なかったことにするつもりだったのに。 だけど私が使える武器はこれだけだったから。[取り留めのない、相手に伝わらぬであろう言葉を口にしながら、更に数歩後退る。 背が後方の樹に触れれば、そのまま体重を預けた。 退路を断たれたようにも見える姿勢で、背後の樹へ力を注ぐ][――相手へ届くほどの成長は見込めないのであろうが] でも今は――勝たなきゃ。[背中を離し、素早く前傾する。 右手の痛みを堪えながら、杖を両手で正しく構え。 両足が踏むのは樹の根本]