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[いつかと同じ、金粉が舞う白い便箋に綴られた手紙。
添えられた包みには真珠と金古美で月や星をかたどったものと、太陽をモチーフとした対のブローチが収められていた。
ところどころ歪で、職人よりも素人の手により生み出された感が滲んでいる。]
[一人に戻った部屋で急いで開いた手紙から、
ギレーヌ様の色付いた心が私の手に零れ落ちてきました。
まずそれを握りしめたまま私は読み進めます。
私の顔は赤くなったり目を塞いでしまったりと
忙しくてなりません。
先のシンプルな手紙とは違う長い手紙はギレーヌ様と
お喋りとしているようで、嬉しくて嬉しくて。
読み返すときには掌に握りしめていたそれを私の前に置いて、
私はカップに新たに紅茶を注ぎ直して差し出しました。]
ギレーヌ様はどんなお茶がお好きかしら。
[長い手紙を私は声を出して読み上げます。
一部恥ずかしくてどもってしまったけど。
それも嬉しくて楽しくて。
ちょっと躊躇う内容もあったけれど私にはそれも喜ばしい出来事。
ギレーヌ様のお心を傍に置いて、私は返事を書き出しました。]
〜 愛するギレーヌへ 〜
敬称無しでお呼びするのはやはり恥ずかしいですわね。
でもギレーヌ様を敬称無しでお呼び出来るのは私だけの
特権ですもの。
とても光栄でとても嬉しいです。
ああ、でもギレーヌ様から直接呼ばれたら恥ずかしさと
嬉しさで顔が真っ赤になってしまいますわ。
その時は子供の様だとかおっしゃらないでくださいね。
私はギレーヌ様の前では子供ですから、お手紙が
とても嬉しくて、素敵な贈り物を傍に置いて読んでいると
ギレーヌ様とすぐ傍でお話しているようです。
これは是非暖炉の前で、二人で紅茶を飲んだり
刺繍をしながら色んなお喋りして過ごしましょう。
刺繍も女性としての立ち振る舞いもすっかり私は
追い抜かれてしまったかも知れません。
私もギレーヌ様とお会いする前にもっと修業しなければいけませんね。
皆が真似するほど、ギレーヌ様は美しくなられているのでしょう。
では今度は私が綺麗な髪を編んで差し上げますね。
そして私たちの子が真似したくなる幸せな夫婦になりましょう。
その子たちに混ざって踊りたいなんて、私の様な事を
おっしゃいますね。
勿論その日は二人で変装して混じりましょう。
それから。
絵の事ですが、まさかアデル様からお話が行っているなんて
思いもよりませんでした。
自信があるわけではないのですが、そこまで強くおっしゃられると
何だか恥ずかしくなりますが、アゲハ蝶を描かせていただきます。
私だけでなく、ギレーヌ様も我儘を貫いてくださって良いのですよ?
だってその方がもっとギレーヌ様に近付いている気がしますもの。
扇子の中の蝶の様に隠れずに、水晶の様に澄んで色付いた心を
私に見せてください。
もうすぐお会い出来る日が近付いていますね。
早く、会いたいです。
あなたのアプサラスより 愛をこめて
追伸:アデル様には改めてお礼をしなくてはなりませんね。
真珠の優しい艶のある白は本当に美しいと思います。
きっと素晴らしいものでしょう。
そのお心を裏切らぬよう精進したいと思います。
[先に送った時よりも更に色付いた便箋。
最後の一枚に文章はなく、大きくアゲハ蝶らしき絵が描かれている。
目と思わしき二つの丸と頭と体を示す丸と楕円。そして翅はなぜか
ハートの形を縁取りしたものが左右に。
モチーフを参考にしているからか、触角と模様もある程度
描かれている分、蝶とは何とか判る程度の絵だった。]
[返事を書き終わると、私は机の上に広げて飾っていた扇子の前に
宝石箱を置くと、ギレーヌ様からの贈り物をそっと飾りました。
少しずつ増えていくギレーヌ様からの贈り物に笑みが絶えません。]
アデル様にもお礼をしないと。
[ちょっと恥ずかしい事もありましたが、アデル様への
お礼は必要です。
私の返礼の品を考えて、出来ていたハンカチーフに手を伸ばしました。]
〜敬愛する アデル様へ 〜
この度はラートリー・アンダースン様とのご成婚おめでとうございます。
慣例とは言え、お祝いの言葉を贈る事が出来ず申し訳ありません。
アデル様もラートリー様も知識が豊富で領民たちを
素晴らしい未来へ導かれると思います。
私もギレーヌ・ドラクロアス様と婚姻の運びとなりました。
同性同士の婚姻とはなりましたが、お父様お母様に胸を張って
生きられるように二人で家庭と領土を育んでいきたいと思います。
ところでギレーヌ様から素晴らしい品を贈って頂いたと伺いました。
ギレーヌ様も感動されておりました。
未だ拝見はしておりませんが、今から楽しみにしております。
それと、私が描いた騎士の絵をギレーヌ様に送りましたね?
驚くやら恥ずかしいやらで大変でした。
誰かに送るのでしたら先に仰ってください。
もっと時間を掛けて描きますから。
絶対ですよ?
でも騎士と書きましたが、アデル様は武ではなく
智で領土とラートリー様を守られるのが似合っていると思います。
私の領地でも天気や星の動きや作物の出来などを記録することを
お父様に提案してみました。
今は結果は判りませんが、いつか役立つと信じております。
それではいつかお会い出来る日を楽しみに。
アプサラスより。
追伸:アデル様からの贈り物には到底かないませんが、
私から心ばかりのお祝いを贈らせていただきます。
アデル様には私の領地の砂漠に生まれる砂の薔薇と、
ラートリー様にはイニシャルと薔薇を刺繍した絹のハンカチです。
目で楽しんでいただければと思います。
[手紙にある通り、掌に乗る大きさの砂の薔薇と
絹のハンカチが丁寧に包まれて同封されていた。]
[手にしたハンカチーフにはモチーフが一つ足されました。
他のハンカチーフにも一つずつモチーフを付け足して
夜は更けていきました。]
ベルへ
手紙をありがとう。
君からの便りは何よりも心が浮き立つ。
単純だって笑わないでくれ。
練習? 俺の前でしてくれればいいのに。笑顔や声が、もったいないと思ってしまうよ。
会うときは、きっとお互い緊張して、ぎくしゃくしてしまうかもしれないね。
でも、俺は君と結婚できることを、とてもうれしく思っている。
それだけは、忘れないでいてほしい。
言葉にして、きちんと面と向かって言うべきだけれど、すぐにうまく言えるかわからないから、先に手紙で伝えておく。
寄り添い、思い合える夫婦。
ベルのご両親や、おじい様おばあ様の睦まじさは聞き及んでいる。
それにベルが憧れるのも当然だろう。俺にも、それを、同じように、願わせてくれ。
ずっと、二人、寄り添っていよう。
年は関係ないし、君の有能さは深く尊敬している。
でもなにより、君はとても女性らしい。
美しさもそうだし、心遣いや、少しずつ俺に心を開いてくれるようすも。
君が願うのではない。
俺が、ベルに、傍にいてほしいと願っているから。
だからどうか。その願いをかなえてほしい。
君と夫婦となる、人生で最も幸福な日を、心待ちしている。
ディーター
[独身最後なのだから、と幾日か休みをもらう。
だから忙しい、のではなく、休みをくれるのが七領らしい。
ぶらぶらと朝から釣りをして、日が昇れば市場で食事をして、みなに祝福と囃し声をもらって。
女性にはこういうふうに接したらいいですよ、
こんなことはしてはいけませんよ、
いやいや、それよりここを気を付けるべき、なんてみんなが思い思いのアドバイスをくれるのに苦笑する。]
俺なりに、気を付けるよ、みんなありがとな。
たまに花を贈って、口答えをしないで、毎朝ほめて、ときにはガツンと言って、常に後ろを歩かせて……
あとなんだ?
[前半は女性から、後半は男性からのアドバイス。みんな勝手なことを言いつつも、それぞれが幸せそうな夫婦に見えて、今はまぶしい。]
[あくる日、王城から実に畏まった仰々しい調印書が届いた。
難しい顔を晒してしまうのは致し方ない。
二つ折りの革で出来た用箋挟の内には、未来が収められている。]
……人生ってのは何が起こるか分からんものだな。
昨年の俺に言ってみろよ、爆笑ものだぜ。
[隣領の嬢ちゃんを、これから先、妻と呼ぶことになるなど。
つい、半笑いで誤魔化してしまうのは、先日送った手紙が原因。
幾ら本心とはいえ、三十路峠の見える身であの文面は、
我ながら落ち着きを忘れさせてくれる。
―――― 無論、文字に頼らぬ返信も一役買って。]
嬢ちゃんが今、16だから――…、20を越えるのは4年後か。
あっと言う間であるようにも思うが、
その頃にはもう少し夫婦らしくなっているだろう。
[第三領と第四領は合併し、土地が拡がり、豊かになる。
最初は横暴だと少なからず感じていた王命も、
今は真面目に彼女との生き方を模索しているのだから、
何事においても切っ掛けと云うのは重要だ。]
……嬢ちゃん、嬢ちゃんな。
――――…いや、もう、シルキーか。
[慣れた呼び名を人知れず改めて、置くのは無言の間。]
………、……。
……………………、
――――…照れ臭ぇ…、やっぱり暫く無しだ!
[首筋を雑に手首で拭い、用箋挟を宙に放り出す。
くるりと運命のように翻り、開帳のまま執務机に落下。
王城から届けられた証明書には、未来が記されている。]
[『オズワルド・フェルマー
シルキー・フォン・アウスレーゼ
――――― 両名の婚姻成立を此処に認める。』
そんな、番う二羽の未来が記されている。]
あ、仕立て屋に行くんだった、店主が張り切ってくれてね
[先週依頼をしたら、結婚式までには絶対間に合わせますよ、と言ってくれた注文の服を取りに行く。
式のための服も、伝統的なものから最近はやりのものまで、何着か揃えているらしい。
めでたく、こんなときこそ、という気持ちもあるが、あまり経済状況が芳しくないこともあり、そこまで派手なことはしないはずだが。
そんな畏まった服ではなく。
今会ってきた町民たちが着ているような、簡素だけれど丈夫な服を。]
おっす、注文の品できてる?
[仕立て屋に入っていくと、きれいな赤いスカートと、白いブラウス、革のジャケットにブーツを揃えたマネキンが目に入る。]
……おお。
時間なかったのに、ありがとうな。
[仕立て屋連中で頑張りましたよ、と親父がにこにことしてマネキンに帽子をかぶせる。]
喜んでくれるといいな。
[プレゼントは、もっと宝石や花のほうがよかったのだろうか、なんて先ほどの話を思い出しながらも。
これを着たベルを連れて、領内を歩く日が楽しみになる。
だからきっと、喜んでくれるはず、と一つうなずいて。
包装は簡単に、汚れから守る程度にしてもらって、服を抱えて屋敷へ帰る。]
嬢ちゃんへ
夫婦になってもこっちの呼び名の方がしっくりくるな。
中々、絵も上手いじゃないか。教育係の賜物かね。
なぁ、嬢ちゃんよ。
元第三領と元第四領の境辺りに新居でも建てようぜ。
俺は仮面夫婦を何十年も続けるほど気が長くはない。
俺が嬢ちゃんを“レディ”にしてやるから、付き合ってくれよ。
真っ白なドレスから始まる恋ってのも、悪くないだろう?
改めて宜しくな、―――― 俺の嬢ちゃん。
オズ
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うゆきさんセットは淡くて少女漫画チックで大好きってのもあるが、
表情が選べるのは手紙村…と云うか、小喉村と親和性高いよなぁ。
シルキーの照れ顔ににこにこしますものなぁ。
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しかし、本当に手紙村って良いシステムだな。
発案者の茄子さんは天才だと思う。
ちょっとアレンジ風にしてみたけれど、
ご意見ご感想あればエピで聞きたいな。
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あ、因みにエピっても天声入れる予定はないぜ!
思い思いの未来を描いていただけりゃ幸いだ。
(村建ての帰宅が遅いだけともいう。)
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