できることはなかったのか。思い悩んでいるうちに母が心を病んだ。もともと思い込みの激しい所がある人だったから、素因はあったのだろう。父が薬に溺れだしたのもこの頃からだ。――…この頃から見始めた悪夢は、病のせいなのだろうが。母の呪いのようでもあった。くり返しくり返し呟かれる公国への憎悪。母の眼差しの奥には、昏い世界が広がっていた。