――…灰色の部屋にすべてが詰まっている。
母方の末の妹が、駆け落ち同然で公国に嫁いだのは。
まだ両国間の争いの傷跡が生々しい頃の事だった。
困難は多かったが、叔父が生きているうちはなんとかうまくやっていたらしい。
叔父が病死すると、事態は一変した。
残された叔母と従妹を守るものはおらず、惨い扱いを受けていたらしい。――…それを知ったのは、二人が亡くなった後の事だった。
士官学校に入ってからは、従妹と会う機会も少なくなっていた。
思えば叔父が病に倒れてから、従妹が時折苦しそうな表情を見せていたことがあった。