―回想:何時か何処かの昏い夜―最初は――拾った猫だった。怪我も治って、やっと元気に鳴いていたのに。次は、仲良くしていた花売りの子。おさげを揺らして、楽しそうに笑っていた。優しく包み込んでくれた母さん。抱きつくと、エプロンから美味そうなスープの香りがした。大きな手のひらで慰めてくれた父さん。歩き疲れた自分を、軽々と背負ってくれた…温かかった。そして。忘れられないあの日の後――拾ってくれて、食べ物と盗みの仕方を教えてくれた白髭の爺さんも。