―――朝霧、手紙、風の声]
ベルティ。
[来週には第七、第八、両領土による、最後の合併が行われれる。
報せを受け、良き友を思っては]
君は、今頃、
[遠い地の、気のおけない女性に向け
息を白く烟らせながら]
まだ独身者なのだな?
……ふ、ふふふ。
お先に失礼、だ!
[些細なことでも、順番は大事。
その友と文を交わすことも出来ないことは、残念ではあったが。]
[窓から仰ぐ空は、淡い白。
その切れ間に、青を見ることができたなら]
……平和だなぁ。
[頂いた文に返事をすることも、考えてはいるが
相手方が成婚直後で忙しくないかを心配したり、
――正直言うと、自分自身が舞い上がって、
言葉が浮かばないのも、ある。]
[ひょこり、顔を出した政務室。
政治面での心配事も、様々あるのだが、
祖父の方針で政務をさせてもらえない]
父上。
たまには私が、茶でも淹れようか?
いらない? あ、そう。
[男勝りに生きてきたラートリーは
家事のセンスがとにかくなかった。
無自覚なのが、恐ろしいところで。]
……茶くらい、淹れさせてくれてもいいのにな。
[そんなラートリーに、新郎は苦労するだろうか。
それはまた、先のお話と、して。]
[合併に伴う婚姻の知らせに、家としての祝いは贈ったものの、個人としてはまだ連絡はしていない。
ギィ自身と同じように、結婚となったものの、まだ顔を合わせてないのを知っているから。
もう少ししたら、個人的にお祝いを贈ろう。
ヴェールの刺繍。その最後の仕上げをしつつ、考えていた。]
できた。
[白に白を重ねた刺繍。
本当に完成したのかと、目の高さに持ち上げて、じっと眺める事しばし。
大丈夫、できてる。
何度も何度も見た図案のままだ。
白い百合をヴェールの裾に。]
……間に合った。
[安堵と共に息を吐き出す。
どうせなら良いものをと、じっくり丁寧にやりすぎた。
このままだと間に合わぬのではないかと、ここ数日、刺繍に専念していたのだ。
これで準備は一通り終わった。
花嫁衣裳も試着してみたが、どうやって知ったのだろうかと思うほど、どこも直す必要は無かった。
準備は終わり。]
……もうすぐ、会えるのだよな。
[婚礼。もうすぐ、会える。
会えると思えば逆の不安が湧いてくる。
昔、アプサラスに会った際は、ギィは常に男の格好をしていて、今よりも表情はおとなしかった。
冷静な騎士。オズの言葉を借りれば「気障」だった。
でも今は違う。
表情も仕草も、豊かになった気がする。
今更ながら――違いに嫌がられないだろうかと。
本当に、今更の不安。
嫌われるのが嫌だと考える時点で、心はだいぶ彼女に傾いている。]
[淡水と海水の真珠。
耳元と首を飾る花嫁衣裳の装飾は、オベルジーヌでも南方の富を象徴する輝き。
他の宝石とは違い、一代限りで後へは続かぬ束の間の輝きを、涙や一途な思いに見立てることも多い。
さすがに外つ国の伝説のように、美容のために真珠を酢で溶かして飲む、などといった真似は出来そうにもないけれど。
市井の民では手に出来ない装飾であり、領主の血族である以上は相応の振る舞いの一つとして求められる、装い。]
[自らの婚約者が、後嗣のお披露目で居心地が悪そうにしていたのを思い出すと、小さな笑いが零れた。]
ディーター様は、ああいった場はあまりお好きではないようだったみたいね。
[話すのも、聞くのも、今は鏡の中の自分だけ。]
私は、かしこまった場は緊張はしても嫌いではないから、きっとお役に立てるのではないかしら?
[既に、婚姻の報は国中に広がっている。
戸惑いはあるが、嫌ではない。
不思議な心地だった。
胸を内側から叩くような、そんな高揚感。
不安ではなく、きっと期待だと呼ぶのだと、半ば確信していた。]
[もしも、他の人が相手であったならば、こんな気持ちになっていただろうか。
仮定を考えても、答えはいつも出てはこない。
けれど、たったひとつ、自分を動かしたものがあるのなら。
最初に貰った、手紙を広げた。
指先で、そっと撫でた、一言。]
[最近は白一色の花嫁衣裳が流行だと聞くが、果たして彼の地で用意されているのはどうであろうか。
伝統の、白地のドレスの上に黒い上着を羽織り、赤の刺繍が施されたものも美しい。
ベールの縁取りは金糸か銀糸か。
社交会の華のような艶やかさにも、
妖精のような舞の名手の美しさにも、
凛と背を張った友の潔さにも、
適わないとしても。]
…もうすぐ、あの人の隣に立つのだわ。
[それは、嬉しい真実。]
[あれからいくつもの朝と夜を繰り返し、
アデルの住まう搭は少しずつ荷物の整理がされていた。
空ばかりを見上げていた視線は、
今は足元を見据えている。]
……この搭とも、もうすぐお別れだな。
[住まいとしては残しておくつもりでいるが、新婚夫婦が暮らすには少々どころでなく情緒が足りない。
それに――いつか、ずっと先の将来はともかくとして。
結婚したはじめの数年は、二人で暮らしたい。
なんて。貞淑と一途を善とする国民らしいことを夢見ている。]
[否、夢見るだけでなく現実となるよう準備を進めている。
例えば、代々ヴェステンフルス家に仕えている給仕に茶の淹れ方を教わったり、料理を習ったり。
――…決して、彼女の家事能力を低くみているのではない。
見かけによらず乙女だという友人からの見解は正しいと思っている。
ダンスでも、何でもそうだ。
始めは下手くそだったりうまくいかないこともあるだろう。
10年という埋められない年齢差が生む溝だって或いは。]
ラートリー様は何がお好きだろう?
[手紙で聞けばいい話だがそれをせずにこの数週間を過ごしたのは――想いを文字にすればすぐに、"会いたい"という四文字に収束してしまうから。
けれどそれも、もうすぐ終わりだ。
ならばと、アデルは久しぶりに机に向かう。]
さぁ、出来た。
[私はヴェールではなく、ハンカチーフを机に置いて息を吐く。
複雑な模様ではなく、単純な二つのイニシャルを絡めたものは
ヴェールよりも時間は短くて済むけれど。
贈り物なのだから丁寧さは同じもの。
友人の分、恩人への分と数枚作り終えて身体を伸ばし
暖かな紅茶を飲めば固まっていた身体が解れていった。]
どうか皆さまお幸せに。
[例え王命でも。政治的な策から生まれた婚姻だとしても。
結ばれたなら二人と領民たちの幸福を願わずにいられない。]
ギレーヌ様から!?
[伸びをして緊張を解しているところをノックされて、
私は慌てて椅子から離れます。
少し音を立ててしまったことを聞き咎められて
何故か手紙を持ってきたばあやにちょっとお小言を言われて
しまいました。
浮かれてばかりではいけませんと手厳しい声に
はい、と返事だけは一人前。
心は手紙だけを思っています。]
[一人に戻った部屋で急いで開いた手紙から、
ギレーヌ様の色付いた心が私の手に零れ落ちてきました。
まずそれを握りしめたまま私は読み進めます。
私の顔は赤くなったり目を塞いでしまったりと
忙しくてなりません。
先のシンプルな手紙とは違う長い手紙はギレーヌ様と
お喋りとしているようで、嬉しくて嬉しくて。
読み返すときには掌に握りしめていたそれを私の前に置いて、
私はカップに新たに紅茶を注ぎ直して差し出しました。]
ギレーヌ様はどんなお茶がお好きかしら。
[長い手紙を私は声を出して読み上げます。
一部恥ずかしくてどもってしまったけど。
それも嬉しくて楽しくて。
ちょっと躊躇う内容もあったけれど私にはそれも喜ばしい出来事。
ギレーヌ様のお心を傍に置いて、私は返事を書き出しました。]
[返事を書き終わると、私は机の上に広げて飾っていた扇子の前に
宝石箱を置くと、ギレーヌ様からの贈り物をそっと飾りました。
少しずつ増えていくギレーヌ様からの贈り物に笑みが絶えません。]
アデル様にもお礼をしないと。
[ちょっと恥ずかしい事もありましたが、アデル様への
お礼は必要です。
私の返礼の品を考えて、出来ていたハンカチーフに手を伸ばしました。]
[手にしたハンカチーフにはモチーフが一つ足されました。
他のハンカチーフにも一つずつモチーフを付け足して
夜は更けていきました。]
[独身最後なのだから、と幾日か休みをもらう。
だから忙しい、のではなく、休みをくれるのが七領らしい。
ぶらぶらと朝から釣りをして、日が昇れば市場で食事をして、みなに祝福と囃し声をもらって。
女性にはこういうふうに接したらいいですよ、
こんなことはしてはいけませんよ、
いやいや、それよりここを気を付けるべき、なんてみんなが思い思いのアドバイスをくれるのに苦笑する。]
俺なりに、気を付けるよ、みんなありがとな。
たまに花を贈って、口答えをしないで、毎朝ほめて、ときにはガツンと言って、常に後ろを歩かせて……
あとなんだ?
[前半は女性から、後半は男性からのアドバイス。みんな勝手なことを言いつつも、それぞれが幸せそうな夫婦に見えて、今はまぶしい。]
[あくる日、王城から実に畏まった仰々しい調印書が届いた。
難しい顔を晒してしまうのは致し方ない。
二つ折りの革で出来た用箋挟の内には、未来が収められている。]
……人生ってのは何が起こるか分からんものだな。
昨年の俺に言ってみろよ、爆笑ものだぜ。
[隣領の嬢ちゃんを、これから先、妻と呼ぶことになるなど。
つい、半笑いで誤魔化してしまうのは、先日送った手紙が原因。
幾ら本心とはいえ、三十路峠の見える身であの文面は、
我ながら落ち着きを忘れさせてくれる。
―――― 無論、文字に頼らぬ返信も一役買って。]
嬢ちゃんが今、16だから――…、20を越えるのは4年後か。
あっと言う間であるようにも思うが、
その頃にはもう少し夫婦らしくなっているだろう。
[第三領と第四領は合併し、土地が拡がり、豊かになる。
最初は横暴だと少なからず感じていた王命も、
今は真面目に彼女との生き方を模索しているのだから、
何事においても切っ掛けと云うのは重要だ。]
……嬢ちゃん、嬢ちゃんな。
――――…いや、もう、シルキーか。
[慣れた呼び名を人知れず改めて、置くのは無言の間。]
………、……。
……………………、
――――…照れ臭ぇ…、やっぱり暫く無しだ!
[首筋を雑に手首で拭い、用箋挟を宙に放り出す。
くるりと運命のように翻り、開帳のまま執務机に落下。
王城から届けられた証明書には、未来が記されている。]
[『オズワルド・フェルマー
シルキー・フォン・アウスレーゼ
――――― 両名の婚姻成立を此処に認める。』
そんな、番う二羽の未来が記されている。]
あ、仕立て屋に行くんだった、店主が張り切ってくれてね
[先週依頼をしたら、結婚式までには絶対間に合わせますよ、と言ってくれた注文の服を取りに行く。
式のための服も、伝統的なものから最近はやりのものまで、何着か揃えているらしい。
めでたく、こんなときこそ、という気持ちもあるが、あまり経済状況が芳しくないこともあり、そこまで派手なことはしないはずだが。
そんな畏まった服ではなく。
今会ってきた町民たちが着ているような、簡素だけれど丈夫な服を。]
おっす、注文の品できてる?
[仕立て屋に入っていくと、きれいな赤いスカートと、白いブラウス、革のジャケットにブーツを揃えたマネキンが目に入る。]
……おお。
時間なかったのに、ありがとうな。
[仕立て屋連中で頑張りましたよ、と親父がにこにことしてマネキンに帽子をかぶせる。]
喜んでくれるといいな。
[プレゼントは、もっと宝石や花のほうがよかったのだろうか、なんて先ほどの話を思い出しながらも。
これを着たベルを連れて、領内を歩く日が楽しみになる。
だからきっと、喜んでくれるはず、と一つうなずいて。
包装は簡単に、汚れから守る程度にしてもらって、服を抱えて屋敷へ帰る。]
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