[ 同室のミヒャエルはどちらかと言えば物静かなほうで、
ノトカーがだまっていればそれなりに部屋は落ち着いていた。
幼い頃、ノトカー1人でラムスドルフ家に滞在することは
たびたびあったので、家族と離れて暮らすこと自体は
初めての経験ではないのだが。
西寮に来て、生まれてはじめて、自分だけの時間を
持てるようになった気がした。
ノトカーが黙ってさえいれば放っておいてくれる同室者のおかげで。
思えば幼いころの自分はもう少し内気な性格だった。
人を笑わせること、楽しい気分にさせることばかり
考えて喋るようになったのは、妹がいたからだろう。
――出来るなら、自分の傍にいる人はいつも笑っていてほしい。 ]