情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 6日目 エピローグ 終了 / 最新
王都から帰る道中の馬車の事故で、お父様もお母様も亡くなられたけれど…
結婚してからずっと、文字通り死ぬまで、お二人一緒だったでしょう?
もしも、結婚する方が出来たら、私もそうなりたいの。
[女性の好むような飾りめいた美辞麗句は無かった文。
だからこそ、朴訥ともいえるその人の気持ちに偽りはないかと何度も手紙の文字を指で撫でた。]
内緒よ。
私は野心たっぷりの女だから、旦那様が政治に有能であれば善きパートナーになれるでしょう。
もし、旦那様が政務に興味がなければ、夫婦なのですもの。互いの得意分野を頑張ればいいの。
だから…結婚する方とは、ずっと傍にいたいのよ。
[白のクイーンが、黒のキングの逃げ道を塞いだ。]
さ、私の勝ちよ。
いい加減王都から奥方を迎える覚悟を決めてちょうだいな。
[この大合併を穏便に済ませたい思惑のある中央に、今であれば多少の無理も聞いてもらえるだろうと。
政治家の顔で弟の婚姻話を煮詰めていく。]
[ベルティルデ・バーデン
社交会では令嬢然、施政者然とし。
領内では馬にも乗るし、そのまま狩猟にも出る、少しばかり活動的な令嬢。
貴族の中ではごく平均的な背丈であるが、平民女性よりは高く、頭半分ほどは違う。
幼い頃から砂浜を駆けては遊んでいたおかげで、体は至極健康。
かつ、馬を駆ることもあるために、適度に締まった体のどこにも、貧血で今にも倒れそうな不健康さは感じられない。
丁度、他領から、祝いのドレスを贈ろうとする貴族や、招魂逞しい商人たちの情報網が出回っている時期。
お抱えの仕立て屋に口止めはしたものの、どこからか、採寸情報などは洩れていくものだった。]
[他にも届いた手紙を読む。
狩りに幾度も訪れた第一領地。
落ち着いたら、そこへ訪れるのも楽しいだろう。
できるなら、美しい伴侶を伴って。
誘いの言葉に笑みを浮かべて読み進め――]
……?
なんだろう、これは。
[手紙に描き添えられた図を眺める。
鎧姿の人間?
首を傾げて悩む。]
さて。
[いいアニキとして慕っているオズワルドへの手紙を書いて、最後に、ベルティルデからの手紙を開ける。
オズワルドの手紙の内容もあって、少し緊張した、が。
読み進めるうちに、自然と顔がほころぶ。]
ふふ、そっか。
だんだん、俺らのペースで仲良くなれば、いいよな。
[にこにこしながら手紙を指ではじく。
無理してしゃれたプロポーズなど……しなくていい、はず……と思いながら、返事を書こうと便箋を取り出す。]
剣と盾を同時に扱うのなら、皮鎧の方が軽く動きやすいが…見た目がなぁ。
戦わぬなら薄く加工した金属を用いるのが良いが…はて。
[勇ましい姿を勧めたと言う事なのだろうか。
悩むが巧く読み取れず。
手紙の主の筆圧の薄さが少し気になるものの、同封されていた祝いの品――海の涙に息を漏らす。]
……しまった。
アプサラス殿に伝えておくべきだったか。
[ふたつの真珠は、ギィとアプサラス、二人に向けてのものだろう。
少し悩んだものの、次に伝えようと決めた。]
[ディーターへ送られる手紙は、正式な婚約者として家の紋章象った少しだけ格式の高い相手への便箋。
もしも自分の趣味が彼に合わなければどうしようと、散々迷った挙句、の一部始終を見ていた侍女の間では既に噂になってしまっている。
友人に書く文なら、うきうきと季節や相手の好みを思いながら選べるのに。
冬の雪にも負けない厚めの便箋の片隅に、雪うさぎの花嫁と花婿を描いた。]
……別に、いいよな?
[一通り書いてから、先週、ラートリーの手紙に書いてあったことを思いだして、書き足す。
聞いていけないことではないはず。
うん。
そう言い聞かせて、封を閉じる。
封をしてしまえば、もう、直さない。このまま、彼女に送られる。]
[もう一通。
気さくに話して欲しいの言葉に、あの時の男の顔が浮かぶ。
今は隣領土となった領地の、次期領主。]
三本勝負か、いいな。
[その勝負を終える頃、新たな友人になっているかもしれない。
その前に。
その頃、隣はどういう領地になっているのだろうか。
男と、その妻となる女性を考える。]
良い付き合いはこちらも望む所だな。
[今は花嫁修業に専念しろと父も気を使ってくれているが、いつまでもそうはいかない。
花嫁修業の合間合間に、補佐としての役目は果たしている。
領民と言う子どもたちを守るために、この領地を守り、豊かにしなければならない。
まだまだ学ばなければならない事は、たくさんあるのだ。
父からも、そして新たに父と呼ぶべき人からも、学びたい。]
[一気に手紙は書き上げたけれど、見直すことすら恥ずかしくて。
私の想いは手紙と封の中に込めたのですから
後はギレーヌ様に届くと信じて召使へと渡します。
残るお手紙はどれだけ嬉しくても暫くは文を通じての
交流も許されない今は心の癒しにして。
慎ましく伴侶となる方とお互いを深め合うには大切な時間だけれど、
友人への気持ちも降り積もっていくのです。]
まぁ……すっかり冷めてしまってたわ。
夢中になっていたのね。恥ずかしいわ。
[ゆっくりとお返事を考えましょう、とティーカップに
手を伸ばしたのですが、湯気を忘れた紅茶に
どれだけ時が流れたのか驚いてしまいました。]
[日々、日々。
霊峰は神々しい白に包まれてゆく。
成婚の儀の時は迫る。
とはいえ、それは書類上のものであり
実際にアデルの顔を見るのは、まだ先になるようだ。]
もどかしいな。
[相手を目の前にするほうが、言葉を多く紡ぎ出せるから。
言葉を伝えるのに、手紙では書ききれないことが沢山あった。]
アデル様はさすがに博識でいらっしゃるわ。
ラートリー様とどの様なご夫婦になられるのかしら。
お二人とも知識豊富な方ですもの。
知力長ける土地になるのかしら。
[お二人の手紙を並べながら、どんな家庭を、
どんな領地を作られるのか想像するだけで楽しくて。]
夜空をお二人で見上げて過ごされるのかしら。
ラートリー様がアデル様の体調を心配されるのかしら。
案外夜空に慣れていらっしゃるのはアデル様の方かも
知れないし。
アデル様がラートリー様を気遣ったり……。
[それはとても美しい風景に思えました。
私も目を閉じて暫し夜空を思い浮かべます。
隣に並ぶ相手は言わずもがな。]
[そわそわと、書斎で行ったり来たりを繰り返していると、
郵便屋の声掛けが遠く聞こえ、思わず部屋を飛び出した。]
……っと
[召使が不思議そうな眼差しを向けるので、
少々気恥ずかしく、立ち止まり、こほんとわざとらしい咳払い。]
……その、私宛の手紙は、来ているだろうか?
[数通の封書を手にした召使は微笑んで、それらを手渡す。
緊張の面持ちで、差出人の名を見つめ]
―――、あった。
[もしかしたら愛想を尽かされてしまったかと
そんな不安まであったのだ。
婚約者の名を軽く指先でなぞり、
その後は書斎に引きこもることにした。]
[瞼の裏の光景に気を取られてアデル様の騎士姿と
謎のインクの染みの事はすっかり抜け落ちてしまいました。]
む、何故私の体験談だとばれたのかしら。
[またうっかり淹れ直した紅茶が冷めてしまいそうになりました。
慌てて口に含み、クッキーも口に運びながら、
何度も書き直された修業中のお友達からのお手紙に
目を細めます。]
随分頑張っているのね。
春祭りも楽しそうだわ。
私のところは去る季節を惜しむけれど、
向こうは来る季節を祝う感じかしら。
[説明のはずなのに、彼女が溢れていて読んでいるだけで
楽しくなって仕方ないのです。
世界中のお祭りを巡れたら楽しいでしょうが、さすがに
それは出来ません。我慢です。]
――…この地に生まれることができて、良かった。
[見下ろすのは代々祖先が統治してきた土地。
そして見上げる霊峰の一部は、これから統治していく土地。
頬を撫でる風は冷たく、
領土を増やすだけでやすやす越冬できるわけでもないが。
足りないものを補い、寄り添う温もりがあればきっと。
超えられぬ困難などない。
外套に触れては解ける六花の繊細さと儚さに、
いつか夢に見た花嫁のベールが重なって、やわく息を吐く。
また体調を崩す前に、邸に帰ろうと馬を走らせた。]
すぐに魅惑的な女性になって私なんて追い抜かれてしまうわ。
[天真爛漫だけれど本質を見抜く目を持つ友人は
きっと素晴らしい妻になり、民の母になるでしょう。
お互い交流が栄えて、祭りで出会ったときに
どんな風になっているか今から楽しみが増えました。]
はっ!
いけないわ。
休憩している場合じゃないわ。
負けないように頑張らなくては。
[手紙に触発されて、私は休憩を切り上げて
また刺繍に取り組むのです。
他の大切な方たちに胸を張って会えるように。]
そう言えば……オクタヴィア様はどうされているかしら。
[心残りはどうしても言い出せなかった大切なお友達への謝罪。
法案が出された以上判ってはいるけれど、
私からちゃんと話していないことが胸に残る小さな棘。
交流が解放されたら、真っ先にお手紙を書こう。
そう決めて私は絹のリボンに刺繍を施すことにしたのです。]
[婚姻の儀から二週間ほど経過した。
ウェルシュさまと父はこれからの方針だとかお話しているようだけれど、
生憎その場に娘は呼ばれず、相変わらず別居生活が続いていた。
街へ下れば、民衆は口々に祝言をくれるけれど、
ふたり暮らす新婚生活はまだまだ先のよう。
ギィさまとアプサラスさまが正式に成婚となったと聞き、
次の慶事の通達も父伝いに聞いた。
お二人にお手紙を送らなくっちゃ。
ああ、お祝いの品、何にしようかしら。
…なんて考えていた娘の思考を裂いたのは、文を届けるの馬車の音。
待ちわびた、今は夫となったウェルシュさまからの手紙。
胸の上で合わせた手の中に大事に仕舞い込んで、自室へと駆け戻る。
自分だけの部屋で、誰もいないというのに周りを見渡してから、
丁寧に、その封を切った]
[そして新たに届いた手紙に目線をやると。]
………………
[イヤ、とは違う。でも嬉しい、ともちょっと違う気がする。他の手紙を開ける時にはない感情。
マイナスの感情ではないことは確かなのだが。なんと表現していいのか、少女にはわからないまま。
―――封を切った。]
…まい、ふぇあ…?///
…こうしてみると、しっくり来ないわね…
でも、お転婆とは言わせないんだから。
[そう言いながら、羽ペンを走らせる主の顔は…心なしか、少し赤かった。]
臥せって……とな。
[手紙の冒頭に、不安げに眉根を寄せるも
その後の言葉にほっと一安心。
むしろ臥していた時の思惟についてを読めば
頬に赤みが差す。]
……嗚呼、
[少年が大人になったと感じる。
それなら自分は、彼にとっては最早
おばさんのようなものなのかもしれない。
それでも、そんな自分でも受け入れてもらえると感じるから。]
私が、花嫁さん……。
[耳まで赤くなって、三十路らしかぬ
淡いときめきに心音が速くなる。
金色と、白との、美しい便箋を優しく撫ぜ
浮かべるは少女にも似た、笑み。]
[すう、と息を吸って、便箋を開く。
紙面をなぞる視線は、何時になく真剣なものだっただろう。
愛と恋の話だなんて、難しい話は出来ないけれど、
その内容は、今に流されてばかりの女にとってショッキングなもの。
けれど、私の心はそれをちゃぷんと沈めて、
気付けば、静かに、柔らかく凪いでいた。
―― 暫くして、また、ペンを取った。
うまく言葉に出来るか分からないけれど、
思ったことを素直に、伝えられるように。
撫子柄の便箋に、静かにインクを垂らした]
[あの手紙はもう彼女に手元に届いた頃だろうか。
手帳の暦を見て、また一週間が過ぎてしまった事に気付く。
形式上は夫婦となったものの、
忙しさに翻弄され未だ、会う事が出来ては居ないのだった。
そのうち愛想をつかされてしまうのではないか。
そんな事を思いながらも、
無理やりにでも時間を作って会いに行こうとしないのは、
あの告白をどの様に受け止められるのが怖い
という気持ちが何処かにあったのかもしれない。]
[木枯らしが窓をがたがたと鳴らすと、
部屋まで揺れているような錯覚を起こした。
頂き物のお茶に、口をつける。
何時も飲んでいる紅茶とはまた違った味わいで。
少し飲んだだけで、体がぽかぽかと温まるのだった]
異国の、としか書かれていなかったけれど。
どのくらい、遠くなんだろう。
何時か旅行にでも行ってみたいものだなあ…
[その時には、彼女と。
異国だけでは無く、この国をあちこち廻ってみるのも悪くないだろう。
…そんな気持ちになるのも、きっと、
誰かを強く意識しているからなのだろう、と、思う――]
[羊皮紙にペン先を引っ掛け、悪筆のサインを綴る。
うららかな真昼の陽射しの中でも、肌寒さを覚えるようになった。
やがて訪れる冬は、今年も北方にとって厳しいものとなるだろう。
貯蔵に、凍結される街道、川の恵みは減り、雪が降る。
まだ暖かい海に面している為、山岳領よりは過ごし易いものの、
第三領から買い付ける燃料費は毎年莫迦に出来ない。]
…お、噂をすれば。
[悩みの種であるが、第四領には良い鉱山が無いので仕方がない。
そんな思考を巡らせていれば、公私入り交じる手紙の山の中に、
そろそろ見慣れた名前を見つけた。]
――――…ん、鶏か…?
[だが、封を切ると、自身の眉は困惑のカーブを描いた。
デリカシーに欠ける言葉を吐いて、視線を滑らせ、羽ペンが閃く。
小さな鳥籠に、書き足すのは開いた扉。
シンプルながら、分かり易い解の一筆。]
……どいつもこいつも。
俺は不器用じゃねぇよ、――― 今回だけだ。
[言い訳にも弁明にもならない声を、紙面の二羽だけが聞いていた。]
[らしくないことをしていると、自身の行動を振り返り、
誤魔化すように他の信書を取り上げた。
偶々二通揃って取り上げたのは、此度成婚が決まった両名から。
夫婦は似るものだと言うが、似たもの婚約者でもあるらしい。
つい、微笑ましさに笑みを噛んで、封を切り。]
照 れ て ね ぇ 。
―――…ああ、これはギィが白旗を翳す訳だ。
まぁ、あいつは時々飲み込むから、これくらい察しの良い方が。
[思わず手紙に強張った声を挙げてしまったが、
友人の伴侶は噂通り聡明さを感じさせる女性だった。
それと並べた友人の手紙も、何故か胸が熱くなる。
稀代の色男と噂される友人だが、彼は女性だ。
男のように気安いが、それを間違えたことはない。]
[男女の間にも友情が成立すると思う己は、
その性差を掘り下げたことは無かったが、友の幸せは喜ばしい。
挙句、妙に見透かされているような手紙を貰えば、
ふ、と呼気が漏れた。]
……賢妻を貰うなら、名君になれよ。
―――…ありのままのお前さんで良いんだ。
[口にしてからふと、その言葉が自分に返ってくるようにも思えた。]
情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 6日目 エピローグ 終了 / 最新