[何度かの交差を経ても少女の表情に焦りは見られない。>>*73
未だ獣の毛に覆われていない左腕をだらりと下げて、
襲い来る痛みに耐えて時折肩を上下させているにも関わらず、だ。
路上の女性を見下ろしつつ、褒められた、と受け取ってくれたことにほっと一息をつく]
こういう形で……、わたしも、そう。
[村を脅かすクリーチャーや野盗などと戦う役目を持つ者達は別にいた。
少女の役目はただ主の傍にいること。寄り添う影であること。
そうして主を守る、それだけのために腕を磨いてきた。
だから主とはぐれた今になって、こうして、
主を守る以外の目的で存分に戦うことになるとは思ってもみなかったこと。
――ただ、自分が、前へ進むために戦うだなんて]