ー回想・変化ー
反射的に殴ってしまい、一緒「マズった」と思ったのに、相手は、ニヤッと笑って
(…は、何なんだ)
コイツ、といぶかしんだ時には殴り返されていて。
互いに立ち上がれなくなるまで殴り合いの喧嘩をした。
このことがきっかけで、自分の人生は変わった。変えられた、ともいう。
拳を交わしたことで友情が芽生えた、なんてことは断じてないが、ディーデリヒと関わることが増えた。しつこい声に返すようになっただけだが、これまでの自分を顧みればそれは大きな変化である。
最初は自分に怯えていただろう気弱な同室のフィリップはおずおずと声を掛けてくるようになったし、夢を語られるようになった。争いが嫌いで、弱くて、なんでこんな所にいるのかと問うと、「整備士になりたい」と言った。戦えないけれど戦う者の力になりたい、と笑って。
ディーデリヒと、フィリップ、そしてディーデリヒの同室・テオドール。いつしか四人で過ごす時間は当たり前となる。