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[まあ、帰りたい場所としていうならば、吾は男の国の方へ行きたいし。
小物は男と離れ離れにならなければどこでもいいようで、それほど場所には拘っていないようだ。
そして言わずもがな、目の前の男は──…
となれば、帰還は男の国だろう。
あちらの陣地になるか、どこぞの領内になるかはわからないが。
吾はあの国の250年前しか知らぬのだ、行き先は男に一任するとしよう*]
[大丈夫!と力強い肯定に、小さく笑みが洩れる。
根拠があるのかは分からないが、きっと大丈夫だ。異世界を渡るという大変そうな役割の鍵は、その仕事に対して案外小さなものだった。そろりと持ち上げるけれど何も変わらない――触れただけではダメらしい。鍵のかたちはしているけれど、この鍵をどこで使えというのだろう。
彼の中の吾様に聞くと、どこでもいい、ということだけど。どこでもってなんだ。いまひとつ騙されているような気が捨てきれないけれど、そのまま目の前の空間に向かって、鍵を指す仕草を試してみる]
……あ。
[なんか刺さった。多分これでいいのだろう。
『どこに行きたいかを考えながら使えばいい、そこに繋がる』と言われたけれど……最初にこちらに来た場所?でも襲撃を受けただけで特に行きたいという訳でもない。彼のいた砦…も、申し訳ないけど行きたいとはいえないし、おまけに彼自身も自分の国に特に拘りはないようだ。
ミヒャエルのいた部隊のいるであろう場所の近く?それとも]
――うん。あそこ、かな
[ある場所を頭に思い浮かべて頷くと、鍵を持つのとは逆の手を差し出した。どういう形で鍵の力が働くのか分からないから。彼一人取り残されたらいけないし。けして心配だからじゃない]
[そして鍵は力を発揮した。
現れたドア?を潜って辿りついたのは――ミヒャエルの家の近くの森の中。彼に聞かれたなら、そう答えるだろう]
……たぶん…君の封印に関わったのは、うちの先祖みたいだし…だったら、君のことについて、記録が残ってるなら、うちが一番高いかな、と。
[そう説明する。
本来なら、元の部隊の本拠地近くがいいのだろう。けれど直接彼を連れて行くのは不安が残る。軍事利用なんて、させずにすむならその方がいいのだ。
ミヒャエルの実家は軍の本拠地とも首都とも少し離れた場所にある。元は貴族。今となっては関係ないが、広い屋敷は元々領地だった場所に建ち、建てかえることもなく未だそこにある。調べものをするにも彼を匿うにも都合がいい]
連れて行くけど……その前に、水浴びでもする?着替えは俺のだから少し小さいけど、持って来るよ。
[実家近くの森の中、小さい頃さんざん遊んだ場所へと連れて行こう**]
[扉を抜ければ、そこはいつか通った森の中。
この先に家があったなぁなんて、ちらりと視線を向けるけれど、繋いだままの俺の手を引いて君がいくのは逆方向。
ああ、確かこの先には──…
そうだ、俺は君になら。
そうだ、吾は今ならば。
そうして辿り着いた先には、俺と吾様の記憶の通り。
空に向けて手を広げるような形状の大岩の傍、昔と変わらぬ姿のままの泉があった]
[俺は、着替えを取りに去るという君の袖を掴んで、行かないでと言おうとしたんだけど。
その手を抑えた手があった。それは俺の…いや、吾様の手で。
────…
そうして、俺にだけ告げられた吾様の悪巧み]
…………わかった。待ってる。
[その提案が今の俺にはとっても魅力的な物に聞こえたから、今は君を送り出そう]
[それは昔々の話、250年前より少々前の話になる]
― 回想・死が三者を別つまで ―
[王妃付の侍女の一人に連れられ、吾はこの地に匿われていた。
王妃付の侍女が王妃に侍らなくなったなら、それは女じゃないかと思ったものだが、
一回面と向かって口にして酷い目に合って以降は、こっそり思うだけに留めている。
侍女あたらめ女に随伴している騎士は、その際に大爆笑して共に酷い目に合った同士である。
お前は近衛じゃなかったのかという質問は、追求は許しませんと言わんばかりの笑顔で流されたので、これもまた思うだけに留めていた。
女と騎士が互いに思い合っていたことも、その思いが通じ合っていたことも知っていたけれど、
吾はどちらも悪しくは思っていなかったから、好ましく思っていたものだから]
[
彼らと共に生きたいと、逝きたいと思っていたものだから。
吾はそのためだけに、三つで一組の指輪を作り上げた。
指輪の力は、守護の加護と寿命の折半。
いつまでもこの時間を続けたいと、永くを共にいたいと、そんな欲望の産物をこの世界に生み出した]
[
死が三者を別つまで。
吾のそんな祈りは、結局そのままでは彼らに渡すことはできなかった。
戦が始まり、吾の力が求められ、匿われたままではいられなくなったものだから、寿命の折半という能力は彼らに害を為すだろうと。
彼らの指輪には守護の加護だけを残した状態で、まだ恋人同士でしかなかった二人に、急かす意味も籠めて結婚祝いとして送った。
顔を真赤にしてなにも言えなくなった二人が見れたのだ、それだけでも贈った甲斐はあっただろう。
その時、3つ目の指輪の存在を口にして、いつか共に居たい者が現れたら贈るのだなんて告げたのは、彼らの空気に当てられたからだ]
[そうして、彼らが式を挙げたその夜に、吾は泉に指輪を封じた。
誰よりも共に居たかったのはお前たちだったのだと、
伝えそびれた、叶えそびれた祈りの残滓を手元に置いておきたくなかったから。
それを気取られるのも好ましくなかったものだから。
3つ目の場所を秘したのだった]
― 回想・了 ―
[指輪を手にし、吾は昔を懐かしむ様に目を閉じた。
──…
それから指輪の力を組み替える。
何をしたのかを知る小物がわあわあうるさくなるのだがこれだけは譲れない。
小物はともかく、吾はあれへの感情を傍にいたいとは思えても、それがなにであるかはうまく纏められては居ないから。
あれが吾らをどう思うのか……好まれてはいる方だとはおもうが、
それにあれが自身をどれだけ賭けられるかとなると、そのままの指輪を贈るのは騙し討ちのようになるような気がするから。
……贈らないという選択肢はないし、気負わせないよう秘するという前提であるから。
寿命の折半を分譲に置き換え、受け取っても選択肢は残るようにしよう]
[指輪探しついでの水浴びを終える頃に、男は戻ってきただろうか。
ああ、そういえば、吾はその名前も知らないなと、指輪を贈る段になって気がついた。
だから、渡されたシャツに袖を通しながら、名を聞こう]
エールリヒの末裔、名前は。 ……なんと呼べばいい?
[長く傍に居たのに知らなかったなんて語りかけるのだが、思い返してみれば共に居たのは思った以上に短い時間で。
その濃度故に狂ってしまっていた時間感覚に吾は笑った]
[そうやって名前を聞き出せば、吾はミヒャエルへ名を刻んだ指輪を差し出しただろう]
ミヒャエル=エールリヒ
今しばらく、吾と共に居て欲しい。
なに、「死が二人を別つまで」とは言わないさ、
[おそらく君は驚くだろうし、婚姻の為のものと意味合いを違えて焦りそうではあるのだが。
守護の加護がつくもので、昔友人に贈ったものと同じものだと説明をしたのなら、君は受け取ってくれるだろうか?
まあ、小物は婚姻のものとして贈りたかったようでしばらくうるさくあったのだが、それはそうなったときにまた別に贈ればいいだろうということで決着がついた]
[一人突然に戻った実家ではずいぶん驚かれたけれど、今は人を待たせているからと説明は後に回した。出てきたのが母一人だったことが大きい、ここに姉がいれば絶対に洗いざらい話し終わるまで解放されないだろう。
服の中からできるだけ大きめの、多少サイズ違いでも着られそうなものを見繕いつつ自分もさっさと着替える。彼ほどではないが、やっぱり汚れていない訳じゃないから。
ライフルとSAAは戸棚の中に仕舞って鍵をかけ、準備完了。]
[歩き馴染んだ道を泉へと急ぐ。急かす気はないけど、水は冷たいだろう。木々の間から見えてきた泉の中に彼の頭を見つけて近付きかけ、一度足を止める。
これは、どっちだ。それ次第で近寄って大丈夫かが変わる。
というか、水浴びを見られるのはどうなのか。
悩んでいる間に相手の方から近付いてきたから、大丈夫なのだろう。しかも吾様の方だった]
え、名前?ミヒャエル、だよ。
ふふ、そうだね。今までお互い、聞きもしなかったね。
[言われて初めて思い出した。あんまり困らなかったせいだろう。吾様は自分は人の名を聞いたくせに自分が名乗ろうとはしないから、こっちから彼らの名をねだろうか]
[そうしてやっとお互いの名を知り合った。予想通りサイズ違いで袖の短いシャツとズボンを履いた状態は、少し間抜けだ。吾様は気付いていないようだけど、彼の中の彼――『ヒース』、は、気付いているだろうか。無意味にニコニコしてしまう。
少し間抜けな状態で、ものすごく真面目な顔をした吾様が手を差し出してきた。思わず出した手の平の上に指輪が置かれる]
は……はぁ?!あ、え?
[プロポーズ紛いの言葉と手の中の指輪の存在に、慌てすぎて手の中の指輪を落としそうになって必死でキャッチする。
それだけ焦っているというのに吾様は、相変わらずのペースで守護の加護付きと説明してくれた。しかも前にも友人に贈ったことがあるというのだからこの野郎。]
――?
??
[なんだろう。嵌めた瞬間に不思議な感覚がして、指輪と吾様…ヒースと呼んだ方がいいのだろうか。ヒース呼びだとどちらを呼んでいるのか分からないし、もう吾様は吾様でいいか。吾様の顔をマジマジと見つめるけれど、指輪の説明はあるのだろうか]
加護?っていうか…俺と吾様、なんか繋がった?みたいな、感覚なんだけど。
[ただの加護とは思えない指輪を突きつけて、相当問い詰めたのだけど吾様は口割らなかった。この野郎。まぁ返す気はないからいいとしよう。
でも仕返しに間近い吾様の唇にキスしてやったら、せっかく着替えた服のまま泉に転がり落ちていった。ざまぁみろ]
[ダブルで騒ぐヒース達を多めに持ってきたタオルで包んで家まで二人歩く。
――実際ミヒャエルは知らないのだが、指輪を継いだことのある父と母、それに結婚して母から指輪を受け継いだ姉すらも、遠い遠い昔の化け物の話を知っているだなんて想像もしなかった。
それからミヒャエルの指に嵌る指輪は、長い時の中でゆっくりと端が欠け削れていってしまったエールリヒのものと、元々の意匠は同じであると。
しかも大昔の吾様が、いつか共に居たい者が現れたら贈る>>108だなんて言ったその指輪を嵌めていたものだから。俺、男なんだけどという呟きは、一族で一番豪傑の姉に鼻で笑われた。
そうしてすっかり舗装された外堀は最早覆しようがなく――]
わかった。もう分かったよ逃げられないってのは。でもな。
――俺が納得するまで口説いてくれるなら、いいよ。
[そんな台詞によって、ついに幕を下ろすことになる**]
[城に帰ったら、先ほどできなかった続きをしよう。
新しい、自分だけの名前も付けたい。
鞘を出すのに毎回人型が真っ二つになるのは少々心臓に悪いから、人型を壊さずに本体を取り出す方法も考えよう。
一緒にしたいことはいくらでもある。
けれどもまずは、抱きしめて口接けて、こう言うのだ。]
[迷い込んだ者達が全てそれぞれの世界に帰った後、城主は再びまどろみに沈む。
白く深い霧の中、新たな訪問者が現れるその時まで、
赤き月に抱かれた森は、静かに眠り続けるだろう。***]
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