[私の爪は確かに彼女の左腕に届いていたし、脚から伝わった手応えもはっきりとある。
にも係わらず、>>*82屋根の上の少女は焦ることを知らない様。
それは、まるでこうした状況に慣れている証のように思えた]
…そう、貴女も。
[私の言葉に同意を返す彼女が用心棒らしい事をしているとは、贈り物を買いに来た時彼女と義姉の会話から聞いた覚えがある。
表通りの飲食店で起き得るトラブルは喧嘩の仲裁や食い逃げ程度のはずだから、こうした戦いは珍しいだろうとは納得できること。
けれど、そう思うには疑問がある。
初めてにしては、この状況にあって冷静さが際立っているのではないか。
彼女が私の事を知らぬと同様に、私も少女の事は何も知らないけれど。
戦いにおいての経験は彼女の方が多く積んでいるのだろうと、その冷静さから読み取れた]