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……。
[ 再び言葉の使い方を忘れてしまったように、
ヴィンセントの顔を黙って琥珀の目で見上げる。
血の気の薄い頬やくちびる。
整えられた髪。
きれいな人だな、ともう一度思った。
指摘はそうかもしれない、と思いつつも、
自分でも驚くほど平常心だった。
もう聖女としての力はないかもしれない、というのはもっと深刻な理由で、
すでに心の準備がすんでいたから。 ]
返事の前に聞かせてほしいの。
貴方はなぜ吸血鬼になって、
何のために今も吸血鬼でいるの?
…ああ、いってこい。俺もちょっとうろついてくる。見ておきたいやつとかいるしな
[決断をするならば、人の言葉にただ唯々諾々と従うような真似はしないことだけを決めて、壁をかけてバルコニーのほうへと向かう幼馴染を見送った]
[子はいつかはひとり立ちするもの。
そう言う我が子の目を覗きこむ。]
もしも、私ではない誰かに"愛"を注ぎたくなったのなら、
その子と二人で新しい世界へ旅立ちたいというのなら、
私はそれを祝福するけれども―――
[愛、という言葉はいくつもの色を帯びる。
親子の愛、恋人の愛。自分以外の存在に注ぎたいと思う心。]
[己の中心へと、ただ真っ直ぐに距離を殺ぐ刃。
風に散る金の髪が、視線を浚う。
月にも陽にも、瞬く度に彩を変える男。
風に惑う蝶よりも、徒に翻弄されるしか術がないのはそのせいだ、と。
身が貫かれるまでの間に思い至ったのは、唯それだけ。
――男の自重を受ける身体は、影を連ねて夜空に舞った]
[言葉詰まらせる肩を抱き寄せ、髪に指を潜らせる。
こうしたかった、と指先に語らせて]
アレクシスのおかげだ。
彼が、私を引き戻してくれたから。
[救い手の名を、感慨深く口にする。]
[同様に生ある粒子も感じる。あまりその光を見過ぎないようにしながらも、耳をすませば音も拾えそうか。とその感覚を慣らしがてら歩いて]
――私は、何だ。
どうやって在ればいい?
[友誼のために右腕を賭けたソマリの為にも、涙を流してくれた少女の為にも、あの場で消滅すべきだったと思えど、それを願えば神への、そして何より彼らへの冒涜となる。
……それに、ああ、幸福を願ってくれた母にも等しきひとにも。]
[聖女欠格を指摘されても動じないユーリエを見やる。
疲れ切ってしまったわけではあるまい。
この城で、彼女なりに感じたものがあるのだろう。
虚実を操る公弟は、彼女の問いに、真摯に応える。]
魔物が「悔い改める」と言ったとき、教会の反応は、
「魔物のいうことは信用ならない」か、「殉教して証拠を示せ」に大別される。
神──教会は、制し、罰することを根幹において、世に幸せを導かんとする組織ゆえに、一度でも罪を犯した者に対しては厳しい。
情状酌量などしていたら、示しがつかない。峻厳なる法治の理だ。
私もかつて司法の側にあり、だが、出会った吸血鬼を断罪できなかったゆえに吸血鬼になった。
吸血鬼であることは止められるものではないから吸血鬼のままでいる。
そして、私は、愛する者と共に人生を謳歌しているから、滅ぼすと言われても拒絶するよ。
[細かい事情は省いたから、よく伝わらないかもしれないが。薬の切れる時間も迫っていた。]
[己を歪と思う理由。
己を醜いと称した理由。
嫡子であるのに決して家門を継げぬ理由。
半陰陽であったジークムントは
野茨公と通じる事がなくとも
結局は教会から追われる事となったと思う。
だから――、頼れたのは野茨公ただひとりきり。
その頼った彼にさえ、それは隠せていると思っている。]
[覗く眼差しに翆が瞬く。
野茨公の言葉に耳を傾け、それからゆると首を振った。]
――…それは誰にも望めません。
幸せに出来ぬ身で求めるのは、我儘が過ぎるから。
[誰かと共に旅立つ事は考えていない事を明確にしていた。
目の前の美しく気高い吸血鬼の幸せを願う。
大事だからこそ迷惑を掛けたくはない弟を、想う。]
いいよ。
ヴィンセントが、命を賭けて護ろうとしている愛する誰かが居ることは分かった。
だから私も、命を賭けるね。
私がもし、聖なる力を失っていたならば、吸い殺してもいいよ。
でもそうでなければ。
滅びるのは貴方だわ。
だけど、きっともう、苦しくも痛くもないわ。
私がそう信じているから。
そうして、貴方が滅びたら……。
貴方は私の子供になって、もう一度生まれておいで。
私の母も、私を処女懐妊したそうなの。
だからきっと、私にも出来るわ。
貴方の愛する人も吸血鬼?
お兄さんのギィかしら?
……もしそうならば、ギィも私の子供になるといいわ。
ちゃんと兄弟として。
――…っ。
[ソマリの持つ刃が月光を受けて煌めき、母の胸に吸い込まれていくのを茫然と見ていた。
何故抵抗しない、と紡ぐ事も出来ず。
その勢いのままにソマリと母の姿がバルコニーの柵を越えて落下するのを目にした男は言葉を失ったかのように其処にいた。]
吸血鬼はやめられないけど、人間から吸血鬼になることが出来るのだから、
もう一度人間になってみてもいいでしょう。
そうして、教えて。
貴方の幸せは、生きている間には絶対に出来ないことなのかどうか。
どうしても吸血鬼じゃないといけないのか。
[――が、やがて思い出したように。]
…ぁ、
あああああ…っ!
[絶叫した声は、同じ状態の者には聞こえたか。
男はバルコニーの上で力なく座り込む。
――状況を確認しに行く勇気はなかった。*]
君は、異端だ。
[ユーリエに向ける声は弾劾ではなく、むしろ賞賛のそれ。]
還る場所があるなら、安心だな。
[少女の両手に指を絡め、華奢な首筋に冷たい唇を押し当てる。]
[抱き寄せる腕に引かれ、野茨公の肩に口許が触れる。
野茨公の目に映らぬ騎士の貌がふっと泣きそうな色を過らせた。]
――…アレクシス殿に感謝せねば。
身に余るあなたからの贈り物をヴィンセント様から受け取りました。
……、これが、その手に戻れば、
あなたの望みは、叶いましょうか。
――叶うなら、これは、……あなたが持つべきもの。
[手に包む血色の薔薇を野茨公へと差し出そうとした。]
[目を閉じて、意識を休めれば、遠いあの日の夢を見る。
血が心を繋いで、永き時を越え、その瞳に少女を映した。]
貴方のくれた花を、もっときちんと見ておけば良かった。
[傷つけはしなかったけれど、強く意識することもなかった。
自身の世界に在る者たちと同じ、興味など抱くだけ無駄だと思っていたから。
取り返しのつかなくなった今になって、悔いが滲む。]
"ねぇ、アレクシス"
[友と呼んだ少女は、一向に年をとらなかった。
吸血鬼の一族に生まれた男は、己の同じ名を持つ
それでいいのだと、そうありたいと、身体を借りた己もまた、目を細めた。]
"簡単に終わりを決めてはいけない。花はまた咲くわ"
[青空を映したような髪を靡かせて、少女の声が歌うように響く。
瞳を震わせて、目を閉じて、開いた瞳は、夜空を映したような、穏やかな黒。]
ありがとう――エレオノーレ。
[ようやく思い出した友の名を囁けば、閉じた瞳から雫がひとつ零れ落ちた。
城の片隅に落ちた雫は、やがて花を咲かすだろう。
枯れてもまた種から芽吹いて、新たな色が生まれる。
悲しみは慈しみに変わって、口元には笑みが浮かんでいた。]
そうね。
[ ひやり、と触れる唇に、
からめられた指を、きゅ、と握った。 ]
こんなこと聖書のどこにも書いていないわ。
[ 指は震えている。
声ほど冷静ではなくて。 ]
でも、そう思ったの。
[ 目を閉じた。 ]
―地下礼拝堂→廊下―
ユーリエ…――。
[扉の向こうに消えたきり、ユーリエは戻ってこなかった。
意識を集注すれば、遠く離れていく小さな光り。
跡を追いかけようと感じる光りの方へ走り出す。
が、すぐに足は止まった。
どうして声をかけずに、彼女1人で行くことを選んだのだろうか。
礼拝堂で見せてくれた、強くて優しい意志。
彼女なりに思うところがあって、あえて1人で向かったのだとしたら。
自分が行ったとしても、ただ彼女の意志を無駄にしてしまう事に成るのではないかと。]
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