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[ギィの贈り物をどうしようか逡巡している隙に、初めて会う男が忽然と現れた。
反射的に布を被って隠れる。
といっても、一瞬とはいえ視線があったから、そこにいるのを見られたのは確実だろうし、顔を隠したところで何を変えられるというわけでもなかったが。
現れた男に対するギィの対応は、知己とは異なるように感じられた。
丁重だが、親密さは薄い。
ギィは城主(?)の申し出を断り、そのまま男の気配は消える。]
[差し出した手への反応がないことに微笑んで、傍らへ寄る。
布を被った彼の顔を、間近に覗きこんだ。]
おまえはここに残るつもりかい?
[胸の上へ、とんと指先を置いた。]
それともはやり、先ほどの続きがしたいかい?
[置いた指をつと滑らせて下肢へと差し向ける。]
ここはまだ、疼いているだろう?
[彼の中に忍ばせた闇に呼びかけ、小さく揺らした。
悪戯な指先の動きに合わせ、左右に揺れる。
熱を思い出させるためだけのほんの少しの動きで、指を離した。]
いずれにしても、
ここにいては、おまえの求めるものは見つからないのではないかな。
[一歩下がって彼の全身を眺める。
彼が満足するほどの剣が、この世界にあるかなど知らない。
そんなことは、些細なことだ。]
おまえは私と共に来るべきだよ。
おいで。
後悔などさせないとも。
[確たる口調で告げて、再び手を伸ばした。*]
もう透明化はとけている。
[続きをしたいなどと思うものか。
あんな狂おしいこと、もう二度と必要ない。
自分が自分でなくなるのが、いやだ。
そう思う端から、身体の中で蠢動するものに屈してしまいそうになる。
いささかきつく帯を結んでベッドを離れた。]
[いずれにしても、というギィの指摘にはうなずく。
求めるものに関してはそのとおりだろう。
ただ、]
盗品をどこにやった。
[真面目に問いただす。
伸ばされた手をとるのではなく、手首を掴んでつかまえた。*]
これは困った。
捕まってしまったね。
[言葉とは裏腹の笑顔で言う。
どう見ても、困ったよりは楽しいの顔だ。]
捕まったからにはあれを渡そうか。
おいで。
[空に向けて声を投げかけると、どこからか、にゃあと返事があった。]
[やがて有翼の猫が舞い降りてきて、肩に留まる。
丸い頭を首筋に擦り付けてくる使い魔を撫でてやってから、背負わせている袋の中から手帳を取り出した。]
これはおまえに返すよ。
もうこれがなくとも、私とおまえは繋がっているからね。
[優雅な仕草で警察手帳を差し出す。
その指の間からメモが一枚零れて落ちた。*]
[捕まってしまった、と晴れやかに言う盗人は、案外、殊勝に手帳を返してくれた。
翼ある猫は使い魔のようだ。体のサイにズあった小さな背負い袋が場違いにキュートである。
繋がっている云々は敢えて無視して、手帳を受け取った。
挟んであった"お守り"が落ちたので、急いで拾おうとして、ギィの手を離して自由にしてしまう。
ギィは羊皮紙に記された文字を見たか。見たとして読めるだろうか。]
他にも盗んだものがあるだろう。
[確信の口調で問いただす。]
夜明けまでに元の場所に戻すならば、事件は胸に収めておく。
[交渉を持ちかける。
どのみち、彼を起訴することはできまい。
被害を最小限に抑えるためには、妥協するしかなかった。*]
[この手技に長けた魔の指から、偶然何かが落ちる、ということは無い。
落ちるべくしてそれは落とされたのだ。
羊皮紙を拾い上げた彼から一歩下がり、使い魔を腕に抱く。]
昔、ある魔剣の話を聞いたことがある。
[持ち掛けられた交渉を無視して、語り始めた。]
その魔剣は非常に強力で、
雷を放ち、炎を纏って、あらゆるものを切り裂いたそうだ。
魔剣は同じ魔剣と戦うことを望み、数多の戦いを重ねた。
何本もの剣を折り砕いた末に、ある魔剣と使い手に挑み、
長く激しい戦いの果て、ついに斬られた、そうだよ。
[ごろごろと喉を鳴らす使い魔の背から、ルビーを取り出す。
赤い月の光を受けて、六芒の光条が鋭い輝きを放った。]
私があの町を訪れたのも、
その使い手に頼まれたことがきっかけでね。
斬った剣から最後に託されたそうだ。
「借りた力を返す」との言伝と共に、魔力を宝石の形に封じたものをね。
けれども、どうやらそれが盗まれてしまった。
それを取り戻し、いずれは正当な所有者に返したいそうだ。
だからこれを、元の場所に戻すことはできないのだけれども、
―― この魔力に覚えは?
[摘んだ宝石を目の前に翳し、彼と重ねる。
指先に、微かな熱が脈打った。*]
/*
ルビーに何かが封じられていて、それを取り戻すために動いていた、までは最初から決定だったのだけれども、ここにきていろいろ詰め込んでみた。
[ギィはタクマの知らない話を語った。
不意に涙が溢れるが、それを拭うことはしない。]
…馬鹿だな。
[誰に、ともなく言う。]
盗品だから盗んでいいという法はないぞ。
だが、もし一週間たっても、被害届が出なかったら、
もともと、その店の品ではなかったのだろう。
[翳された宝石には触れず、己の見解を述べる。]
無茶はもう…、充分だ。
── 元の世界への鍵を探そう。
[彼は、自分が涙を流していることに気づいているのだろうか。
指摘はせず、ただ彼の見解を聞いて柔らかく笑む。]
ならば、ゆこうか。
[宝石を使い魔の背に戻し、腕を差し上げれば、小さな皮翼が羽ばたき舞い上がる。]
この子が妙なものを見つけたそうだ。
城の西側に沼が広がっていて、中心に変な家があると。
この子の言うことだ。おそらく小さな祠か何かがあるのだろう。
……ただ、沼には蛇が何匹もいたそうだが。
行ってみるかい?
[誘っておいて、そのまま歩き出す。
彼が共に来ることに、疑いは無かった。]
― 西の沼地 ―
[西側の壁を乗り越え、外へ出て暫く歩いた先に沼があった。
水はそれなりに澄んでいて、岸近くでは水草が揺らぐのが見える。
沼の中央の小島に石組みの小さな人工物があるのも見えた。]
あれだね。
内側になにかありそうだ。
行って取ってくれば、済みそうだが……
[言葉に被せるように水面が細波立ち、数本の細長い影が近づいてくる。
細長い、とはいえどれも大人の人間ほどの横幅がありそうだ。]
あれが守護者なのか、ただの蛇の群れなのか、
[身構える間に影たちが泳ぎ寄り、水面を割って鎌首を持ち上げた。
一斉に威嚇の音を立てるそれらを見て、軽く肩をすくめる。]
…あの子には蛇の群れと
[ギィはもう、鍵のありかの手かがりを得ていたらしい。
何もかも彼の手の内のようだが、異を唱える気はなかった。
向かった先の城壁には出口らしきものはなく、どうするつもりかと見守れば、ギィは最短ルートを選択した。
タクマが知る剣よりは華麗な方法で乗り越えてゆく。
瓦礫の山は残らない。]
[西の沼にたどり着くと、さっそく出迎えがあった。
沼の主であろう
あの手の輩と戦った経験は?
[知っているかもしれないが、毒のことや再生力のことを簡潔に告げておく。
こうしたサポートをするのもいつぶりだろう。*]
私はもともと戦闘向きではないのだよ。
剣を抜くのも久しぶりなのだからね。
[戦闘経験を聞かれて、間接的に否定する。
まして相手が人間型をしていないとなれば、どうにも食指が動かない。]
けれども、できる限りのことはしてみよう。
忠告感謝する。 ── 支援を頼むよ。
[毒や再生能力への注意に頷いて駆け出した。
敵意に反応したヒドラが一斉に口を開き、毒液を吐きかける。
それが、戦いの開始を告げる合図となった。]
[降り注ぐ毒液の合間を縫ってヒドラに肉薄する。
叩き潰そうと振り下ろされる頭を躱し、細身の剣を縦横に走らせて斬りつける。
戦闘向きではないと言いながら、戦いぶりは危なげない。
とはいえ、いくつもの首が自在に襲い掛かってくる状況では、防戦一方にならざるを得ない。
そんな状況の中、一瞬の機を捉えて斬りつけた闇の刃は、ただ一刀で首のひとつを真横に両断した。]
……っ。
[直後、斬られた首がふたつに裂け、それぞれ別個の頭として再生するのを目の当たりにして、小さく呻く。
キリがないどころの話ではない。*]
[支援を、と言われたがどうしろというのか。
拳銃もライターも露天風呂騒ぎで失くしていたし、この肉体はあくまでも人間規格である。
多頭竜の牙にかかればひとたまりもない。
別にそれで命を落とすわけでもないのだが ──
戦闘向きではないと言いながら、躊躇いなく突込んでゆくギィを見ながら思う。]
[斬り落とされた瞬間に再生した頭が両側からギィを襲う。
その片割れの前に身を投げ出して、ギィを庇った。
竜の顎門はたわいもなくタクマの上半身を薙ぎ払い、消滅させる。
本体である鞘のみを剥き出しに残して。]
《さらば与えん》
[魂の声で、ギィに呼びかけた。*]
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