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戦いはいよいよ現実のものとなった。
吹き上がる戦火は、人々に選択を迫る。
自ら望んで戦いに身を投じるもの。
守るもののため、武器を手にするもの。
才覚一つで、戦乱の時を乗り越えようとするもの。
戦火に紛れ、己の目的を果たそうとするもの。
戦いを見守り、あるいは止めようとするもの。
己の思惑を果たせるのは誰か。
思いの剣が交錯する先へ、歴史は進む。
どうやらこの中には、村人が1名、人狼が1名、囁き狂人が1名、共鳴者が2名いるようだ。
薔薇園芸家 ローゼンハイムが「時間を進める」を選択しました
[ 銛が無粋などと主張する副官のいつもの調子に笑みを返す。
こんなたわいない話を彼とするのは、いつだって心地よい。]
主砲を使うとはおれも言わないさ。
[ と、ルートヴィヒの視線の先を追って感嘆の声をあげる。
比較対象に乏しい海の上とはいえ、跳ねた魚は桁違いに大きかった。]
…機関砲くらいは必要か ?
[ しかも、そいつが何かに追われて水面に逃げてきたとすると── ]
掴まれ !
[ 大波に備えて、副官を腕の中に引き寄せた。*]
[ 飼い主の牙剥くような笑いに高揚した。
こちらが躾けられたのだか、似合いの主なのだか。
その辺りで拾ったとおぼしきアイテムをとっさに取り回し、武器としても防具としても成立させてみせるウォレンの戦闘本能には畏れ入る。
鎖に弾かれて、木の枝は折れた。
紙の方は凹みはしたが千切れてはいない。
そして、ヴォルフ自身へ目掛けて繰り出される短剣めいた先端。
躱すように蹴り上げながら、後方回転して際どく避ける。
傍目には、まさに投げ飛ばされたようなものだ。]
ふぅ、 危ない。
[ いつだっておまえだ、と指名されて絆されぬ者がいようか。
相変わらず人たらしだと思う。 ]
もっとします ?
[ わかっていても嬉しいし、応戦の容赦のなさには堪らなく痺れる。*]
[疾風の勢いで駆けてきた身体が、目の前で鮮やかに回転する。
見事な後方回転に、笑みが浮かんだ。
弾かれそうになった即席の武器を、危うく鎖を掴んで引き戻し、着地したヴォルフと再び相対した。]
ずいぶん派手に避けたな。
[構わず突っ込んでくるかと思っていたが、代わりに良い動きを見た。
ヴォルフとの戦いはいつだって心が躍る。]
もっとやりてェ、が、
[先ほどから、自分たち以外の立てる音が聞こえてくる。
それもどうやら、こちらへ一直線に向かってきていた。]
まずは邪魔者をぶちのめしてからだな。
[言って、即席の武器を構える。]
[待つまでもなく、草の揺れが近づいてきた。
黒い影が広葉の影から顔を出す。
出てきたのはトカゲだった。
草むらとかでよく見かける奴。
ただし、持ち上げた頭が人間よりも高いところにある。]
……ま。今までやり合ってきた連中に比べればたいしたことねぇな。
[日常茶飯事とは言わないが、とにやり笑った。*]
[戯れのような会話を遮った魚の大きさに、少し現実感を見失っていたかもしれない。
掴まれと言われて、引き寄せられて、あなたにですか?と反駁しかけたのは危機感が麻痺していたからだろう。
直後に海面を割った青光りする巨体が、呆けた思考を打ち砕いていった。
押し寄せる波が、ヨットを文字通り木の葉のように揺らす。降り注いだ飛沫は驟雨のようだ。
波を裂いたマストのような吻が視界に焼き付いた。]
無事ですよ、トール。
[隣にいながら響いてくる声と身体の熱さに、鼓動が騒がしい。
その分、思考が冷静になっていくのも、彼がそこにいるせいだ。]
カジキでしょうか。
主砲、必要でしたね。
[揺れの合間、落ち着いた声でそんなことを言う。]
なるべく早く離れましょう。
鳥が来ますよ。
[ここで狩りが始まるのなら、別の危険も当然来るだろう。
私は心配ないからと、皇帝の手首を握って伝えた。*]
[ 対峙していたウォレンと同じ方向を見て、邪魔者を確認した。
もっとも、闖入者は自分たちの方かもしれなかったが。
並ならぬ大きさのトカゲである。
その巨大な鱗を見て、この周辺の事物はサイズが常識外れらしいと、ようやく合点がいった。
ならば、ウォレンが抱えている得物は元もとは何なのだろう。
そもそもそれを作ったのは── ]
面白いことになってきました。
[ 紙を巻いただけの棒では硬度不足だから、あっさり手放すことにした。
トカゲの頭目掛けて投擲する。
元の形に戻ろうとシュルシュルと広がる紙にトカゲは気を取られたようだった。
その隙にウォレンの後ろへと駆け込む。
彼を盾にしよう── というわけではない。]
行きましょう。
[ 彼の背後に伸びている金属の長い鎖を自分の肩に担ぎ上げ、余りを体に巻いて抱え上げる。
こうしてウォレンについて走れば、彼も動けるようになるはずだ。
自分は、鎖の端を利用して、彼が先ほどして見せたように振り回して防御なり打撃武器になりすればいい。
二人でひとつのアイテムを使って戦うのだ。*]
[ アレクトールが魚の大きさに驚いている間に、ルートヴィヒは種を判定したようだ。
相変わらずの彼らしさに、笑みこぼれる。]
新種か ?
あれなら皇帝ナントカとついてもいいぞ。
[ 世の中、いろんな生き物に大王ナントカとか皇帝ナントカという名がついているが、あれくらい強そうで格好いい生き物に冠されるなら喜ばしいものだ。]
[ そんなことをする内にも、冷静な副官から次なる脅威を指摘されて、彼を押さえていた手を緩める。
濡れてより伝わるようになっていた温もりが離れるのは惜しいような気がしたが、帆と舵を操るのに専念しなければならなかった。
魚狙いの鳥たちが水面を外して甲板に急降下してくるのは、ある意味、魚雷のようなものであろう。]
鳥まで巨大だったら目も当てられないな。
[ 軽く言ってみるが、果たして。*]
[宙を飛ぶ紙の棒にトカゲの頭がつられる。
その隙に背後から鎖の音が聞こえ、腕にかかる重さが減った。
視線だけで確認すれば、ヴォルフが鎖まみれになっている。]
繋がったまま戦うか。
いいじゃねぇか。
[まず無い状況に、高揚する。
嬉々として、視線をトカゲへ向けた。]
[目の前の生き物を獲物とみなしたのだろうトカゲが、大きく口を開けて噛みついてくる。
目くばせもなく、鎖を伸ばして前へ駆けた。
左右に分かれてトカゲの横を駆け抜ければ、鎖を噛んだトカゲをのけぞらせもできるだろう。*]
カジキは釣り人に好んで狙われますよ。
私は、そのようなものにあなたの名をつけるのは嫌です。
[皇帝ナントカの名づけに律義に反論しつつ、ヨットを操るのに手を貸す。
わが太陽ほどに鍛えてはいないが、これでも陸より海で過ごした時間の方が長い。]
囁けば影が差すとも言いますが、
あの"小魚"を狙う鳥がもしいるとすれば……
[そう言葉にしたせいではないだろうが、空がふと陰る。
見上げれば、水上機とも見紛う翼の群れが、空を埋めつつあった。]
―――これは、なんとも …
[さすがに声を失った直後、鳥たちの狩りが始まる。*]
[ 飛んできた紙切れを噛んでみて、食べ物ではないと察したトカゲは次なる獲物に視線を戻す。
繋がって先ほどより大きくなったように見える獲物に、わずかに戸惑う様子はあったが、それでも食べられるサイズと判断したらしい。
その時にはもう、二人は駆け出している。
支援役として後をついていくつもりだったが、戦上手の赤虎はその程度で良しとする男ではなかった。 ]
[ 左右に分かれた二人の間で鎖はトラップとなった。
馬銜のように噛ませた鎖を引いて、トカゲの頭の後方へと駆け抜け、のけぞらせる。
この長さがあれば──
一人では決して辿り着けなかった解だ。
自分をこんな風に使役できる男は他にいない。
戦狼は嬉々として、トカゲの足に爪先をかけた。*]
[ 魚の名付けにも、個人的感情を挟んでくる副官の真面目な健気さが、なんともはやである。
了解した、と笑って前帆の操作をルートヴィヒに任せる。
彼の波風を読む目は確かで、これまでにも何度も扶けられてきた。
信頼している。 ]
ん 、
[ 空を見上げて固まっている彼の視線の先には日を翳らせる群れがいた。
遠近感が掴めないのはサイズのせいだ。]
[ 未知の部分が多い海の生き物なら、どれだけ巨大でもそういうものかと納得できるが、さすがにこの辺りの領海で、あのサイズの鳥は生息していないと判断できる。]
夢でも見ているんじゃないか。
まあ、おまえと一緒ならなんとかなりそうな気はする。
[ 驚嘆しながらも、船を全速離脱させるべく体を傾けた。*]
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