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遠くに居ても守れるというのは頼もしいです。
[ こういった形ではなくとも、クレステッドがアーケシアを出奔する前に、希望を残してくれていたら、人生はまた違っていたかもしれないとふと思う。
けれど、彼の事情に立ち入るのは憚られた。
向上心なり野心なり家庭の事情なり、何かしら抱えていたはずだ。
結局、ありがたく受け取るだけにしておく。]
[ 周囲を調査していたクレステッドが岩の中に掘られた道を見つけ出した。]
こんなところに…予想外でした。
報告して応援を呼びましょうか。
[ 松明も持ってきていないし、とクレステッドに相談する。*]
[カスパルがなにを思っているかうかがい知ることは無く、
ただ一方的に
彼の言葉の裏までは知らないが、思いも掛けず再会して、一緒に調査することになったのは幸運の領域だろう
ここからなにかが動き出す予兆を感じる。
それを確かめるのに、まずはこの異変の元凶に立ち向かうとしよう。]
主要な連中は主賓を守るので手一杯だろう。
なにより時間が惜しい。
明かりになるものなら、近くで調達すればいいだろう。
この中も、術士の隠れ家ならば明かりの…
[話しながら地下通路の床に足を踏み入れたとき、唐突に視界が横へ流れた。]
お? おお、 おおおおおぉ……!?
[ただの石と見えた床の表面が、結構な速度で動き出す。
あっというまに洞窟の奥へ流されていった。*]
[ このまま調査を続行するというクレステッドの判断に頷いて、後に続く。]
…え?
[ 物凄い早さで地下へと呑みこまれてゆくクレステッドと引き離されまいと飛び込めば、やはり壁が流れるように去ってゆく。]
[ 猫の目に変化したから、わずかな明かりでも見ることはできた。
これ以上の暗闇になったら、コウモリの耳に変えなければならないだろうと思う。]
クロ君!
[ 呼びかけて手を伸ばした。*]
お、わ、 おお、 おおぅ …
[床の動く速度はかなりのもので、転倒を避けるだけで精一杯だった。
必死にバランスを取りながら奇声を発する生き物になっていたところへ、カスパルの声と手が伸ばされる。]
おお、 カスパル、
ちょっと支えていて っ、とっ、 あぅぁ
[よく見えないが、声のする方向へ手を出す。
と、その拍子に身体が傾いた。
とっ、とっ、と二歩までは片足で堪えたが、あとは傾きを増すばかり。
慌てた手を暗闇でむやみに振り回す。*]
[ クレステッドは、これまでの泰然とした様子から何だか可愛らしい存在になっていた。
楽しそうにすら見えてしまうけれど、支えを求められればカスパルは素直に彼の体に触れた。
軽いパニック状態なのか、クレステッドが暴れるので踏鞴を踏むも、筋肉質の太い尾を生やすことで、都合三本足になってバランスをとる。
転倒して怪我などしないようにと、熊の腕でクレステッドを横抱きに持ち上げた。]
ズボンを履いてなくてよかったです。
[ クレステッドには何のことだかわからないような感想をもらす。]
動いているのは床だけでしょうか。
天井にぶら下がれば、これ以上、運ばれずに済むかもしれません。
行くところまで行くのも手ではありますが──
[ 風の匂いを嗅いでみるけれど、腕の中のクレステッドの匂いばかり意識してしまう。*]
おおうっ。
[暗くてよく見えないが、誰かの手に掴まれた。
倒れずに済んだ安堵と、不意に持ち上げられた驚きが声に出るが、耳元にカスパルの声を聞いてひとまず冷静さを取り戻そうとする。]
カスパルか? カスパルだな。
よし。
[暗くてよく見えない上に、心落ち着かせるのに全力だったから、今の自分の姿勢にも彼の言葉の意味にも頭が回らなかった。]
[ようやく落ち着いたあと、カスパルに抱き上げられていることに気がついて、再び軽く慌てたが、それはさておき。]
元凶術者が歩かない派だとすればだ。
これに乗っていけば、そいつの居場所へ直行の可能性はあるな。
だが本当にそいつがこの先にいた場合、確実に待ち伏せ、先制攻撃されるだろう。
できれば別ルートを探りたい。
なければ仕方ないが…
……。天井、いけるか?
[彼ならば、人間1人抱えたまま、天井に張り付くこともできるのだろうか。
期待と興味と信頼の眼差しで、彼の顔があるだろう方向を見た。*]
[ 腕の中のクレステッドはようやく落ち着きを取り戻したようだ。
声の調子だけでなく、体温や匂いでもそれが感じられる。呼吸の方向から、顔のあたりを見られているのもまた。
今後の見通しと作戦について聞いたカスパルは然りと頷く。]
待ち伏せは勘弁です。
天井を試してみるので、しっかり捕まっていてください。
[ さっきの巨大カエルを念頭におきながら、指先を吸盤に変える。
天井が岩でなかったら、また別種の変身を考えなくてはならなかったが、幸にして、ピタリと張り付いた。]
[ 足の指も同様にして、クレステッドを腹に乗せる形で、天井に逆さまに這う。]
このまま進んで構いませんか?
[ あまり長い時間だと、頭に血がのぼりそうだと思いつつ、動いてみる。*]
[試してみると言ったカスパルに、言われたとおり首に手を回して掴まっておく。
やがて身体は浮き上がり、移動する感じは無くなったかわりに傾きが変わった。
暗くて平衡感覚も怪しくなってきているが、これは天井を這うカスパルの上に、しがみついているという形か。]
なかなか、できない体験だな。
[お互いの姿が見えないからまだ良いんだろう。
きっと、相当にシュールな光景だ。]
少し待ってくれ。
構造を探れるか試してみる。
[進んでも構わないかという彼を止めて、天井の岩に触れる。
物質の形状と組成を調べる魔法を応用して、周囲の探知を試みた。
理論上はできるはずだ。
探知の範囲を広げればいい。]
右手の前方に空洞と、どうやら水があるらしいな。
その辺りなら床が動いてることもないだろう。
[しばらくして判明したことをカスパルに告げ、
…暗闇では方向指示が難しいことに気がついた。]
まあ、進んでみてくれ。
適宜、進路を修正していこう。
[文字通り、手探りで進むことになりそうだ。
しかし、これ、どうやって乗っていればいいものか。
暫し、安定する場所を探してもそもそしていた。**]
[ なかなかできない体験だと、前向きな感想を漏らすクレステッドに、]
自分では便利な魔法だと思っていますが、使ってみせると人間扱いされなくなっていくのが難点です。
[ もう慣れましたけど、と恬淡と語る。
それもあって、動物を守り、密猟者を追う国境警備隊の仕事は気に入っている。
前者は容姿に文句をつけてこないし、後者に嫌われるのは当然だから。]
[ クレステッドが魔法で周囲の調査をすると言うので、邪魔にならないよう、じっと待機して、こちらも近づく生き物の気配がないかを警戒しておく。
調査報告には、低く感嘆の声を出した。
ゾラントの魔法はどういう原理か感触が掴めないが、クレステッドの言葉に疑いは挟まない。]
行きたい方向に俺の頭を向けてください。
[ まさに手探りの指示出しを頼んで動き出す。]
[ クレステッドは腹の上で、もそもそしていた。]
ちょっと、腰巻きが外れそうなんですけど…
[ 居心地よくないから落ち着かないのだろうと、彼が乗る腹にふわふわの毛を生やしてみる。*]
はっ。
凡愚共には好きに言わせておけばいい。
[在学中には、退化魔法だとかの悪口も何度か耳にしたから、人間扱いされないの意味もまあわかる。
わかるが、連中がなぜ彼を下に見るのかは理解し難い。]
人間より遙かに優れた動物の能力を、さらに強化して自在に操るのだ。
人間の域を越えていると見做されるのならば、まあ妥当だろうが。
[全く。驚嘆すべき能力の持ち主だ。
改めて感嘆して、ひとり勝手に頷いている。]
[そんなカスパルの頭を動かして操縦するのは、これまたなかなか愉快な体験だ。などと思っていたら、苦情と共になにやら触れている場所がふわふわしてきた。]
ああ。悪いな。
[手探りで彼が巻いている上着に触れ、締め直すと同時に、少し形を変化させて留め具をつけておく。
その過程で触れたふわふわの毛が気持ちよくて、少し撫でた。]
方向は合っている。
そのまま進んでくれ。
[指示しながらも、手はついつい撫でている。
もふもふ。*]
[ そのまま進めというから進むけど、腹の上を這い回るクレステッドの指が気になる。
なんだかこう、際どい気分だ。]
ん…、 あ はい。
[ 暗くて彼の視界がきかないのを幸いに思う。]
クロ君は、どうして今回、交渉に参加を?
[ 意識をサワサワ動く手から離しておきたいのと、こんな暗闇なら話しやすいこともあるだろうと考えて問いかけてみる。*]
[もふもふ…この柔らかさは猫か、狐か。
いや、兎か?
適度な長さの細い毛が密に生えていて、実に触り心地がいい。とてもいい。カスパルは、常時これを生やしておくべきではないだろうか。服などいらない。
そうだ。このままでいるべきじゃないか?そうすれば…]
理由か。そうだな……
次の飛躍の相手を探していた、というところか。
[手を止めて、熱を帯びた声で言う。]
俺も、ゾラントへ移った時には危ない橋も渡った。
その時に世話になった人に約束したのさ。
あなたがたどり着かなかった境地を見せてやろう。と。
物体魔法だけでも一つの境地には達するが、俺はアーケシアの魔法も知っているからな。
両方の魔法を合わせれば、単体とは比べものにならないことができるだろうと気付いた。
だがさすがに独りじゃ両方の魔法は行使できない。
だから、和平交渉の場で伝手を作るかと思っていたわけだ。
君が来ていたのは、予想外の僥倖だったさ。
[もふ。*]
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