― 七年目の冬 ―
あれから二年。俺は二十一歳になった。
《父》から領地の一つを譲られて、ヴィースキルシュ伯と呼ばれる身になっていた。
しかし、士官学校を卒業するまではその名も、デンプヴォルフの姓も伏せておかねばならない。
その名だけですぐに出自が明らかになるから。
……ここにいる間は、ミヒャエル・キルドルフ。
ロストルム・フェーダ国立シュヴァルベ共同記念軍学校の一学生。
西寮の副寮長で、毎年進級試験にひやひやしながらも、何とか在籍を続けている。
それも、あと一年。
前年の秋に帝国皇帝が崩御し、二つの国は少しづつ見えない所で緊張を高めていた。