−回想・変化の兆し−
とにかく無我夢中だった。ひたすら殴って、殴って。色々と言葉も吐いたと思う。覚えていないけれど。
相手に銃を抜く暇も与えないくらいにとにかく殴った。殺しても構わなかった。こんな輩、生きている価値なんてあるもんか。
まもなく制止が入り、俺は暴れたけれど数に物言われてしまえば敵うはずもなく。「軍規違反だって殺してみろよ!なぁ?!」と吼えたことだけははっきりと覚えている。
軍法会議だ、処刑だって奴は騒いでいるらしいが、こんな馬鹿げた不祥事を表沙汰になど出来ないだろう。
ざまァみろ、そんなことを思いながら臨時転属していた基地の拘束室で数日を過ごしていると
「何やってんだかねェ、エースパイロットともあろう奴が」
からからと笑いを含ませた、懐かしい声がした。僅かに驚いて其方を見やると、果たしてそこにはディーデリヒが立っていた。
― ローゼスの軍服を身に纏いながらも、クロトフの人間として