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刃隠術 アイリ に 7人が投票した
刃隠術 アイリ は高貴な身分の生まれの為、一度だけ処刑を免れた。
次の日の朝、闇炎虎 タイガ が無残な姿で発見された。
現在の生存者は、永劫の守護騎士 フィオン、黒耀狼 ディーク、銀雪豹 ウルズ、影雷鉤 ノトカー、韋駝天 ヤコブ、刃隠術 アイリの6名。
[ 黒虎の牙を躱したディークの言葉に、虎が笑う ]
元気で悪いか?
[ その目前で若者の姿が、漆黒の狼へと変ずるのを見れば、ぐるう、と喉奥で唸った ]
そっちの方が男前じゃないか?
[ 軽口を叩く間にも、間髪入れず、狼の爪が襲ってくる。虎は、一度飛び下がるが、前肢を一本欠いたままの動きは、僅かに鈍く、鋭い爪が焔を纏ったままの、首筋に裂傷を刻んだ ]
ガウッ!
[ 黒虎は一声吼えると、狼の右手へと周り込むように駆け出す、駆ける内にも焔は飛び散って、火の粉となって狼に降り掛かった* ]
生憎、こちらは燃やすのが専門だ。
[ 冷や水云々には、鼻で笑うように、そう返す。
その言葉通り、火を撒きながら三本の脚で駆ける虎は、狼の動きが止まった瞬間を見逃さなかった ]
グルゥッ!
[ 後脚で地を蹴って、右手から飛びかかり、噛み付く、と見せかけて ]
お返しだ!
[ くるりと、宙で反転しながら、前肢を狼の鼻先に叩き付けた** ]
[ 狼の鼻先に前肢を叩き付けた黒虎は、爪が黒曜の毛皮を裂いた感触を感じると同時に、一度飛び下がる。
殴られた相手が逃げるとは欠片も考えていなかった ]
やられたら、やり返すのは喧嘩の基本だ!
[ 思った通り、瞬時の躊躇いも無く回りこみながら首筋を狙って飛びかかって来る狼の素早い動きに、三本脚の虎は逃げるより踏み止まるを選んだ ]
グゥッ!
[ 首筋に深く食い込む牙の痛みは、しかし、同時に、感情の動きに反応する焔を燃え上がらせるきっかけとなる......燃えた分だけの消耗は、もちろんあるのだが、それに構うつもりも余裕もないのは、こちらも同じ ]
グルゥウッ!!
[ 焔と熱気が噴き上がると同時に、首筋に噛み付いた狼を振り回すように、虎は大きく身体全体を揺さぶった。
牙を逃れる事が出来れば、地を蹴って、建物の壁を蹴りながら上へと駆け上る。
それは逃走を狙ってではなく、ちらりと飴色に金を向け、誘いかける動き** ]
[ 人気の無い、半分崩れかけた雑居ビルの壁を蹴り、窓枠を足がかりにして、黒虎は上へと向かう。
夜空に懸かる月の光は冴え冴えと青白くスラム街を照らし、濃い闇の影を路上に落としている。
黒い虎と、それを追う黒曜の狼もまた、闇に溶け、闇を連れて、月光の下に舞い躍るような影絵を織り成す ]
『獣神』の目的という奴を知っているか?
[ やがて、ビルの屋上に到達すると、黒虎は、錆びた貯水槽の上に飛び上がって、若狼を見下ろし、ふいに、そんな問いを投げかけた。
その身を包み揺らめく焔は、まだ戦意が喪われてはいないことを示しているが、闇に輝く金の瞳は、どこか、戦いへの熱情だけではない不思議な静謐を沈めている* ]
そう、ソレだ。とんでもなく馬鹿げた思想だってのは、お前も異論なかろうが...奴らの一番おかしなところはな...望み通り、誰よりも強い獣の神が、この世に現れたとして、その「神」が一番に何をするのかを解っていないのか?という事だ。
[ これ程まとまった話をする黒虎を、今まで見た者は居ないだろう。言葉よりも、刀の閃きで、そして、その爪と牙で、これまで男は全てを語ってきた ]
神と呼ばれる程に強く、誇り高い獣ならば、そう、もし、俺が獣神となったなら、やることはひとつだ。
俺を利用しようとする者、支配しようとする者、神を作り上げたなどとほざく者共全てを......残らず食い殺す。
[ 歯を剥いて笑う黒虎の声音は、古の吟遊詩人が、物語を謳うがごとき調子で、月夜を渡る* ]
まあ、そうだろうな。
[ そこまで深く考えていないだろう、というディークの言葉に、黒虎はあっさりと肯定の頷きを返す。
そして、そもそも、大人しくは、という評価らしきものには、愉しげに目を細めた ]
それはお前も同じだろう?
奴らが何を望もうが、企もうが...その思惑に乗って戦おうが...最後に自分の意志を捨てるようなことは無い。
お前や俺ばかりじゃない、多分、今ここで戦う連中、全員な。
[ 過るのは、きっと今も、主の元へ帰るために戦っているであろう、僅かの間言葉を交わした娘のことか ]
結局、奴らのやっている事は、無駄に遠回りな自殺にしか俺には見えん。
だからな......
[ とん、と、貯水槽を蹴って虎は月の光の中を跳ぶ ]
奴らが死にたいなら、それを手伝ってやろうか、とも、思うのさ。
[ それが、この戦いを少しも厭わぬ理由のひとつだと、それこそ遠回りな心情の暴露だとは、伝わったか。
それを今、伝えることの意味はまだ知られはしないだろうけれど ]
おしゃべりはここまでだ。
...そろそろ、決着をつけようか?犬っころ...いや、黒耀狼。
[ 屋上へと飛び降りた黒虎は、黒髪の男の姿に変わり、ハンターの間で呼ばれるディークの二つ名を初めて口にした。
喪った右腕から朱を零しつつ、焔纏う刀をだらりと左手に提げて、金の瞳の男は笑う* ]
月が、綺麗だな。
[ 蒼の糸が風を切る音に目を細め、ひどく、のんびりとした声で呟いてから、男は左手の刀を右肩に乗せるようにして、走り出す ]
...せいっ!
[ 駆けながら焔纏う刃を気合を込めて横一閃、焔と刃は、本気で夜風を切断しようという意志を乗せて揮われる* ]
[ 同じ月を見上げ、ディークの漏らした言葉に、男は笑みを深くする。
渾身の力を込めた一撃は、折れぬ意志の力によって硬く剛く鍛え上げられた蒼の一閃に、見事に弾き返された ]
ふっ...!
[ 手応えの強さに、男の笑みは唇からも零れ、愉しげな表情のまま、手首を返す。
踏み込んでくる若者の右肩から袈裟懸けに斬るを狙って、刃を振り下ろすが、片腕での斬撃、更に糸が放たれれば、当然にバランスは崩れる* ]
[ 振り下ろした刃を敢えて受け止めたディークは、痛みに耐えて糸を閃かせる ]
くアッ!
[ 咄嗟に身を引くが、ざん、と鋭い一閃が胸元を裂いた ]
それは...こっちも、ご同様、だな。
[ このまま堕ちるのは御免だ、と言い放つ言葉に、く、と喉が鳴る。
結局のところ、この若者を好敵手と認めたのは、産まれ育ちも、種も違う相手ながら、どこかに似た芯を感じ取ったからかと、改めて納得する ]
おおぅっ!
[ 刃に変化した蒼が、闇切り裂いて右肩へと落ちてくる。男はそれを、戻した刃で受け止めて...気合と共に焔を闇に燃え上がらせた、が ...]
キィ――......ン!
[ ふいに響いた、甲高い音と共に、蒼を受け止めた刀が半ばから折れて、空に飛ぶ。そして阻むものの無くなった鋭い斬撃が、男の右肩へと真っすぐに落ちて ]
......っ!
[ 咄嗟に身を捻ろうとするが、既に遅い。しなる糸が肩から胸を一直線に斬り裂き、月光の中に鮮やかな紅が散る ]
く...あ...!
[ それでも、膝をつくことを良しとしない男は、折れた刀でビルのコンクリートに無理矢理突き通し、その柄を握りしめて身を支え、金の瞳を飴色に向けた ]
は......やるじゃないか...
[ 焔は、刀が折れた時に消えている。だが、常ならば、すでに回復が始まっているはずの男の右腕と、胸の傷からは、止まる事無く血が零れ続け、男の顔色を蒼白に変えていく ]
少し......燃やし過ぎたな......今なら、その糸で、首でも落とせば、俺も死ぬだろう...
[ やってみるか?と、虎は狼に問い掛け、小首を傾げて見せた** ]
く...はは!
[ きょとりとした顔で、どんなメリットがと、問い返されて、男は、心底可笑しそうに声をあげて笑った ]
いたた...
[ 笑うとあちこちの傷に響くが、笑えてしまうのだから仕方ない ]
は...メリットか、そうだな、例えばこの先、獲物を取り合う相手が一人減る、とか?
[ 言って、自分の言葉が可笑しいと言うように、またくくっと喉を鳴らす ]
だが、ターゲットが減る分『獣神』に狙われる確率は上がるだろうから、デメリットの方がでかいかもしれんな。
[ 付け加えた言葉は、冗談というには微妙だ。例えば、ここで黒虎に勝ったという事実だけでも、『獣神』の信徒にとっての、この若狼の価値は、上がった筈だから ]
まあ、俺も、黙って首を差し出そうとは思わんが。
[ ふう、と息をついて、男は、折れた刀の柄を手放すと、ポケットから煙草を取り出し口に銜える。
指先で煙草の先を掠めると、夜の影に小さな灯が浮き上がった ]
ところで、この下あたりに、俺の腕が落ちてると思うんだがな...その器用な糸でうまく拾えないか?
[ 煙を吐き出しながら、そんな図々しい申し出をしてみせる男の顔は、相変わらず蒼白だったが、その金の瞳に浮かぶのは、普段の退屈に飽いた表情でも、獲物を狙う虎の鋭い光でもなく、どこか満足そうな色だった* ]
[ 獲り合う相手が減る事をメリットとは思わない、と、当然のように断言するディークの顔を、のんびりと煙草をくゆらせながら男は見つめる ]
まだ、退屈しきるには早いようだからな。
[ 首を差し出すなど想像出来ないと、言われれば、金の瞳を細めて呟き ]
お前を殴り返すという、楽しみも出来たことだし。
[ 次いで、さらっと付け加えたのは、全く懲りない台詞だったが、まあ、今更、意外とも思われないだろう ]
何だ、出来ないのか?
[ 図々しい願いへの突っ込みには、使えねえなという顔をしてみせる ]
ああ、そういえば斬ったか。
しかし、この程度の刀で斬れるってのは、どうなんだ?師匠に笑われるんじゃないか?
[ 更に重ねる言葉も、相当に棚上げっぷりが酷い。
無論、ディークが「出来ない」という事実を、実の所、悔しがっているらしい、と、知った上での台詞だ ]
ま、無理だってんなら仕方ない。
[ 男は火の点いたままの煙草をくしゃりと握り潰すと『この程度の刀』と自ら評した折れた得物をコンクリートから引き抜いた ]
面倒だが自分で拾うか。
[ 支えを喪っても、男の身体はもう揺らがない。良く見れば、今の会話の間に、傷は塞がりきらぬまでも、流れていた血は止まっているのが解るだろう ]
いい加減、閉じこめられるのにも飽きた。腹も減ったし...な。
[ 再び空の月を見上げた、男の金の瞳には、先までとは別の、怒りの揺らめきが宿る。
退屈しのぎと嘯いて、仕組まれた争いに乗っておきながら、結局の所、仕組んだ相手を許しているわけではないのだ、とは、ディークにも読み取れたか* ]
[ 明らかな揶揄に、見事に引っかかる若狼の様子に「お前が可愛がられてる理由が解った気がする」...と、正直に言ったら、また殴り合いになりそうな気がしたので(それも面白いかと検討したものの)心の内で呟くだけにしておいた。
くすくすと笑う声は押さえようがなかったが ]
お前が遠慮無くぶった斬るから、降りるのが面倒になったんだよ。
だがまあ、武器無し腕無しじゃあ、さすがに笑えねえから仕方ない。
こんなことになると判ってりゃ、まともな刀を持って来たんだがな。
[ 男が普段、持ち歩く無銘の刀は、あくまで仕事用のもの、それ故に、限界までの力...焔を纏わせ、今度のように強い力を持った相手とぶつかると、負荷に耐え切れず折れてしまうこともある。
男の全力に耐えられる愛刀は、別にあるのだが、街を出られぬ今となっては取りに戻ることも出来なかった ]
お前も、大人しく檻の鍵が開くのを待つ気はなさそうだな、なんなら、一緒に行くか?
当てはないが...多分、ばらけてるよりは、出くわせる確率は上がる。
[ 元気だ、と、どこか呆れるように零される声には、ただ笑って、そんな誘いめいた言葉をかける。
戦わせておいて、放置ということはないだろうから、どこかで監視はされているはずと、男は考えている。
勝者と敗者が手を組んだと見れば、なんらかの動きを見せるかもしれない...とは、やはり元凶が始末されているとは知らぬままの思考だ ]
ま、無理にとは言わんがな。
[ 誘いかけておきながら、とっととビルの縁を蹴り、地上へと飛び降りる。
途中壁を蹴って緩衝を計りはしたものの、怪我も治りきらぬ身での、無茶だ。
再び呆れられるには、実に相応しい行動と言えた* ]
[ 男の纏う焔が無限ではないように、その治癒力も実は無限ではない。男がクリーチャーを喰らう程の大食漢であるのも、その力に見合ったエネルギーの補給を必要とするからだ。
だが、物理的なエネルギー以上に、影響するのが精神的な力...ぶっちゃけて言えば「戦う」「死なない」という、単純すぎる程の意志の力だった ]
おー、あった、あった、うまいことすっぱり斬れててくれて助かったな。
[ 後を追って飛び降りて来たディークに、拾い上げた腕を示して、そこは礼を言っておこうかと、男は笑う ]
切り口が綺麗じゃないと、動かせるようになるのに、やたら時間がかかるんだ。
[ 一見無造作な仕草で、男は、拾い上げた右腕をもとの位置へと押し当てる。すっかり血の気の無い物体と化していた皮膚の表面に、しばらくすると血が通い、生気をとりもどしていく ]
く...う...
[ やがて、小さな呻き声と共に、男が力を込めると、ゆる、と右手の指が震えながら動いたが、今はまだ、それ以上は動かせないようだった ]
は...まあ、無いよりはマシか。
[ 吐息をついて、ぱし、と繋げたばかりの腕を軽く叩く ]
さて、他の連中はどうしてるかな...そろそろ決着がついてても良さそうなもんだが。
[ 監視者の目を惹き付けるなら、他の者に近付くのも良い手段だろう、と、男は、闇を見透かし、風の匂いと気配を探った* ]
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