[頭上から月明りが射し込む。
その淡い光の中で微笑を浮かべながら、両足の靴を脱ぎ捨てた]
でも、まあ――そんなおれっちだから与えられたのかもしんねぇな。
飛ぶよりも疾く、跳んで、翔ぶ手段をさ。
[ぐ、と床を踏み締めた両脚に白い羽毛が生え、強靭な駝鳥の脚へと変化していく。
腰を落とし力を籠めれば、全身の傷が開き紅が噴き出した。
消耗も負担も大きいが故に、ぎりぎりまで切ることのなかった切り札。
十分に力が溜まった所で、地を蹴ると同時に重量を極限まで落とす]
はあっ!
[一直線に飛び出した身体は、頭上に空いた屋根の穴を通り抜け、10mほどの高さに達するまで宙を舞った**]