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[絵物語の騎士が持つような盾を思い浮かべながらそう口にすると、手の中に大きな盾が現れた。]
う、うわああああ!!?
[思わず取り落としそうになるのを、かろうじて耐える。]
ええー……。もう、どうなってるんですかねこの世界は……。
[苦笑いしながらゲルトを見て、それから上空の戦闘に視線をやる。]
[鋭い視線を向けられて、心躍った。]
勘に触りましたか。
[髪に潜り込んだ手が、謝罪するような手つきで耳の後ろへと回り込んでから離れる。
おそらく一般的ではないボディランゲージだけれど。]
[まずは、他の者を見つける、という明確な方針に微笑する。]
御意。
[つまりは狩りということだ。
貢ぎ物で食事を済ませることの多い自分と異なり、兄は領地を逍遥して出会いを楽しむたちである。
時に、獲物を飼いならそうとすることもあるけれど、そんな場合は嫉妬を隠して、共に愛でるように務めてきた。]
[並んで空を移動しながら、ユベールとはどんな人物なのか、と”ギィ”が問う。
よろしい、たまには当人に聞かせよう。]
その眼差しは波紋のごとく、悪戯に、また神秘に煌めいて、
鼻梁は天駆ける彗星の妙なる道筋 ──
[詠うように、睦言のように、物語った。*]
[空を飛ぶのは存外と気持ちが良い。
すぃ、と翼で風を切る感覚。
気流を捉えて身を任せると、
背中を押してもらえた時のような身軽さを感じる。
翼もなかなか、悪くない。
見知らぬ地上を眼下に、
出会ったばかりのひとを供にして、
まだ見ぬ相手へと飛んでゆく。
(ちゃんと彼の元へ戻りたい、けれど)
夢の中の出来事のような此の不思議な体験を――…
楽しんでいる自分も、確かに居た]
[至近距離になれば次第に、人影の詳細が分かってくる。
翼が無いように見えたひとも、
ごくごく薄い色彩の羽根が背で揺れていた。
やはり翼はこの世界のお約束らしい。
そしてもうひとり…]
…、ギィ?
[燃えるような赤い髪が印象的なひとが、
よくお似合いの光の翼を広げて浮かんでいた**]
[眼前に炎の矢が迫る。
交錯まで、ほんの瞬きひとつほど。]
おらぁ!
[気を吐いて、左腕の籠手を炎の矢に叩きつける。
触れた瞬間に爆発する可能性も、熱に負けて籠手が溶ける可能性もあったが、そこは自分の勘と籠手を作った鎧師の腕を信じた。
そしてもうひとつ。
人外の業持つ連中と戦う時は、気合で押し通せ、だ。]
[籠手で打ち払った炎の矢は、砕けて火の粉をまき散らした。
灼熱感が左腕を焼くが、深刻なダメージにはなっていないだろう。
少なくとも、動く。
炎の欠片が降り注いで跳ねたが、これも髪や翼を焦がしたにとどまる。
火の粉の雲を突き抜ければ、炎と氷の使い手とは指呼の間だ。
鞭の間合いに入るより早く、狼の上で翼広げ、背を蹴って真上に跳びあがる。
牙剥く狼が相手の間合いに飛び込むのとわずかにタイミングをずらし、引き絞った一矢を放った。]
まさかあなたがここにいらっしゃっていたとは。
……そちらは?
[一緒に飛んできたのは見知らぬ人物だ。
彼女の伴侶──己の友に代わって、鋭い視線を投げておいた。]**
む…!
[ 見惚れる暇もなく、揮った鞭の届かぬ位置で、騎手が漆黒の背を蹴って宙に飛び立った>>55
ほぼ真上…それも相当な至近から放たれた矢に対処するには、圧倒的に間合いが足りない。更に眼前に迫る黒狼の鋭い牙 ]
ちぃっ!!
[ 咄嗟に手にした炎の鞭を横薙ぎに揮う。
牙剥く狼を払い退け、同時に熱波で矢の勢いを削ごうと試みたが、鋭い牙はその炎さえ食い破るかのように鞭に食らいつき、いくらか速度を落としながらも、真っ直ぐに熱波を貫いた矢は背の右側…丁度翼の付け根あたりに突き立った ]
く…華焔…!
[ 呪言と共に、鞭から激しく吹き上がった複数の炎の華に、狼は食らいついた牙を離して距離を取り、背に刺さった矢は綺麗に燃え尽きる ]
ぐ、あ…!
[ 男自身が苦鳴の声を漏らしたのは、矢に貫かれた痛みばかりではなく、自ら放った炎に身を灼かれる熱さのためでもあった ]
は…やってくれる。
[ 火と氷を操る武器を持ってはいても、男自身は生身の体だ。武器の放つ炎に自ら焼かれることも、冷気に凍えることもある…そして、その力を放ち続けるのも、無限には出来ぬこと、だったが ]
凍波…
[ 鞭は再び氷の剣へと変わり、羽根も又、炎から氷へ、これほどめまぐるしく変化を続けるのは本当に稀だ。
だが、そこまでしなければならない相手であることに対する、まぎれもない高揚が、男の笑み消えぬ瞳には表れていた ]
氷扇!
[ 黒狼が再び食らいついてくる前に、氷で右腕に固定された剣を頭上で一閃し、吹雪のような冷気の塊を放つ。
上から次の矢が飛んできたとしても、その冷気に凍らされて、今度は男の身には届かず落ちたろう ]
[ ばさり、羽ばたいた氷の羽根の付け根が引き攣るように痛みを訴える、しかし、構わず男は、自らの放った冷気を身に纏うようにして、赤褐色の翼目掛け、空を駆け上がった ]
はああっ!!
[ 狙うは、肉薄しての下段からの切り上げ一閃* ]
お知り合いなんですね、よかった。
[ 結局名乗りはせずに、そんな風に言って、にこりと笑った ]
お互い訳のわからない場所に来て心細い思いをしていた者同士の御縁で、ここまで御一緒させてもらいましたが、お知り合いが見つかったなら安心だ。
[ 油断なくこちらを見る男は、多分軍人だろう。それも恐らくは指揮をとる立場の実力者。
彼ならジルを護ることも出来るだろうと容易に判断がついた。
隣にいる透き通った翼の男は、少々気配が読めないところがあるが、少なくとも敵対する相手には見えない ]
ジル、貴女はこの方と居た方が良さそうだ。俺は俺で、周りを調べてみます。何か見つけたら知らせに来ますよ。
[ ならば、所詮は迷い出た死人に過ぎない自分のエスコート役はここまでだろう。彼と一緒なら、きっと彼女は自分の帰るべき場所へ戻ることができる ]
…どうか、お元気で。
[ 一瞬、手を差し出しかけて、やめておく。今も自分に実体があるのか、自信がなかった。
先刻触れ合った、その温もりだけ、覚えていられればいい* ]
[讃辞に託した想いを、ユベールは真摯に聞いてくれた。
今度はボディランゲージで、と思ったところへ男女の二人連れがやってくる。
眷属ではなそさうだが、その背には翼がある。
もしかして、天使か精霊だったりするのだろうか、と様子を伺っていれば、兄は「アーヘンバッハ夫人」と呼びかけた。
既婚者ならば天使の線は薄そうだ。
かの夫人に対し、兄は敬語である。
貴族然とした優美な振る舞いを、うっとりと見つめつつ、狩るなら男の方かと算段していた。
それなりに鍛えていそうだし、美味しかろう。*]
とりあえず、できるだけ遠くに逃げましょうか。
見る限りでは、この空はどこまでも続いていそうですしね。
[傍らのゲルトに笑みを向けて、翼を羽ばたかせた。*]
……うん。
[もう彼らの方は見ようとせずに離れていく。少しづつ呼吸は穏やかに戻っていった。
遠回しな言葉>>70へ短く同調する。翼が生えて空中で人間と闘う姿は自分達の思う“それ”とは違っていたが。もし、あれがそうであるのなら。同じことを思わずにはいられない。]
……ジムゾンさん。
[向けられた表情を目に、ハッとする。
ああ、そうだった。あの時もこうして二人で逃げたんだ。]
そうだね、……そうだよね。
こんなに広いんだもの、どこまでだって二人で行けるよね。
[引き結んでいた唇は笑みを作る。手に感じる温度が暖かくて、頼もしくて。
この人となら大丈夫だ、そんな気がした。*]
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